≪こんな香り･味わいのワインです≫：
僕はコート・ドールという産地内におけるモレ・サン・ドニの立ち位置というとやはり「卓越したバランス」だと思っています。ジュヴレ・シャンベルタン＆シャンボール・ミュジニーというある意味個性のはっきりした産地に挟まれ、一見すると隠れた産地のようなポジションでありながら実は美しいバランスこそが個性である、という。だからこそこの村のワインは、目立ちはしませんが着実にハイクオリティをただき出してきます。
『アン・ラ・リュ・ド・ヴェルジィ』は、ブラックフルーツの印象がぎゅうぎゅうに詰まった、エレガンスよりは力強さを感じさせる第一印象でスタート。鮮やかに紫がかった色調からも想像できるように、薔薇の花やアールグレイティーの香りなど華やかさを感じさせます。味わいもまずは果実の充実した甘くジューシィなテイストから、そこに後から軽めの酸が現れ、最後にじんわり系の旨みで締まる流れ。余韻にもベリー系果実的フレイヴァ-が長く残り、じっくり浸れました。時間経過とともに果実の厚みとタンニンの存在感が増し、2時間後くらいに全体のバランスがカチリと嵌まり合います。まだまだ若いこのワイン、今すぐ飲むなら早めの抜栓を、保存できるのなら3本程確保して3-5年後、10年後くらいの長いスパンで変化を見て欲しいと思います。

≪良い状態で楽しむには、いつ抜栓する？≫：
最短でも飲む1時間前、理想を言えば2時間前には開けておきたいところです。2019年ヴィンテージと、このクラスでは出来立てほやほやと言っても良いくらいの若いワイン、開けたてからバランスが完璧にまとまっているとは決して言えない状態です。でも心配はありません、ただ1-2時間を待つだけで良いのですから。早めに開けたらコルクまたはボトルストッパーなどを挿しておいてください。忘れた頃に、目の前には素晴らしいワインが…(忘れないと思いますが)。

≪このワインがもっとおいしくなる温度設定≫：
セラー保存だったらそのままの温度で、室温で置いてあったら冷蔵庫45-1時間くらいかアイスバケツ冷却6-7分程度(上記の通り抜栓は事前にしておいてください)。ヴォリューミーで甘いフルーツ感が、温度が高すぎるとやや重く感じるかも。温度を下げてワインの全体像に「輪郭の線」を描いてあげることで、果実のピュア＆クリア感が増します。

≪おすすめのワイングラス形状･サイズ≫：
まよわず大きめのブルゴーニュ型グラスでゆったりと楽しんで下さい。モレ・サン・ドニ上級のリッチさ、スケール感は、小さいグラスに閉じ込めてしまうと折角の本領が発揮されません。大きいグラスで酸を伸びやかに解放してあげることが、100%愉しむための重要なポイント。それぞれの要素が伸びやかに拡散する大きいグラスでこそ、このワインの本領が楽しめますよ！