Baden(バーデン)
ドイツ最南端にあるピノ・ノワールの聖地 隣国フランスのテクニックを見事に使いこなし テロワールのポテンシャルを最大限に開花させた
バーデンは13あるドイツの産地の中で最も南に位置するエリアである。EUによるブドウ畑の気候分類では、バーデンを除く全てのドイツ産地が最も冷涼なZone Aに分類されている一方で、バーデンだけはワンランク温暖なZone Bとなっている。この温暖なバーデンはフランスとの国境であるライン川沿いにアルザスと向かい合う形で広がっており、ドイツで最も縦長な産地として知られている。北はフランケンとの境から南はスイスとの国境まで実に400km超もの長さを誇る。このためエリアによるテロワールの違いが顕著であり、バーデン内では9つのエリアに分けられている。
ドイツと言えば白ワインのイメージが先行するが、バーデンはピノ・ノワールの銘醸地として有名で、ドイツ全体の約半分のピノ・ノワールがこの地で育っている。その他ではミュラー・トゥルガウやピノ・グリ、ピノ・ブランなどが見られ、最南端にあるスイスとの国境沿いのエリアではシャスラも見られる。ドイツの支配者であるリースリングは、バーデンでは10%以下というマイノリティになっている。
■テロワール
南北に長いバーデンの中でもとりわけ高品質なワインを生む心臓部分となるのが、中央南部よりのカイザーシュトゥール(Kaiserstuhl)周辺である。このエリア一帯は、東には「黒い森」と呼ばれる山岳森林地帯があり、西にはアルザスの先にヴォージュ山脈があり、冷たく湿った風を遮ってくれる。こうした地形に加え、緯度が比較的低いことも合わさってカイザーシュトゥール周辺はドイツで最も温暖で乾燥した産地となる。こうした恵まれたテロワールのもとバーデンの主要な畑はこの地に集まっているが、中でも最上級の畑は南向き斜面と火山性土壌というさらに2つの条件を兼ね備えている。
全長400kmを超すバーデンでは様々なタイプの土壌が見られるが、代表的なのは北部の石灰岩と南部のカイザーシュトゥールで見られる色の濃い肥沃な火山性土壌である。土壌の多様さに加え、南北それぞれのエリアで気候が異なるバーデンでは幅広い味わいを生み出すことができる。
■味わいの特徴
1980年代からドイツでも辛口を求める声が高まり、当時バーデンの生産者たちはご近所のフランスにインスピレーションを求めた。しかしながら当然彼らにはフレンチ・スタイルの経験がなかったため、見様見真似で作られたワインはどこか不自然で不器用であった。過熟したブドウ、過度な抽出、そして樽のニュアンスが全面に出たバランスの悪い味わいだった。しかしこうした中でも、前衛的な生産者たち-Fritz Keller, Dr Heger, Bercher, Bernhard Huber, Salweyなど-は品質向上に情熱を燃やしフランス流をマスターすると、ブルゴーニュのテクニックやクローンを使いこなした。今では彼らが生み出すエレガントなピノ・ノワールやシャルドネはブルゴーニュに負けずとも劣らない素晴らしい品質のワインを世界に送り出している。
素晴らしいのはピノ・ノワールだけにとどまらず、洗練された樽の風味を持つフルボディのピノ・グリやピノ・ブランも見逃せない。カジュアルなワインはロス土壌からのものが多く、フレッシュ&フルーティーなスタイルが楽しめる一方、最高品質ものは火山性土壌から生まれ、ストラクチャーのしっかりした熟成ポテンシャルの高いワインとなる。
銘醸地カイザーシュトゥールのさらに南にも見逃せないワインがある。それはスイスに近いマルクグレーフラーラント(Markgraflerland)と呼ばれる地区で、この地では昔からシャスラが育てられてきた。一般的には爽やかでやや控えめなキャラクターのブドウ品種として知られるシャスラだが、Ziereisenの造るシャスラはブルゴーニュの白ワインも驚くほどの鮮烈なミネラルを持ち、世界最高峰のひとつに数えられる。
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