「天然きのこの魅力に迫る! 」前編:日本で採れる天然きのこの種類と入手方法(広報 浅原有里)
- 2020.11.04
- マリアージュ
- マリアージュ,キノコ
心躍る秋の食材、きのこ。最近では人工栽培の技術革新が進み、おいしい栽培きのこが市場に出回るようになりましたが、やはり食に携わる者として野生のきのこには特別な魅力を感じてしまいます。そんな天然きのこを求めて、以前夏ジビエの特集でお世話になった長野県蓼科のオーベルジュ・エスポワールさんに再訪してきました。
天然きのこについて教えてくださったのは、きのこ採り名人の長澤宏 さんです。きのこ狩りに同行させていただく予定だったのですが、当日は悪天候のため泣く泣く中止に・・・。急遽セミナーに切り替え、その後長澤さんが早朝採ってきてくださった天然きのこをいただきながら、ワインとのマリアージュを検証しました。
今号では前編として、日本で採れる天然きのこの実態をレポートします。
天然きのこの魅力と入手方法
きのこについての研究はそれほど進んでいないそうで、自然に生えるきのこのうち名前が付けられているものは約半分しかありません。食べられるものは全体の1割ほどですので、やはり素人が食べられるかどうかを判断するには難しいことがわかります。
それでもエスポワールさんの庭や裏山には少し歩いただけでもきのこがたくさん!きのこを見つけた時の高揚感はたまりません。不思議な造形とつやつやした質感はとてもきれいで、収穫する時の楽しさに加えて、食べてもおいしいのですから、きのこ狩りにはまってしまう方が多いのもうなずけます。きのこが生える場所は、日光があたり、風通しがよく適度な水分もある爽やかな所だそうですので、野山の散策としてもとても気持ち良さそうです。
きのこが採れるのは、梅雨明けの6月くらいから翌年の雪解けとなる3月くらいまでと、意外なことにかなり長期間に渡って楽しむことができる食材です。日本で採れるきのことヨーロッパなど海外のきのこの種類はほとんど同じで、日本でもポルチーニ(セップ)やトリュフといった海外で人気のきのこを収穫することが可能です。
また、天然きのこは発生から大きくなるまで3日〜1週間と成長が非常に早く、収穫後にはどんどん劣化していきます。固くしっかりした種類のきのこは比較的日持ちしますが、それでも1週間が限度で、柔らかいきのこは3日程度しか保ちません。
そもそも天然きのこは量が少なく市場に出回らない上に、食べられるか判断できるプロが収穫する必要があり、足も早いため、飲食店が取り扱うのは難しい食材です。入手するには、
①インターネットで購入する
②全国各地の直売所で目当てのきのこが入ったら連絡をくれるようお願いしておく
③きのこ採り名人と知り合いになって売ってもらう
といった方法があるようです。
【きのこの分類 】
きのこは発生する場所(養分を摂取する場所)によって2つのタイプに分けられます。
○腐生菌
倒木や切り株などに生えるきのこ
枯れた木や落ち葉を分解して自分の栄養にして生きるきのこで、人工栽培が可能です。シイタケやナメコ、マイタケなど。
○共生菌
生きた樹木とともに生活するきのこ
「寄生菌」と「菌根菌」に分けられ、「寄生菌」は生きた動植物や他の菌類に寄生して宿主から養分を吸収するため、寄生された宿主は衰弱していきます。ナラタケや冬虫夏草など。
「菌根菌」は、宿主となる樹木の根と「菌根」を形成し、宿主から炭水化物やビタミンなどを吸収するかわりにリンや窒素などの養分を供給します。例えばマツタケはアカマツ、ポルチーニはトウヒなどの樹木と共生しています。人工栽培は困難です。
尚、菌根菌は木の根っこに菌根を形成するので、同じ場所に決まったきのこが生えるのですが、不思議なことにきのこができる年とできない年があるそうです。きのこは何かショックが加わると発生すると言われており、例えば落雷や季節の境目に雨が降った、地面が揺れた、風が吹いたなどの出来事が影響しているのではないかと考えられています。
【天然きのこの種類 】
さて次項からはきのこ採り名人の長澤さんが狙う国産きのこをご紹介します。長澤さんはシーズン中は毎週のように山に入り、エスポワールさんにも天然きのこを卸しています。今回のセミナーでは長澤さんの絶大なきのこ愛に圧倒されっぱなしでした。
*梅雨明けから翌年3月くらいまで、採れる時期を追いかけながらご紹介します。
【梅雨明け〜】
アカヤマドリタケ
裏側はきれいなレモンイエロー色。みかんの皮のような柑橘系の香りがする。
成長するとバスケットボールほどの大きさになるものも。
菌根菌で広葉樹と共生している。
タマゴタケ
ヨーロッパで大人気のきのこ。
アマニタ類に分類されるが、アマニタは9割方毒キノコ。大きくなるまで2〜3日ほどしかなく、
すぐに食べないとダメになってしまう。
黄タマゴタケや茶タマゴタケなどもある。
形態が似ているタマゴタケモドキは毒キノコであり、裏のひだが白いのが見分けるポイント。
アカジゴウ
きのこを知っている人にとってはマツタケを超えるレア&おいしいきのこ!
皆が狙っており、なかなか採れないため市場には出回らない。
つるんとした食感で甘みがある。アカマツと共生。
ヤマドリタケモドキ
ヤマドリタケ=ポルチーニ(針葉樹に共生)とよく似ていて味も同じ。
広葉樹と共生している。
甘みがあってクリーミーな味わい。
【8月〜】
ホテイイロガワリ(センコウイグチ)
最近名前がついた。きのこを抜くと線香のような香りがする。
カチカチのきのこで保ちが良く、非常に大きくなる。
はじめは青いが、触ると黒く変色する。ゆでるとまた青くなる。
ハナビラタケ
美容に良いとか抗がん作用があると言われて人気のきのこ。
腐生菌で木の中ほどに生える。ショキショキした食感でおいしい。
アミタケ
条件が揃うとたくさん生え、非常にポピュラーなきのこ。
ゆでると紫色になる。
【秋〜冬 】
サクラシメジ
広葉樹の枯れた葉っぱが積もるところに生える。
ゆでるとクリーム色になる。
少し苦味があり、天ぷらや大根おろしと合わせるとおいしい。
カラカサタケ
スポンジ状で傘の部分をギュッと握っても元に戻る。
ココアのような香りがある。茎の部分を焼いて食べるとスルメの味がする。
コウタケ
非常に人気の高いきのこ。トゲトゲが生えているのが特徴だが、ポロポロと取れやすい。
醤油のような香りがあり、干せば干すほど香り高くなる。
美味しいため高価。(キロ5千円以上することも)
ムレオオフウセンタケ
群生し、同じ箇所にたくさん生える。
歯ごたえ良く、素直な味で他の食材の味を吸収してくれるので食用として人気。
ハナイグチ
ラクヨウ、ジコボ、リコボなどの名前があり、全国各地で親しまれている。
とてもきれいなレモンイエロー色で裏が黄色。冷凍保存をすると美味しくなる。
クリフウセンタケ(正式名はニセアブラシメジ)
ホイル焼きするとバターを入れたような風味や甘みがある。
オオツガタケというそっくりなきのこもあり、そちらの方が大きくて人気も高い。
カノシタ(鹿の舌)
ヨーロッパではピエドムートンという名前で親しまれており、
シチューやオムレツによく使われる。針葉樹の林の地上に群生する。
ショウゲンジ
編み笠を被った僧侶にみえるのでコムソウともいう。食感が良いきのこ。
シャカシメジ
お釈迦様の頭のように生える。味はシメジなので美味しい。
ヌメリスギタケ
腐生菌で白樺の枯れかかった木に生える。
似ているきのこでヌメリスギタケモドキというのもある。
ヌメリスギタケは少し小ぶりで全部ぬめっているが、モドキの柱はぬめらず、ドロヤナギの木に生える。どちらも食べることができる。
ホンシメジ
匂いマツタケ味しめじのしめじがホンシメジ。別名ホテイシメジという。他のシメジよりも価値が高い。
クロカワ(ウシビテイ)
苦味があるが、旨味も強いため和食で重宝されている。美味しくて量が採れないため高価。
キンチャヤマイグチ
白樺と共生する菌根菌。茹でると弾力が出てアワビのような食感になる。
ムキタケ
表皮がはがれやすいためムキタケという。人工栽培可能。
それほど味の濃いきのこではないが、ゼラチン質で鍋に入れると美味しい。
クリタケ
秋の終盤に生えるきのこ。人工栽培ができ、昔から馴染み深いきのこ。きのこご飯で食べることが多い。
ヒラタケ
雪がある中でもOKな冬に生えるきのこ。
写真は白っぽいが寒い時期のものは真っ黒になる。天ぷらや煮物で食べられている。
マツタケ
アカマツとコメツナの菌根菌のため、必ず同じところに生える
(厳密には年に10cmくらいずつ生える場所がずれる)。数は少ない。
地中で育つため、名人は地上に頭を出す前に収穫する。傘が開くと周囲にマツタケの良い香りが漂う。
コガネタケ
手で触るときな粉のような黄色い粉がつく。ショキショキした食感を楽しむきのこ。
生える時は写真のように群生して3年くらい生えるが、その後同じ場所に一切生えなくなるという不思議な生態を持つ。
たくさんの種類がありますが、どれも個性的で可愛いきのこたち♡
来月号ではその美味しさとワインとの相性を探っていきたいと思います。お楽しみに!
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