フィラディス実験シリーズ第9弾『豚肉にマリアージュするワインを探せ!!』 (営業 松戸 葉月)

フィラディス実験シリーズ第9弾『豚肉にマリアージュするワインを探せ!!』 (営業 松戸 葉月)

今回のマリアージュ実験のテーマは、『豚肉に合うワイン』です。


これまでお肉に関しては、2012年10月号で“ステーキに合う赤ワイン”をテーマに 部位・産地別で検証しました。また、2014年7月号では旬な熟成肉に合うワインを実験してきました。

今回は牛肉から離れ、どんなジャンルにも使われ日常的に親しまれている『豚肉』をテーマに実験を行います。豚肉は国産のロース肉をグリルしてシンプルに塩のみで味付けしたものを使用しました。本来であれば調理方法やソースなどを含めて考えるべきではありますが、素材としての豚肉とワインのマリアージュポイントが分かれば調理法や味付けで別の方向性を見出していけるだろうと考えて、塩のみの味付けとしています。

また、前菜からメインまで幅広く使われる豚肉だからこそ、スパークリング&ロゼ、白ワイン、赤ワイン毎に検証し、マリアージュするポイントや方向性を探りました。

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【実験方法】

○ お肉は豚ロース肉(厚み2cm)をグリルし、シンプルに塩で味付け。必ず肉と脂を一緒に口に入れて咀嚼する。

○ ワインはブラインドにてテイスティングする。

【マリアージュの判断方法】

まず基本として、料理とワインの「ボリューム」と「テクスチャー」が合うかどうかを判断する。

双方が合うものについては、「五味(甘味・酸味・塩味・苦味・旨味)」と「フレーバー」を以下のマリアージュポイントを参考にしながら分析していく。

☆ マリアージュポイント ☆

○同調 (ワインと料理の個性の一部が寄り添うことで双方を高め合う)
例:タイムの香りがする料理にグリーンノートのあるワインを合わせる。

○中和 (お互いの個性を中和させて味わいのバランスをとる)
例:カベルネ・ソーヴィニヨンと仔羊の組合せが好例。ワインのタンニンが仔羊の脂を中和する。

○補完 (ワインと料理の双方が揃うことで、足りなかったものを補完する)
例:塩味&旨味を持った料理に甘味&酸味を持つワインを合わせ、五味を補完し合う。

【結果: スパークリング&ロゼ部門】

シャンパンが圧倒的!ミネラルが強くほんのりとタンニンを持つロゼシャンパンがNo.1に。

☆ マリアージュポイント ☆

* 泡はきめ細かく複雑味があり、ミネラルが引き立つもの ⇒スパークリングよりもシャンパンが優位

* 若干のタンニン分があれば、豚肉をより引き立てる

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第1位 : NV Rose Reserve/Jean Lallement

ロゼとしての果実感・タンニンが豚肉の脂を滑らかな質感に変化させ中和マリアージュとなりました。ワインのフレーバーは豚肉の脂で抑えられてしまう感じがややありましたが、しっかりしたミネラルが余韻に伸びていき最終的にミネラルと脂がマッチングします。ワインの程良いタンニンの強さも厚み・脂のある豚ロースにバランス良く合っていました。

第2位 : NV Cuvee Selection/Brun Servenay

ワインが持つ複雑さ・旨味が、豚肉の複雑さ・旨味と同調していました。更に、豚肉に付いている塩とワインのミネラルが合わさってより深い旨味に変化しました。白のスパークリングの中で、塩味とミネラル感が一番強いこのワインが豚肉の旨味をより深く変化させたのでした。

クレマンやカバと比較すると、圧倒的にシャンパンが優位な結果となりました。

シャンパンは泡のきめ細かさによる繊細な質感や複雑味・旨味に優位性があるため、豚肉ときれいに融合して双方が高め合うという、これぞ正にマリアージュ!と言うべき組み合わせでした。味付けで使用した塩とミネラル感とが相乗し、また脂もあり厚さもある良質な豚ロース肉だったので充分に同調していました。

ではシャンパンの中でマリアージュの優劣がはっきり決まるかというとこれが非常に難しく、特に白のシャンパンの比較は困難を極めました。今回は全てステンレス熟成のシャンパンだったために一様に合っていましたが、どれも同じようなボリューム感・テクスチャーなので、微妙な範囲でフレーバーや五味の合わないところを探ることになってしまい優劣をつけるのは至難の業でした。もし樽熟成由来のより複雑さがあるシャンパンであれば、シンプルな豚のグリルには合わせるのは難しかったのではないかと思います。

大絶賛だったJean Lallementのロゼは、ミネラル感とタンニンが豚肉の脂の強さに大変良く合い、豚肉の旨味をより引き立たせました。今回は塩で焼いたお肉に対してなので、ミネラルが強いことと、咀嚼も必要なため骨格がしっかりしたシャンパンが選ばれたのだと思います。

ロゼシャンパンに対してスティル・ロゼCaprice de Clementineは、豚肉に対してワインのミネラルとタンニンが柔らかく優しいため、あまり評価は得られませんでした。もう少し骨格がしっかりしたロゼであれば上位にランクインしてきたと思います。

ではシャンパン以外の泡ではどうでしょう?甘さが際立つCava Brut RosadoやJadeは難しい結果でしたが、Cava Brut Reservaはシャンパンに引けを取らずとの声も挙がりました。複雑味やミネラルの強さではシャンパンには敵わないものの、ドライで熟成期間が長く香ばしい香りを持つワインの方が合わせやすいことが分かりました。

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【結果: 白ワイン部門】

郷土料理にも豚肉が多いアルザスワインが圧勝!

☆ マリアージュポイント ☆

* 柑橘系よりも白桃系など甘味のある華やかな香り

* しっかりしたミネラルがあるが、全体的なテクスチャーの柔らかさが必要

* 樽香が強いとワインが浮き立ってしまうので注意

* 少し残糖があるくらいでも良い

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第1位 :Pinot Gris Hohrain /Emile Beyer

第2位 :Riesling Andlau /Guy Wach

共通点として、どちらも香りに白桃系の甘い華やかさがあるタイプのワインであり、このフレーバーが豚肉を引き立たせ高め合うような一体感を感じました。また、しっかりとしたミネラル感は持ちながらもワイン全体としては柔らかいテクスチャーが豚肉の脂の甘さやボリューム感と寄り添っていました。1位のPinot Gris Hohrainの方が脂身と好相性でアフターに旨味となって引き立ち、相乗的に美味しくなるという素晴らしいマリアージュでしたが、残糖があるため、人によっては好みに思わない方もいらっしゃるかもしれません。その場合には、マイナス面がなく万人に向けた合わせやすさがあるRieslingをお薦めします。

そして意外なことに、シャルドネは合わないという結果になりました。普段どんな料理にも合わせてしまうシャルドネですが、樽香が強いアイテムはことごとくマイナス評価となり、ステンレスタイプは豚肉の邪魔こそしないものの美味しくなることもなく、マリアージュとは呼び難いものでした。

白ワインとのマリアージュでは、しっかりとしたミネラル感があることが重要になります。

スペインのMoscatelはフレーバーの華やかさが豚肉と相性が良いのですが、ミネラル感・テクスチャーが少し弱いためワインが豚肉に負けてしまいました。ミネラルが細かく酒質が柔らかいGran Ribad Albarinoも豚肉にワインが負けてしまい、やはり魚介類がベストだろうという見解になりました。

アルザスに次ぐ高評価だったロワールワインは、ミネラルは充分にありますがテクスチャーが硬いのでバランスが今一歩。ロワールの持つ柑橘系のフレーバーをアクセントに、豚しゃぶをポン酢で食べさせるような和食的要素のある料理にはより合ってくるのではないでしょうか。

Greco di Tufo L’Ariellaのようなボリュームがある上に非常にミネラルが強く硬さがあるワインは、塩の味付けで良いので、今回使用した粒子の細かい塩ではなく粒の荒い岩塩をふれば合うのではないかと思います。

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【結果: 赤ワイン部門】

果実味・酸・タンニンの全ての面で“程ほど”なワインがベスト!

☆ マリアージュポイント ☆

* 濃すぎずライト過ぎない柔らかな果実味

* まろやかなでシルキーな質感

* 穏やかな酸があること

* 強すぎるバニラ系の樽香はNG

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赤ワインでは、スパークリング&ロゼ部門、白ワイン部門と同等レベルにマリアージュするワインは見つからず、あえて選ぶのであれば・・・として以下が挙がりました。

○Lirac Le Gourmand/Joncier

○Rosso di Montalcino/Lecciaia

比較したアイテムの中で、果実の凝縮度・酸・タンニンのどのポイントも強すぎず、弱すぎないワインが選ばれたという結果です。テクスチャーはシルキーなタイプであることも重要でした。温かい豚の脂とシルキーなテクスチャーが口の中で絶妙に広がり、程良い酸・程良いタンニンが中和的に脂の甘味・旨味を引き立たせ、同調と中和が一緒に楽しめました。

次点となったのはPruno。ストラクチャーやタンニンのバランスが肉の脂を中和してくれて相性が良かったのですが、酸が若干高かったことがマイナスとなりました。

また合わない方向性として、ピノ・ノワールは酸とミネラルによる硬さのあるストラクチャーと脂と厚みのある豚のボリューム感が添わず口の中でバラけてしまいます。唯一、しなやかなテクスチャーのPinot Nero/Traminは奮闘していました。

スペイン系は全体的に甘みが強く濃いため、ワインが支配的となり豚の個性が引き立ちません。今回合わせたカベルネ・ソーヴィニヨンも果実の凝縮感や樽由来の強さが目立つワインだったため、豚肉よりもワインが勝ってしまいました。このような濃く力強いワインには、ソースを合わせるか煮込みにするとぐっと合ってくると思います。

また、豚肉は牛肉よりも硬くて繊維質も多く、今回の実験では厚みもある肉だったため咀嚼が必要になりますので、ワインにある程度の凝縮感が必要です。4 Meses やPrimitivo Orusなどはテクスチャーが柔らかく凝縮感が足りないため難しい結果となりました。

【実験を終えて】

豚肉にはアルザスワイン!

今回の実験の一番の驚きは、アルザスワインと豚肉がこれぞマリアージュ!という完璧な相乗効果を発揮したことではないでしょうか。豚肉の代表料理に甘く煮込んだ角煮や酢豚など、豚肉の最大の特徴である脂の甘味・旨味に寄り添いつつ酸味を補完しているものが多くありますが、ワインも同じなのだと思います。

しかし、一般的にボトルオーダーはもちろんグラスでもアルザスワインをご注文される方はどの位いるでしょう。リースリングの香りが合わせにくい、ピノ・グリは甘すぎると食事に合わないなど、どう使っていいか分からないという声は私達もよく聞きます。豚肉にはアルザス!今回の結果から使い方が見えてくるのではないでしょうか。

また、家庭で食べる機会が多い豚肉だからこそ、食卓でのアルザスワインの有効性も自信をもって再認識しました。

やっぱりシャンパンってすごい!

シャンパンについては改めて万能性を感じました。豚料理とマリアージュさせる時に、赤よりも白よりも一番失敗がないのがシャンパンなのかも知れません。特にロゼシャンパンの使い勝手の良さはもっともっと広がってほしいと思います。前菜からメインまでロゼシャンパン一本で通すのも、とても粋な愉しみ方ではないでしょうか。

赤ワインは煮込みかソースを合わせて!

今回の実験ではベストマリアージュが見つけられなかった赤ワイン。それでもやはりメイン料理には赤ワインを合わせたいと思う方も多いはずです。ポイントは、シンプルな豚料理であれば、果実味・酸・タンニンが全て“程ほど”なワインを選ぶこと。そして、そのいずれかでも強いワインには、ソースを付けるか煮込み料理にするとより合わせやすくなるでしょう。

様々なジャンルで料理される豚肉。料理法やお客様の好みによって合わせるワインはもちろん異なる中、今回の結果が皆さまのお役に立てば幸いです。

≪豚肉ご提供およびご協力≫

有限会社横内商店 横内様

TEL: 03-3453-0944

https://www.yokouchishouten.co.jp/

CTA-IMAGE ワイン通販Firadis WINE CLUBは、全国のレストランやワインショップを顧客とするワイン専門商社株式会社フィラディスによるワイン直販ショップです。 これまで日本国内10,000件を超える飲食店様・販売店様にワインをお届けして参りました。 主なお取引先は洋風専門料理業態のお店様で、フランス料理店2,000店以上、イタリア料理店約1,800店と、ワインを数多く取り扱うお店様からの強い信頼を誇っています。 ミシュラン3つ星・2つ星を獲得されているレストラン様のなんと70%以上がフィラディスからのワイン仕入れご実績があり、その品質の高さはプロフェッショナルソムリエからもお墨付きを戴いています。 是非、プロ品質のワインをご自宅でお手軽にお楽しみください!