ペコリーノが姿を消した当時のサン・サヴィーノ当主ドメニコ・カペッチも、このブドウについての知識はなかった。しかしドメニコはある日、内陸の村アルクアータの標高700mを超える山の上のワイナリー跡地に、樹齢100年の土着ブドウの古樹が現存しているという噂を耳にし、興味をかきたてられた。「この土着ブドウのポテンシャルがどれほどのものか知りたい」。彼は、一個人の趣味ではなく、マルケに受け継がれたペコリーノのポテンシャルを公明正大に証明しようと決め、この古樹からマサルセレクションで約80km離れた自分の畑に接ぎ木した。1990年にマルケ州政府の支援を取りつけた彼は、トレッビアーノやシャルドネ、リースリングなど、国内外の主要な白品種とペコリーノの比較実験を開始。栽培はサン・サヴィーノが、醸造・分析はマルケ州が担当した。3年に渡る実験の中、州政府の後ろ盾のおかげでつぶさにブドウを観察し、成分分析を行うことができた。
詳細なデータから分かったのは、ペコリーノには優れた白を生み出すポテンシャルがあるということ。この結果を受け、ドメニコは本格的に『失われたブドウ』ペコリーノのワイン造りに取り組んだ。ペコリーノについて十分な知識を持つ者がいない中、先駆者として相当の苦労があったことは想像に難くない。しかし、その情熱は息子であり現当主のシモーネに受け継がれ、彼がペコリーノから生み出したチプレアは、2008ヴィンテージでマルケのペコリーノで初めてガンベロ・ロッソのトレビッキエリに輝いた。マルケの白品種として、名実ともにこのブドウの復活が認められた瞬間である。現在では25haの自社畑のうち、8haにペコリーノが栽培されている。
標高250-300m、遠くアドリア海を望む急斜面に位置する畑では、他にもモンテプルチアーノやサンジョヴェーゼなどの土着品種が植えられている。これらのブドウを用いた赤は、当主のシモーネのおおらかな人柄を反映したかのような豊かな果実と肉付きの良いストラクチャーが魅力である。最良年にしか生産されない赤のトップキュヴェ、クインタ・レジオは、2ヴィンテージ連続でルカ・マローニにより赤ワイン部門のトップ3に選ばれている。
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