Chateau Rayas(シャトー・ラヤス)

泣く子も黙るシャトーヌフ・デュ・パプの王様、それがシャトー・ラヤスである。


歴史

シャトー・ラヤスは1880年代からレイノー家とともに歩んできた。もともとアヴィニョン地方で公証人として働いていたアルベルト・レイノーは、45歳のときに聴覚を失ったため仕事を変えざるを得なくなり、ワイナリーと周辺の土地を購入して農業を始めた。アルベルトの息子ルイはワインメーカーを志して勉強に励み、課程を終えて実家に戻ると森の一部を埋め立ててブドウ木を増植した。彼は1920年に自社瓶詰めの生産を始め、販路を徐々に拡大していった。ビジネスを軌道に乗せたルイは、1935年にヴァケラスのChateau des Toursを、1945年にChateau de Fonsaletteを購入し規模を拡大した。Fonsaletteはシャトーヌフの村から車で30分程の北にあり、収穫したブドウは全てラヤスのセラーで醸造・熟成が行われ、コート・デュ・ローヌとしてリリースされる。ルイには二人の息子ベルナールとジャックがおり、前者はChateau des Toursを後者はラヤスとFonsaletteを継いだ。

1978年にラヤスとFonsalettoを継いだジャック・レイノーこそラヤスのポテンシャルを開花させた偉人である。シャイで人目につくのを極端に嫌う彼は、訪問者が来ると道路の側溝に身を潜めて面会を回避するという逸話で知られていた。しかしジャックは1997年に急逝してしまう。そのためラヤスとFonsaletteは1989年からChateau des Toursを任されていた甥エマニュエルの手にわたった。

現在もエマニュエルがラヤスを取り仕切っているが、ジャックと異なる点がある。レイト・リリースで知られるエマニュエルはワインを市場に開放するタイミングに非常に慎重な姿勢を見せる。例えばシャトーヌフの他の生産者が2021年のリリースお披露目会をしているとすると、ラヤスではようやく2011年を販売する。この背景には、もちろんワインが飲み頃に入ってからリリースするという味わい的な部分もあるが、ジャンシス・ロビンソンによるとジャック時代からの教訓も影響している。作ったワインの全てを売り払い、セラーがすっからかんというジャックの散財を目の当たりにしていたエマニュエルは同じ轍を踏まぬようにしている。実際ラヤスではベト病のため2018年の生産はなくなったが、売らずに在庫を残しておけばこうした年をカバーすることも可能となる。

 

ラヤスというのはクリマの名であり、13haの全てをレイノー家が所有している。シャトーヌフ村の北東に位置するこの畑には他とは異なるユニークな点がいくつかある。まず、畑は全方面が森に囲まれているため、他よりも涼しい気候が形成される。WA誌でエマニュエルは「最大8℃も気温が低くなる」ことを言及している。次に、土壌はシャトーヌフのトレードマークである大きな丸石が見当たらず、大部分が粒の細かい砂質土壌である。さらに畑全体が太陽に背を向ける北を向いている。そして最後に、品種のブレンドが通例であるこの地において、黒ブドウはグルナッシュしか植わっていない。「ワインの90%は畑でできる」とエマニュエルは言うが、だからこそこのユニークな畑からフレッシュさとエレガンスが際立つ独特な個性が生まれる。

ラヤスのシャトーヌフを生む畑は3つのリューディー(Le Levant、Le Coeur、Le Couchant)からなっており、WA誌によるとLe Levantは最もフローラルで抜け感があり、Le Coeurは骨格を作り、Le Couchantはリッチで、コンポートのような果実味が肉厚感をもたらしている。この3つが合わさることで偉大なコート・ド・ニュイのモノポールさながらの完成されたバランスが生まれる。また、シャトーヌフの弟的な立ち位置として知られるPignanは、松の木に囲われた単一区画で、前述の畑よりも粘土と石の比率が多い。

なお、少量だが白ブドウ(クレレットとグルナッシュ・ブラン)も植えられており、シャトーヌフ・ブランも生産されている。

 

栽培

ラヤスの砂質土壌は非常に痩せているため、植樹はわずか2500本/haとアペラシオンの平均(3000-3500本/ha)よりも低い。以前ジャックは死んだブドウ木を植え替えせずに放置していたが、エマニュエルになってからは再植樹をするようになった。

また、収穫は通常10月と他よりも遅いことでも知られるラヤスだが、周辺の森による冷却効果と北向きという条件が重なることで、過熟感は一切なく常にフレッシュでアロマティックな表現に優れたブドウが生まれる。

 

醸造

ブドウは除梗せずに破砕し、コンクリートタンクで3-4週間マセラシオンを行う。セラーで唯一のモダンな設備である空気圧式プレスで圧搾し、フリーランジュースとブレンドしてタンクに移す。マロラクティック発酵後、春までタンクで保管する。その後、デュミ・ミュイやフードルなど様々なサイズの古樽に移して熟成させる。古樽に強くこだわるラヤスは最低でも20年経ったものしか使わず、中には1930年代ものもある。新樽を避ける理由をエマニュエルは「フルーツを味わいたいから」だとWS誌で答えている。瓶詰めは無濾過・無清澄で行う。

アンリ・ボノー同様に汚いで有名なラヤスのセラーでは、訪れた数々の著名ライターたちが皆口を揃えて不思議がる。ホコリと蜘蛛の巣でまみれたセラーの古樽からなぜこれほどのピュアさ、フレッシュさを持つワインが生まれるのかと。

 

味わい

ラヤスのシャトーヌフは他とは違う。一般的なシャトーヌフはダークな色調に力強いフレーバーを持つが、ラヤスの色は薄いルビーで透明感があり、アロマは香水のように香り高い。もちろん力強さはある。リッチでアルコール度数は16%近くまであがることもある。極めて享楽的な味わいであるにも関わらず、同時に幽玄であり重さが一切ない。ピノ・ノワールを思わせるようなスタイルで、フローラルなバラやスミレ、ワイルドストロベリーやラズベリー、キルシュなどの赤系果実の甘やかさ、そこにガリーグやバルサムなどのスパイシーなセイボリーさが加わる。その甘さとスパイスの見事なバランスをシルキーなタンニンが支え、シームレスな一体感が生まれている。輝くような果実のピュアさと香水のようなアロマで心を奪われ、高いアルコールに似合わぬ浮遊感で夢見心地になり、フィネスにあふれる洗練されたフィニッシュで我を忘れる。これこそまさに、飲めずには死ねない美酒である。

 

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