生産者のこだわり

『シャトー・リリアン・ラドゥイ』の歴史は、メドックの歴史と不可分と言っても過言ではない。 「ラドゥイ」のエステートは、ガスコン語に由来するこのエステートの存在は、ラフィットの領主でもあったジャック・ド・ベコイランがその土地を所有していた1564年にまで遡ります。シャトー・ラフィット・ロスチャイルドは、実際に『ラドゥイ』にほど近いところに位置しています。他にも、シャトー・コス・デストゥルネルやシャトー・コス・ラボリィも近接しています。

その後18世紀の段階では、このシャトーは高名なバレ家によって所有されていました。 バレ家は150年にわたってこのシャトーを保有し、見事なシャルトルーズ風のシャトーを建立、数十年後に左右に2つの塔が築かれ、シャトーの象徴とも言える現在の姿となりました。ファミリーのイニシャルである「A. B.（オーギュスト・バレ）」と「C. L.（シャトー・ラドゥイ）」は、塔の石にはっきりと刻まれています。

メドック地域のワインが黄金時代を迎える19世紀半ばの1850年、『シャトー・ラドゥイ』は当時のワインガイド「コック・エ・フェレ」の初版において、サン・テステフ地域で最高のシャトーの1つと評されました。1898年のフェレ版によると、エステートの全敷地面積は75ヘクタール、そのうちの4分の3にブドウが植えられていました。同ガイドによると、シャトーは1932年にはクリュ・ブルジョワ・シュペリュールの格付となったことを確認できます。

20世紀に入り、第一次世界大戦の影響によりエステートは大きな被害を受けました。ブドウ畑は分割保有されることとなり、残念ながらこの優良な畑が顧みられることの無い時代が続くことに…。

シャトーの転機は1980年代半ばに訪れます。クリスチャン・ティエブロと彼の妻リリアンがシャトーを購入、その記念としてシャトーは『リリアン・ラドゥイ』と改名されました。彼らは1989年のヴィンテージから本格的に品質向上に取り組むようになりました。サン・テステフのアペラシオンが表現すべき、傑出した『ラドゥイ』のクオリティを、再生することとなったのです。

2008年、現在のオーナーであるジャッキーとフランソワーズ・ロレンツェッティ夫妻がこのエステートに惚れ込み、シャトーを取得することとなりました。彼らはすぐにワイン造りに情熱を注ぎ、広大な区画の再編プログラムを実施し、その品質を更に高めることに成功しています。2015年には、クリュ・ブルジョワ格付の優秀賞を決めるコンペティションにて『クリュ・ブルジョワ・カップ』を獲得しました。シャトーの壁に描かれている四つ葉のクローバーのイメージは『リリアン・ラドゥイ』の象徴となり、ラベルにもあしらわれています。※ロレンツェッティ夫妻は、2013年よりマルゴー・グラン・クリュ・クラッセ3級の『シャトー・ディサン』の共同所有者でもあります。