シャンパーニュ・グランクリュの格付けが変わる?! -出張報告-(営業 池田 賢二)
こんにちは、営業の池田です。 現在フィラディスではグランクリュ・シャンパーニュにフォーカスした新しい生産者の発掘に 力を入れており、毎年複数回現地に赴き、数多くの生産者を訪問しています。今回は、昨年末の訪問で知ることのできたシャンパーニュの最新事情について幾つかお話したいと思います。
グランクリュの最新格付け
シャンパーニュの格付け「エシェル・デ・クリュ」は、1919年に初めて導入され、当時は12村がグランクリュに制定されました。その後1985年に改定され、今の 17村となっています。「エシェル・デ・クリュ」の本来の機能はブドウを買い付ける際の価格決定システムでした。各村の格付けによってブドウの価格を一律で決定するこのシステムは、自由競争を阻害するとして1999年より禁止されましたが、現在でも品質の基準として機能しています。
私たちがグランクリュ・シャンパーニュに注目するのも、やはりその味わいに歴然とした優位性を感じるからです。現地ではグランクリュを所有するレコルタンを中心に訪問していますが、毎回注意して話を聞くのが「どのクリュが使われているか」という点です。グランクリュに本拠地を置く生産者でも、プルミエクリュやその他のエリアにも畑を持っているケースが多く、キュヴェ毎にクリュの確認を行うのが非常に重要なポイントになります。
さて、依然として重要な基準であるグランクリュの格付けについて、シュイイ村のバザール・コカール(Vazart-Coquart & Fils)を訪れた際、とても興味深い話を聞きました。シュイイ村のみに畑を持つバザール・コカールですが、 彼らが造るロゼシャンパーニュにグランクリュの表示ができるとのこと。シュイイ村ではシャルドネの格付けはグランクリュですが、ピノ・ノワールはプレミエクリュのはず・・・どうしてか?と尋ねると、数年前に「エシェル・デ・クリュ」に一部変更があったことを教えてくれました。
上の表の通り、17あるグランクリュの中で、トゥール・シュール・マルヌ村の白ブドウとシュイイ村の赤ブドウは、これまでプルミエクリュとして格付けされていましたが、現在ではどちらもグランクリュへ昇格していたのです。過去に遡ってグランクリュを名乗ることもできるため、リザーヴワインやミレジメなどへの転用も可能となっています。
現在ではあくまで目安という位置づけの「エシェル・デ・クリュ」ですが、 今なお見直しが行われていたとは!今後日本でも、シュイイのロゼシャンパーニュでグランクリュという表示があるものも見かけるようになるかもしれませんね。
モエのグランクリュ・シリーズ?!
昨年、限定キュヴェのご案内で大好評頂きましたRoger Brunを訪問してきました。Roger Brunは、シャンパーニュ最上のグランクリュといわれるアイ村に本拠地を置く数少ないドメーヌの1つですが、大手メゾンが喉から手が出るほど欲しがるアイ村のブドウの供給の大半を 仕切っています(KrugやCharles Heidsieckなどへのブドウのプレスも担当)。そのため当主のフィリップ氏は、大手メゾンとも幅広い人脈を持ち、シャンパーニュのかなりの情報通です。彼のオフィスには、それを物語る圧巻のワインコレクションが展示されているのですが、その中にとても興味深いボトルを見つけました。
「Moet & Chandon Grand Cru Les Sarments d‘Ay」と記載されたこのボトル・・・
一瞬目を疑いましたが、これはドン・ペリニヨンに使われている単一畑Les Sarments d’Ayの ピノ・ノワール100%で造られた特別キュヴェでした。改めて調べてみたところ、この他にLes Champs de Remont(シルリーのピノ・ムニエ100%)、そしてドン・ペリニヨンの本拠地として有名なサランの丘にあるLes Vignes de Saran(シュイィのシャルドネ100%)という3種類のグランクリュの特別キュヴェが存在しました。どれもドンペリニョンに使われるグランクリュのブドウのみを使用し、樽とのコンタクトは行わずに、マルチヴィンテージのブレンドによって造られています。まさにモエのグランクリュ・シリーズです!これらは、2001年に「Moet & Chandon La Trilogie des Grand Crus NV」として3種セットで僅か4000セットのみの限定販売でリリースされました。現在でも造られているのかは定かではありませんが、日本だけでなく世界のマーケットでさえ見つけるのは困難な超レアワインです。
モエ以外に、Billecart Salmonでも、「Billecart Salmon Blanc de Blancs Grand Cru」というコート・デ・ブランの5つのグランクリュのブドウをブレンドした特別キュヴェが発売されています。
巧みなブレンドと長期熟成によってブランド・イメージを築いてきた大手メゾンが、一体なぜこのようなキュヴェを造ったのでしょうか。彼らの真意ははっきりとは語られていませんが、ジャック・セロスやエグリ・ウーリエのような素晴らしいレコルタンの台頭が目覚ましい昨今、シャンパーニュでも村名や畑名を名乗る生産者が増えてきており、グランクリュの優位性やテロワールの魅力がマーケットに定着してきています。そのため、その現実を無視できない状況になってきているのではないでしょうか。
今回の事で、改めてグランクリュというテロワールの重要性を実感しました。シャンパーニュの総面積に占めるグランクリュの割合は僅か14%と非常に限られたマーケットではありますが、 コストパフォーマンスに優れた素晴らしいグランクリュ・シャンパーニュを通じて、より多くのお客様にその魅力を伝えていきたいと思います。
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