Bollinger(ボランジェ)
ボランジェは設立当初から現在まで家族経営の非常に珍しいシャンパーニュ・メゾンである。
他にもシャンパーニュのアヤラ、ブルゴーニュのメゾン・シャンソン、ロワールのラングロワ・シャトー、コニャックのデラマンを所有している。
主にグランクリュとプルミエクリュから成る178haもの自社畑を所有し、生産に必要な約60%を賄っている。
木樽での発酵や長期に渡る熟成など、伝統的な醸造方法によって支えられた品質の高さにより、世界的な名声を確立。
スタンダードキュベから一貫したスタイルと、ふくよかでリッチな味わいは世界中にファンが多い。
目次
■歴史
1829年 シャンパーニュハウスの設立
ヴュルテンベルク(現在のドイツ南西部)出身のジョセフ・ボランジェによってアイ村に創立。
1830年がファーストヴィンテージ。
1865年 辛口スパークリングをイギリスへ
ボランジェはドライタイプのシャンパンをイギリスに持ち込んだ最初のメゾンの1つであると言われている。
その20年後の1884年には王室御用達の認定を受けており、この頃から高い品質であったことが伺える。
現在でもイギリスでの人気は高く、ボランジェのシャンパンは愛情を込めて「ボリー」と呼ばれている。
1941年 リリー・ボランジェによる拡張
第二次世界大戦時、ジョルジュの息子であるジャックが亡くなり、その妻であるリリー・ボランジェ(当時42歳)が後を継いだ。
ガソリンが手に入らない戦時下においても、彼女は自転車と徒歩で畑を見回った。
アイ村の1/3を破壊した空爆の中でもセラーで寝泊まりするほど、ボランジェに対する愛は大きかった。
戦争のあと、主にグランクリュとプルミエクリュの畑を買い足し、現在所有する178haの広大な自社畑の基礎を築いた。
それらの自社畑は現在もボランジェの約60%を賄っており、ボランジェスタイルを築くための重要なファクターとなっている。
1952年 RDの誕生
1960年代、主要なシャンパーニュハウスが「ラグジュアリーキュベ」と称した特別ブレンドのボトルを発売し始めたが、リリー・ボランジェはボランジェの「すべてが一流である」と考えていた。
そして彼女はデゴルジュマンをする前の状態で保存していた、古いヴィンテージのボトルを販売することを選んだ。
結果的にこの選択は、ハウスワインの熟成の可能性と、オリとの長時間の接触によってもたらされる芳香の豊かさを非常に早い段階理解することとなり、ボランジェR.D.が誕生したのだった。
ちなみに1952年のファーストヴィンテージのデゴルジュは1967年の6月。
1969年 唯一無二のキュベ Vieilles Vignes Francaises
1969年、リリー・ボランジェの70歳の誕生日を記念して新しいキュヴェが造られた。
それがVieilles Vignes Francaises(VVF)である。
1974年に最初のヴィンテージが発売された後何十年にもわたってその独自性と希少性により、大変高価でありながらも高い人気を誇るシャンパンの1つ。
創設以来、以下の24ヴィンテージが販売されている。
1969 – 1970 – 1973 – 1975 – 1979 – 1980 – 1981 – 1982 – 1985 – 1986 – 1988 – 1989 – 1990 – 1992 – 1996 – 1998 – 1999 – 2000 – 2002 – 2004 – 2005 – 2006 – 2007 – 2009
この特別なシャンパンは、フィロキセラの影響から逃れた、接ぎ木していないピノ・ノワールを使ったブラン・ド・ノワールである。
当初はアイ村のLes Clos Saint Jacquesと Chaudes Terresの2区画と、ブジー村のCroix Rouge(0.16ha)の区画から造られていたが、2004年、ブジーの畑がフィロキセラによって侵食されてしまったため2005年以降のヴィンテージはアイ村のみのブレンドとなる。
栽培面積の合計は元々0.6ha程であったが、これによって0.36haにまで減少し、2009年のヴィンテージは2,420本しかリリースされていない。
今後さらに入手が難しくなることが予想される。
■ボランジェスタイル
所有する畑は約178ha。
その内グランクリュとプルミエクリュが85%と高い比率を占めている。
アイ村を中心にヴェルズネイやルーボアなど、ピノ・ノワールの銘醸地に畑を多く所有しているため作付面積はピノ・ノワールが約60%。
メゾンシャンパーニュハウスの中では自社ブドウを使用する割合がとても高いことで知られており、むやみに生産本数を増やさずその比率を下げないようにしている。
70万本を超えるリザーブワインをマグナムボトルに詰めて保管しており、ノンヴィンテージキュベのブレンドに使用している。
これはかなりユニークな方法で、安定したスタイルの継続性が確保され幅広く正確なブレンドが可能となる。
ワインを熟成させることはボランジェにとって大切なポイントで、スタンダードキュベであるスペシャル・キュベでもアペラシオン規定である2倍の期間熟成をする。
リザーブワインや熟成は、厚みと奥行きのあるボランジェスタイルに欠かせないものとなっている。
■ラインナップ
Special Cuvée(non-vintage)
ボランジェのハウスシャンパン。特定の年のブドウを使用し、最大10%のリザーブワインを追加している。シャンパーニュの作家であるトム・スティーブンソンは、このハウススタイルを「ピノが主体のクラシックなスタイルで、ポテンシャルのある複雑な可能性のあるシャンパーニュ」と表現している。
(ピノ・ノワール 60%、シャルドネ 25%、ピノムニエ 15%)
Grande Année(ヴィンテージ)
良年のみ生産されるキュベ。Grande Annéeは「素晴らしい年」という意味。ロゼもラインナップされている。
ボランジェが誇るアイ村とヴェルズネイ村の上質なピノ・ノワールを主体に、クラマン村とオジェ村のシャルドネをブレンド。
コルク栓をしてカーヴで最低でも5年間熟成させる。
映画007シリーズでジェームス・ボンドが愛するシャンパンとしても有名。(ピノ・ノワール65%、シャルドネ35%)
Grande Année Rose(ヴィンテージ)
RD (ヴィンテージ)
récemment dégorgé=「最近デゴルジュされた」という意味のキュベ。
ラ・グランダネのアッサンブラージュをベースにしているが、カーヴでの熟成期間がさらに長い(最低でも8年間)。
その名の通りデゴルジュマンされてすぐのものをリリースするため、熟成感とフレッシュ感の見事なバランスが楽しめる。
P2 ,クリュッグのコレクションとかのハシリ。
81年キュベ→89年から96年まで、長期に渡ってデゴルジュしてある。
ドザージュは3~4g/Lのみ。
Vieille VignesFrançaises(ヴィンテージ)
ボランジェのトップキュヴェのこのブラン・ド・ノワールは、フィロキセラの被害から逃れた2区画の自根のブドウから少量生産されている。
ブドウの総面積は0.5ha未満で、生産本数は3,000~5,000本。
2007年ヴィンテージは3,132本にとどまった。
イギリスのワイン作家、シリル・レイが1960年代にマダム・リリーにこの接ぎ木されていないブドウだけを使ったシャンパンを生産することを提案したことからこのワインは生まれた。
最初のヴィンテージは1969年。
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