物流遅延の原因はコロナ禍だけではない?! 問題が複雑に絡み合う国際物流の危機的状況とは

物流遅延の原因はコロナ禍だけではない?! 問題が複雑に絡み合う国際物流の危機的状況とは

昨年末から今年にかけて、マクドナルドの「マックフライポテト」が当面Sサイズのみの販売になるというニュースがお茶の間を駆け抜け、話題になりました。原因はコロナ禍による世界的な物流網の混乱と、カナダ・バンクーバー港近郊の水害によるものとのことでした。
こうした国際物流の混乱はワインの輸入にも大きく影響してきており、実際にこれまでには考えられなかったような輸送価格の高騰や、遅延が生じています。
今回は、国際物流の現状とその原因、また正常化の目処は立つのか、国際物流会社の方にも協力をいただきながら考察していきたいと思います。

 

輸送価格の高騰と遅延状況

現状海上運賃では、コロナ前を1とすると、ドライコンテナが北米からだと3倍、ヨーロッパからだと2.5〜3倍ほど値上がりしています。リーファーコンテナは数に限りがある上に需要が高まっているため、3〜4倍くらいまで値上がりしているところもあるほどです。
昨年12月に国連が出した報告書で、コンテナ船の運賃の高騰が続けば2023年までに世界の輸入価格を11%ほど押し上げ、コロナ禍からの経済回復に影響しかねないとの懸念が表明されるほどの危機的状況です。
遅延も深刻化してきており、最大で1ヶ月以上もの遅れが出たケースもあります。コロナ前までは遅れたとしても2週間程度だったため、倍以上の遅れが発生する可能性を考えておかなければなりません。

航空便についても、コロナ感染拡大後運賃は高騰しています。航空便はコロナで大幅に減便している状況ですが、緊急品や通常は船で運んでいるものでもどうしても期限までに輸送する必要がある貨物(海運落ち貨物と言われています)の空輸需要が急拡大したため、船便以上の値上がりになっています。
航空便は船便と違って海上で何週間も待つということは物理的に難しいため大きな遅延は起こりませんが、輸送キャパシティーの取り合いになるため価格の高騰に繋がっています。

 

原因はコロナだけではない?!

メディアの報道では、現在の運輸価格の高騰や遅延はコロナ禍や自然災害が原因であるため、一過性の問題だという言説も見られますが、実はこうした事態を引き起こした要因は複雑に絡み合っています。特に問題の大きい海運を中心に紐解いていきましょう。

[要因① コンテナ不足]

海運業界の問題点を考えるためには、少しだけ背景を知っておく必要があります。
リーマンショックが起こった2008年以前は、「海運バブル」という言葉が使われるほど海運業界は活況で、船会社は莫大な利益をあげていました。しかし、利益を生むのは鉄鉱石や石炭の運搬で、コンテナ船事業は赤字経営が続いていました。
そんな折にリーマンショックが勃発。それによって世界的に荷動きが減少するとともに、海運大手の株価が下落し、海運不況と呼ばれる時代が訪れました。元々赤字だったコンテナ船は更なる痛手を受け、船会社間での過当競争が深刻化していきます。
そこで、世界中の船会社はコンテナ船による損益を抑えて利益へと変えるために、規模を大きくして競争力をつけるための経営統合や再編、あるいは過度な競争を避け採算性向上を図るためのアライアンスの締結を進めました。
日本でも2018年に海運大手の日本郵船、商船三井、川崎汽船の3社がコンテナ船事業を統合して合弁会社を設立しましたが、こうした業界再編によって船会社の数はかなり淘汰されました。

その後待っていたのはコスト削減などによる財務状況の適正化です。コスト削減の対象となったのがコンテナでした。鉄の値段の高騰で製造コストが上がっていたコンテナの新規製造を抑えるということが行われたわけです。
新型コロナによる世界的な巣ごもり需要の拡大や、中国での自動車・機械・電機などの生産が回復したことで一気に物流が増える中、製造を抑えていたコンテナが大幅に足りなくなったことが今回の大きな要因の一つになっています。コンテナ製造は急ピッチで進められていますが(生産の90%は中国)、不足解消までは時間を要する見込みです。

 

[要因② 港湾の混乱]

要因①で再編された船会社各社がコスト削減を行ったことに触れましたが、その一環として近年大型船の建造が進められてきました。一度にたくさんのコンテナを運べばその分燃料や人件費などがコストカットできるためです。数年前までは1船あたり20フィートコンテナ1万個積載が最大でしたが、現在は2万5千個も積載するような大型船が出てきています。
しかし、そのコンテナを捌く各港の設備や体制などのインフラは数年では変えられません。いきなり2倍以上の貨物が到着しては、捌ききれずにパンクしてしまいます。実はコロナで荷物が増える前から港での作業は溢れる寸前の状況でした。

日本は更に深刻な状況で、上記のような世界最大の大型船が入れる港は一つもありません。日本向けの貨物は上海・シンガポール・釜山などの大きな港を経由して積み替える必要があります。現在横浜港を整備しようとしていますが、日本の対応が遅れればこうした大型船は日本を素通りすることになり、調達にも時間がかかる上にコストも増大する懸念があります。

また、かつてはアジアとヨーロッパ、アジアと北米、アジアとオセアニアといったようにある程度地域ごとに運行していましたが、コスト効率化のためにヨーロッパとアメリカを繋いで途中でアジアに寄港するような長い航路が主流になっています。そのため、どこか1か所で遅れがあると全てのスケジュールが狂ってしまうという不便さも、今回の物流遅延の一因になっています。

 

[要因③ 新型コロナウイルスの蔓延とスタッフ不足]

要因①②のような問題がある中でダメ押しのように発生したのが新型コロナウイルスでした。
中国などの主要な港を抱える国でもロックダウンによって港をストップさせてしまったため、約1ヶ月間貨物を動かせなかったという事態も発生しており、港湾は未だ混乱をきたしています。2022年1月中旬段階で、ロサンゼルスでは100隻の船が沖で入港を待っている状況ですし、いつまたロックダウンになるか分からないため、正常化の目処は立ちません。

そして、コロナ禍の最大の問題はスタッフ不足です。感染者や濃厚接触者が休みになるというのはもちろんですが、大きな労働力だった移民の方々が本国に帰らされてしまって戻ってこれなかったり、ロックダウン中に一度離れた労働者が他の仕事についてしまったり、コロナの補助が出る間は仕事に戻らなかったりといったことが頻発しています。物流の需要は増え続け、港湾は新しい船や捌ききれない貨物で溢れかえっているのに、必要な人員は確保できないという深刻な悪循環に陥っています。
更に恐ろしいことに、一度離れたスタッフが物流業界に戻ってくるという確証はありません。日本でもトラックドライバーの不足が懸念されていますが、労働条件や労働環境を早急に改善しなければスタッフ不足は長期化するだろうと予想されています。

このように、現在の遅延や価格の高騰は海運業界で元々課題になっていた部分が根底にあります。スタッフ不足などコロナによって深刻化・顕在化した問題もあり、コロナが収束してもすぐに正常化するとは言えない状況です。

 

危うい日本のロジスティクス

最後に、ワイン輸送とは少し離れてしまいますが、コロナが炙り出した問題として日本の運輸の脆弱性が挙げられます。
先ほど日本には最大規模の貨物船が着港できる港がないと述べましたが、旺盛な中国市場の陰に隠れて日本の存在感は薄くなりつつあります。
輸送価格の高騰とは、言い換えれば強い会社(国)が勝つ構造であるということ。中国企業によるコンテナの買い占めがコンテナ不足の一つの要因であり、この状況の中で「ゾンビ船」と呼ばれる空のコンテナを詰んだ船をアメリカから中国に走らせるほどの力を保持しています。

アメリカは日本と同様にコンテナ会社を持たない国ですが、有事の際にはコンテナ船を優先的に回してもらう体制を整えています。それに対して日本は四方を海に囲まれ、食糧自給率も著しく低い割にそうした対策は取られていません。

物流管理を表す「ロジスティクス(Logistics)」という言葉は、そもそもは軍隊用語の兵站(へいたん)を意味し、 作戦計画に従って兵器や兵員を確保し、管理し、補給するまでの全ての活動のことを指します。グローバル化すればするほど、日本でもこの言葉の意味通り、計画的にロジスティクスを整えることを考えるべきなのではないでしょうか。

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