1990年代、2人の醸造家が、マストロヤンニ氏がいち早く見込んだカステルヌオーヴォ・デッラバーテのポテンシャルを、彼が目指す以上に引き出した。栽培から醸造までワイン造りの全てを監督するアンドレア・マケッティと、コル・ドルチャなどブルネッロの多くの造り手のコンサルタントを務めるマウリツィオ・カステッリである。彼らはマストロヤンニ氏の「伝統ありき」の信念を共にし、「ワインは畑で育つ」というポリシーを実践している。
化学薬品を用いない栽培は有機農法に基づいているが、ビオかどうかよりも、生態系を整え、病害が起こりにくい環境にすることで、人の手を加えずとも質の高いブドウを得ることに焦点が置かれている。収量制限も厳しく行われ、質の悪いブドウはグリーンハーヴェストで除去し、収穫時には、熟していないブドウや過熟したブドウは畑で選果され、枝から切り落とされる。設立当初から変わらないコンクリートタンクでの発酵、大樽での熟成でも、ワイン自身が発展するよう、人の手の介入を最小限にとどめている。
創始者のマストロヤンニ氏の死後、2008年に醸造所はエスプレッソコーヒーの最大手、グルッポ・イリーの手に渡った。大資本が入ることで全く別のワインになるのでは、と多くの人が危惧したが、イリーが出した買収の条件はむしろ、これまでと同じスタッフ、同じフィロソフィで、マストロヤンニの名の下にワイン造りを続けることだった。特に2人の醸造家アンドレア・マケッティとマウリツィオ・カステッリが醸造所に留まることが必須条件だった。イリーが唯一手を加えたのは、選果台や部分的な木製の発酵槽の導入、セラーの改装など、ハード面のみだった。マストロヤンニの築いてきた伝統とアイデンティティが守られたのは、この買収をグルッポ・イリーに働きかけたフランチェスコ・イリーの功績だ。フランチェスコはマストロヤンニのワインの30年来の愛好家というだけではなく、近隣にポデレ・レ・リピという醸造所を個人的に所有する関係から、ワイン造りをアンドレアとマウリツィオに師事した。彼にとってマストロヤンニは公私ともに最大限の敬意を払うべき存在だったのである。
イリーによる大規模な設備投資のおかげでワインはよりクリーンになり、クオリティは一層向上したが、マストロヤンニの核となる部分は変わらない。大樽での熟成や、設立当時に植樹された古樹から造られる最上クリュ、ヴィーニャ・スキエーナ・ダジノにその伝統が息づく。2007ヴィンテージで初めてリリースされたヴィーニャ・ロレートは、マストロヤンニ家所有の時代から構想があり、グルッポ・イリーの下で形となった、マストロヤンニの伝統の継承を象徴する新たなクリュ・ブルネッロである。
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