【それぞれの生産者について】

生産者①：Marzilly（マルジリー）

近年、彗星のごとく頭角を現したミニエールによって注目を集める、シャンパーニュの最北端マッシフ・ド・サンティエリーのエルモンヴィル村。2012年に設立されたマルジリーは、そこに程近いリュ・ディ「マルジリー(Marzilly)」に畑を所有して人為的な介入を極力避けた栽培とワイン造りを行い、世界的な評価誌として知られるGault&Millau誌では2020年ワイナリー・オブ・ザ・イヤーに、Bettane+Desseauve誌では2021年ジーニアス・オブ・トゥモローに選出されるなど、近い将来の世界的な大ブレイクを予感させる蔵元である。
この地域の豊かな歴史と伝統的な醸造方法に触発されたのが、今回来日するマキシム氏である、彼はベルギーでの歴史的建造物をリノベーションするという仕事をきっぱりと辞め、妻のアンナとともに新しいワイナリーを設立するという挑戦を受け入れた。彼は地元の資源を活用し、この地域の伝統的なノウハウを尊重しながらシャンパーニュを造ることで、マルジリーとマッシフ・ド・サンティエリーの文化的・歴史的遺産を前面に押し出すという明確な目標を持っている。

生産者②：Aurore Casanova（オーロール・カサノヴァ）

元プロのバレエダンサーの妻と、医療分野で働いていた夫という異色の経歴を持つ夫婦が営むワイナリー。今回来日する女性当主オーロール・カサノヴァは世界的なバレエ団で活躍していた経歴を持つ。ブドウ栽培家の母とIT技術者の父のもとパリで育った彼女はシャンパーニュの畑へ頻繁に通いながらブドウ栽培を続けていた母の姿を間近で見て育ち、バレエ団で活躍後に帰郷する形でシャンパーニュ生産者となる。オーロールと同じく、シャンパーニュ地方で育つも医療分野という異業種となり、そこから生産者へと転身した夫とともに家族から畑を受けつぎ、アンセルム・セロスをはじめとする一流の生産者との交流を通じて、自らの哲学を磨いていった。
オーロール・カサノヴァのシャンパーニュはL’assiette Champenoise(ランス***)やTim Raue(ベルリン**)といった世界の星付きレストランでも採用されており、2023年からはシャルトーニュ・タイエやアグラパールなど同産地を代表する一流生産者が所属する団体、テール・エ・ヴァン・ド・シャンパーニュの一員にもなっている。今後、ますます注目を集めることは間違いないが、年産本数は22，000本程度と非常に限られているため、見つけたらぜひ手に入れたい生産者の一人である。