Armand Rousseau(アルマン・ルソー)

ジュヴレ・シャンベルタンはムルソー同様AOCの面積が大きくブランド力が強い。他のアペラシオンよりも遥かに売りやすいため、少なくない生産者がその知名度にあぐらをかいて微妙なワインを作っている。

もちろんこうした「ビジネスマン」を横目に、品質を追い求める優良な職人的ドメーヌも複数存在する。
アルマン・ルソーはその頂点に君臨するドメーヌである。ブルゴーニュにおいてライジングスターという言葉は耳にタコができるほど聞かされてきたが、ルソーはシャイニング・スターである。昔から輝き続け、今なおその輝きを失わず、むしろ年々その威光は増す一方・・・それがアルマン・ルソーである。
品質や知名度、所有畑や市場価格といった総合力でブルゴーニュトップ5に入る作り手であり、その圧倒的な存在感はDRCやLeroy、Leflaiveと並べても全く引けを取らない。
世界中が熱狂するワインだが、年産は少なく平均65,000本。このうち80~90%が輸出され、国先は30カ国以上にも及ぶ。

 

歴史

創業者であるアルマン・ルソーは小さなブドウ栽培家の出身で、若い頃は両親の影響でネゴシアンの仕事をしていた。1909年の結婚を機に畑や醸造設備を手にするが、当時アルマンはブドウをネゴシアンへ売っていた。彼はここで得た利益を元にChambertin、Charmes、Clos de la Rocheなどの畑を購入。1920年代初頭のことであった。

ある日アルマンはレストランに強いコネを持つ友人から「自分で瓶詰めして飲食店に売ってみたら?」と勧められる(この友人は後にLa Revue de vin de Franceの創始者となる)。この案に乗ったアルマンは1930年代に自ら瓶詰めして売ることを決意。ドメーヌ式生産のパイオニア的存在となり、ワインの直接販売によって多額の利益を手にした。彼は優れた畑(Chambertin、Mazis、Mazoyeres)を買い増していき、1954年にはClos Saint Jacquesを手に入れる。しかしその5年後、自動車事故によってアルマンは帰らぬ人となってしまう。当時ドメーヌは約6haの規模であり、これをアルマンの息子シャルルが引き継いだ。

シャルルは輸出市場の開拓(USを筆頭にUK、、スイスなど)に情熱を注ぎ、国外販促に成功することでドメーヌのブランド力向上に大きな貢献を果たした。輸出で得た利益をさらなる畑の拡張(Clos de Bèze、Clos de la Roche、Chambertin、Clos des Ruchottes)に費やし、規模は約13haとなった。

1982年にシャルルの息子エリックがドメーヌに加わった。サステナブルな意識が高かったエリックは、殺虫剤や化学肥料を使わない健全な土作りを行った。またグリーンハーヴェストや短い剪定といった厳しい収量制限を取り入れ、品質向上に大きく貢献した。また2012年、Chateau de Gevrey-Chambertinの畑(2ha)の管理を依頼され、エリックはこれを承諾。こうしてGevrey Chambertin、Lavaux Saint Jacques、Charmes Chambertinの一部がルソーのワインにブレンドされることになり、一方モノポールのClos du Chateauは単独で瓶詰めしている。

2014年にはエリックの娘シリエルがドメーヌに参画。ニュージーランドやオレゴン、オーストラリアで学んだ彼女は、伝統を守りつつもオープンなマインドを持っている。現在は彼女がドメーヌの中心となっており、2020年にはセラーをリニューアルした。

 

ジュヴレ最強のポートフォリオを誇る。合計約15haを所有するが、半分以上が特級畑であり、Chambertin最大の所有者(2.55ha)かつClos de Beze 3番目の最大所有者(1.42ha)。また全体でわずか3.3haのRuchottesにある石垣で囲われたモノポールClos des Ruchottes(1.06ha)を所有。加えてMazis(0.53ha)とCharmes(1.47ha ※Mazoyeres含む)、さらにはお隣モレの特級Clos de la Roche(1.48ha)も所有する。プルミエでは特級と同格のClos Saint Jacquesの1/3を持つ最大所有者(2.21ha)であり、Cazetiers(0.6ha)、Lavaux Saint Jacques(0.76ha)と圧巻のラインナップである。ルソーでは村名格が占める割合は全体の20%程度。他生産者のポートフォリオとは完全に真逆のピラミッドができている。

 

栽培

古樹と収量制限というシンプルなルールがルソーのスタイルである。畑では毎年少量ずつブドウを植え替えているが、平均樹齢は比較的高く保たれており、Chambertinでは平均60年、Bezeでは45年である。古樹は自然と収量が下がるため平均を高く保つことが重要である。そこからブドウ木の短い剪定や芽かき、新梢間引き、グリーンハーヴェストでさらに樹勢を抑え、一本のブドウ木には5〜6房しか残さない。その結果、平均収量は30-40hl/haとなる。また古樹を大切にする一方で、若木の役割も忘れてはならないとエリックは言う。「若木には果実感、エレガンスやフィネスが宿る。古樹には見事なパワーが宿る。両者をブレンドすることで単体では出せない複雑さ気品が生まれるんだ。」

 

醸造

基本的にブドウは全除梗する。以前は軽く破砕していたが、現在はこれをせず果実を無傷に保つ。オープントップのステンレスタンクを使用し、最初の5-6日はコールド・マセラシオンを行う。その後通常の発酵ではピジャージュとルモンタージュで抽出。醸しはトータルで18~21日程。発酵後は空気圧式でプレスし、MLF後に樽に移していく。以前は24ヶ月だったが、現在はやや短い18ヶ月の熟成を行う。樽は新古を組み合わせ、Chambertin、Beze、Clos Saint Jacquesの3キュヴェは新樽率を高くし(最大100%)、その他のキュヴェは最大60%程度とする。ボトリングでは清澄はせず、極軽めのフィルターのみを行う。

 

味わい

ルソーのワインでまず感じるのは、密度の高さと果実味のピュアさが高い次元で共存していること。通常はどちらかが犠牲となるため、力強さとエレガンスその両方を同時に楽しむことは難しい。また、高い酸と豊富なタンニンが作る堅牢なストラクチャーがありながらもテクスチャーは極めて滑らかという、これまた一見相反するような2つの要素が見事に共存する。ルソーの魅力はこの神がかり的なバランスといえるだろう。エリックが引き継いで以来、全ワインの品質の高さ、その一貫性にさらに磨きがかかったと評論家たちは口を揃える。世代間で引き継がれる家族経営ドメーヌであるが、その中核をなす味わいは不変である。共通するのはエレガンス、密度、シルキーな口当たり、ピュアな果実とそれを見事に取り巻くスパイス、これらの見事な共演である。

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