【フィラディス実験シリーズ第31弾 】 スモークサーモンにベストマリアージュなワインとは?(営業 勝部晴美)
今回のマリアージュ実験のテーマは、「スモークサーモン」です。
見た目は赤身ですが実は白身魚に分類され、程よく脂があり、スモーキーなフレーバーも加わる・・・と味わいの要素の多い食材のため、泡白赤とさまざまな味わいのワインに合わせやすそうではありますが、ベストマリアージュのワインは何か?と聞かれたら答えられる方は意外と少ないのではないでしょうか。
そこで、私たちフィラディス社員が40種のワインの中からスモークサーモンにマッチングするワインを探してみました。
スモークサーモン&ワインについて
スモークサーモンは、日本発のトップブランド「王子サーモン」から、しっかりと塩気のあるチリ産サーモンの切り落としを用意しました。肉厚で脂もしっかり乗っており、スモーク感をアフターにほんのりと感じます。サーモン特有のフレーバーや柔らかなテクスチャー、脂のボリューム感がマリアージュのポイントになりそうです。付け合わせにディルとケッパーを用意しましたが、基本的にはそれらは加えずにスモークサーモンの味わいのみで合うワインを探していきます。
ワインはスパークリング、白ワイン、ロゼワイン、赤ワイン合わせて40種類を用意し、全てブラインドでテイスティングしました。
マリアージュの判断方法
「ボリューム」「テクスチャー」「フレーバー」「五味(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)」について、以下のマリアージュポイントを参考にしながら分析します。
同調 (ワインと料理の個性の一部が寄り添うことで双方を高め合う)
中和 (お互いの個性を中和させて味わいのバランスをとる)
補完 (ワインと料理の双方が揃うことで、足りなかったものを補完する)
※理論的なマリアージュの考えについては、若手ソムリエ応援プロジェクトの第1回セミナーにて大越基裕講師に解説いただき、2013年12月のニュースレターで公開しております。コチラに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
第1回若手ソムリエ応援プロジェクト 『マリアージュ理論セミナー』の講義内容を公開します!
結果
スパークリングワイン
No.1:2017 Talento Brut / Peri
ワインの旨味やドサージュからくる甘味が、サーモンの塩味とよく合っていました。ワインのふんわりとした柔らかなテクスチャーがスモークサーモンの柔らかさに同調するとともに、脂の甘味を感じる余韻が長く続き、上方向に伸びる華やかな組み合わせでした。純粋にお互いの良さを引き出し、むしゃむしゃと食べたくなる「食が進むマリアージュ」で、堂々のNo.1に輝きました。
No,2:NV Melodie en C / Le Brun Servenay
ワインに厚みやボリューム感があるため、サーモンの脂をしっかりと受け止め、ボリューム感がよく合っていました。また、サーモンの塩味がワインの塩味と同調し、更に旨味を引き出していました。ただ、ワインも食材もどちらも強く平行線になってしまうという意見もあり、その部分が1位との差を生む結果となりました。
集中度の高いワインのため、ディルやケッパーを使ってスモークサーモンにスパイスやハーブのアクセントを加えるとワンランク上のマリアージュになりました。
No.3:NV Cremant du Jura Brut / Philippe Vandelle
コクのあるサーモンの香りとワインのフレーバーが見事に同調しており、ワインの硬質なミネラルとサーモンの塩味との相性も良く、アフターが長く感じられる手堅い組み合わせでした。また、ワインのボリューム感に対してサーモンの脂の量がちょうど良く、しっかりと寄り沿っていました。
難しかったワイン:ロゼ&ブラン・ド・ノワールが厳しい結果に
有力候補になると予想していたロゼとブラン・ド・ノワールでしたが、実際に合わせてみると思ったほど点数が伸びませんでした。スモークサーモンの脂に対して、黒ブドウ由来のタンニンが血生臭い香りを引き出してしまう場面もちらほら。ワインのベリー香とサーモンのフレーバーも相性は決して良いとは言えませんでした。
白ワイン
No.1:2019 Gruner Veltliner Langenlois / Weszeli
過去のマリアージュ実験でも数々の素晴らしい功績を残してくれたグリューナーがNo.1に!
しなやかで柔らかいテクスチャー、ボリューム感がぴたりと同調し、ワインの甘味とサーモンの脂の組み合わせがより旨味や甘味を引き出していました。特に「塩味」の同調が素晴らしく、柑橘の香りもサーモンの生臭さを際立たせることなく、互いに引き立て合っていました。+αとして、ディルを加えるとワインの柑橘の香りやハーブ香と混然一体となって更に素晴らしいマリアージュでした。
No.2:2019 Fiano di Avellino Le Grade / Vinosia
アタックはサーモンの方が強く感じますが、中盤からアフターにかけて旨味が引き出されてとても合ってきます。全体的なバランスが良く、サーモン嫌いでもこれなら食べられそうという意見もありました。ケッパーを加えると、ワインの持つレモンフレーバーと非常に良く合い、ゴージャスなマリアージュとなりました。
No.3:2020 Muscadet Sevre et Maine Sur Lie Les Barboires / David & Duvallet
ワインの優しい甘味とサーモンのスモーク感がマッチ。ワインが軽やかな印象なためボリューム感はアンバランスだという意見もありましたが、サーモンの旨味とワインの果実味の調和が素敵な組み合わせでした。
No.3:2020 Chardonnay / Tramin
ステンレスタンク発酵・熟成のフレッシュなシャルドネ。アタックではぴたりと合うというわけではありませんが、ワインの甘味とサーモンの甘味が同調して心地よく、双方の要素が引き出され、明るくチャーミングな印象のマリアージュでした。とてもアロマティックな組み合わせのため、香りが派手すぎるとして評価が低いスタッフもいました。
難しかったワイン:香り華やか・樽感とボリューム、主張の強いワインはNG
白ワインはタイプによって合う・合わないが分かれてきました。特に香りや樽感の要素が突出しているワインはことごとく点数が伸びませんでした。また、残糖のあるタイプのシュナン・ブランも試しましたが、ワインの主張が強く、サーモンが負けてしまいアンバランスな結果に。酸が強めのワインについては、酸だけが浮いてしまいサーモンとの相乗効果は生まれず、難しい結果となりました。
ロゼ / 赤ワイン
No.1:2020 Caprice de Clementine Rose / Ch. Les Valentines
ここでは順当にロゼワインが1位を獲得しました。ボリュームとテクスチャーが同調し、ワインのフレーバーや塩味、ほのかなタンニンがスモークサーモンに寄り添っていました。欲を言えば、もう少しボリューム感があるタイプのロゼだと、ベストマリアージュになったのではないかと思います。
No,2:2019 Bourgogne Rouge / Lucien Muzard
ピノ・ノワールのベリーのフレーバーはサーモンとは平行線でしたが、ワインが持つ酸・ミネラルが五味を補完し、バランスの良さを感じました。
No.3:2017 Erse Etna Rosso / Fessina
どうしても赤ワイン特有の果実味をサーモンに合わせるのが難しいためベストマリアージュではないものの、ワインの酸・ミネラルが土台として全体の味わいを支え、美味しく食べ進められる組み合わせでした。
難しかったワイン:ベリーのフレーバーが強いとNG!
ワインのベリーのフレーバーがサーモンの味わいを殺してしまうため、ロゼ/赤チームは全体的に得点が伸び悩みました。ジンファンデルといった果実味に溢れ、ベリーがパワフルに出ているワインはサーモンと喧嘩してしまい、好まれない生臭さが表出してしまうケースが多々見受けられました。
ボルドーについては賛否両論の結果となりました。フレーバーのぶつかり合いから、サーモンの生臭さがどうしても気になるという意見が主でしたが、ボルドーの熟成由来の甘さとサーモンの甘さの同調のマリアージュを感じ、高得点を付けたスタッフもいました。
総評
マリアージュのポイント
実験を通して、ワインとスモークサーモンのマリアージュを考える際に特に重要なポイントは、「フレーバー」「テクスチャー」「ボリューム」であるということが見えてきました。
①フレーバー(主に同調)
大前提として、魚の嫌な生臭さが出ないことが第一条件となります。前半は良くてもアフターに生臭さが出てしまう組み合わせも多くありました。また、燻製のフレーバーに合うかどうかで良いマリアージュになるのか、残念なマリアージュになるのか結果が分かれました。
②テクスチャー(主に同調)
サーモンは肉厚で柔らかい食感であるため、ワインの骨格がしっかりしたものは相反してしまう傾向がありました。特にスパークリングワインのふんわりと柔らかいテクスチャーは、サーモンの柔らかさと良く合いました。
③ボリューム(主に同調)
サーモンとワインの相性を考える上で、その豊富な脂も重要な要素の一つです。サーモン自体にボリュームがあるので、重心が高めなライトなワインだと、サーモンに対して物足りないという印象が強く、ある程度しっかりとボリュームのあるワインがピタッとハマる印象でした。
全体ランキング
1位 | 2017 Talento Brut | Peri | シャルドネ 100% |
2位 | 2019 Gruner Veltliner Langenlois | Weszeli | グリューナー・フェルトリーナー100% |
3位 | NV Melodie en C | Le Brun Servenay | シャルドネ100% |
4位 | 2020 Caprice de Clementine Rose | Ch. Les Valentines | グルナッシュ50%、サンソー50% |
5位 | NV Cremant du Jura Brut | Philippe Vandelle | シャルドネ100% |
点数から割り出した全体の1〜5位を見てみると、泡・白・ロゼが満遍なくランクインしていますが、残念ながら赤ワインは1アイテムも入りませんでした。
やっぱり泡は強かった!!シャルドネ100%のスパークリングと好相性
1〜5位にシャルドネ100%のスパークリングワインが3アイテム入る結果となりました。スモークサーモンとの抜群の相性の良さが伺えます。スパークリングワインは、泡があることで全体的にどんな食材にも合わせやすいと言えるのですが、そんな中でもブラン・ド・ブランの3つには光るものがありました。ブラン・ド・ノワールやロゼなどベリー感が強く出ているものは避けた方が無難でしょう。
法則が見つけづらい白ワイン・・・ニュートラルな辛口が◎
白ワインが全体的にサーモンに対してボリューム負けしてしまう中、グリューナー・フェルトリーナーとフィアーノが高評価を獲得しました。酸や甘味、樽香など何かの要素が特出しているワインは喧嘩になる確率が高いため、ボリューム感のあるニュートラルな辛口を選ぶことが重要かと思われます。
赤ワインはベリーの香りや凝縮感が強くないものを
ロゼの優位性は揺るがず、赤ワインを合わせるのはなかなか難しいことが分かりました。強いて赤ワインから選ぶのであれば、凝縮感が強くないこと、ベリーの香りが際立ちすぎないこと、アルコール度数は低め、ミネラルがあって酸味もしっかり感じることが条件となります。タンニン量とのバランスも重要で、しっかりしたタンニンがある現代的な造り方の生産者は生臭さが強調される傾向が強く、古典的な造りの方がテイストとして合う確率が高いことがわかりました。
今回の実験結果が少しでもみなさまのお役に立てば嬉しいです。
スモークサーモンとワインの組み合わせ、ぜひ試してみてください!
-
前の記事
物流遅延の原因はコロナ禍だけではない?! 問題が複雑に絡み合う国際物流の危機的状況とは(広報 浅原有里) 2022.02.02
-
次の記事
「レヴェランス R」の“響かせ合う”古酒マリアージュに迫る! 2022.04.02