Comte Liger Belair(コント・リジェ・ベレール)
Romanee-Contiと1er Aux Reignotsに挟まれたLa Romaneeはフランスで最も小さなグラン・クリュとして知られている。この秘宝を単独所有するコント・リジェ・ベレールは、ドメーヌとしての歴史は浅いものの、品質・知名度・市場価格・ポートフォリオその全てが一級品であり、強豪ひしめくヴォーヌ・ロマネのTOP5に君臨する。
目次
歴史
1815年、ルイ・リジェ・ベレールがChateau de Vosne-Romaneeを手に入れたことから歴史は始まる。ルイの養子息子ルイ-シャルルは由緒あるブドウ農家マレー家の娘と結婚し、リジェ・ベレール家は勢力を強めていった。一時は約60ha規模の畑を所有し、そこにはLa Romanee を筆頭にLa Tache、La Grande Rue、Clos de Vougeot、Chambertin、さらに珠玉のVosne 1erたち(Malconsorts、Chaumes、Reignots、Suchots、Brelees)が含まれていた。
しかし1930年代に入ると相続が複雑化し、畑はオークションにかけられて売られてしまう。リジェ・ベレール家のミシェルとジュストは幸運にもなんとかLa Romanee と1er Aux Reignots、1er Les Chaumesを手元に残すことができた(このオークションでD.R.C.がLa Tacheを手に入れる)。
ミシェルの息子アンリは人生を軍隊生活に注いだため、畑の世話は小作人に任せワインはネゴシアン(Maison LeroyやAlbert Bichotなど)を通して販売された。
1976年にリジェ・ベレール家の女性はブシャール家と結婚し、両家の付き合いが始まった。これによってLa RomaneeはBouchard Pere & Filsを通して販売されるようになった。
2000年に入ると、アンリの息子ルイ・ミシェル(現当主)は小作人たちに任せていた畑を取り戻し、家族経営のドメーヌを復活させることを決意する。
Vosne VillageのClos du ChâteauとLa Colombiere、1er Les Chaumesを皮切りに、2002年からは1er Aux Reignots とLa Romaneeの主導権を取り戻して自社生産を開始。
しかし、契約の都合上2005年までLa Romaneeの一部がBouchard Pere & Filsのもとで販売され、リジェ・ベレール家の単独生産は2006年からとなった。同年、ルイ・ミシェルは元小作人の農家から5.5haの畑をメタヤージュで借りることに成功する。ここにはEchezeaux、Vosne 1er Les Suchots、1er Les Petits Monts、1er Les Bruleesなどが含まれていた。さらに2012年、ルイ・ミシェルはChateau de Puligny MontrachetからNuits-St-Georges 1er cru Clos des Grandes Vignesを取得した。
そして2021年の暮れにラマルシュ家のナタリー(ニコル・ラマルシュのいとこ)とメタヤージュ契約を結んでさらなる畑の拡張に踏み切った。こうしてGrands-Echezeaux、Vosne 1er Malconsort、1er La Croix Rameauなどが新たにポートフォリオに加わった。
畑
現在畑は14.5haを所有する。ラマルシュ家からの畑が加わる前は10.5haの規模であり、La Romanee (0.84ha)を筆頭に1er Aux Reignots (0.73ha)、1er Les Petits Monts (0.12ha)、1er Aux Brulees (0.11ha)、1er Les Chaumes (0.11ha)と圧巻のポートフォリを持ち、Vosne VillageでもモノポールClos du Chateau (0.83ha)、さらにお隣ニュイにもモノポール1er Clos des Grandes Vignes (2.19ha)などを所有する。
ラマルシュ家からの追加分で特に注目すべきはGrands-Echezeaux(0.3ha)、1er Les Malconsorts (0.5ha)、1er La Croix Rameau (0.21ha)、Vosne Village Aux Reas (0.42ha)であり、これらはリジェ・ベレール家がもともと所有していなかった全く新しい畑たちである。またすでに所有している畑に追加されたのはEchezeaux(0.61ha+0.24ha)、Clos Vougeot(*0.4ha+0.59ha)、1er Les Suchots (0.21ha+ 0.36ha)、Vosne Village(0.72ha+0.15ha)である。(*Clos Vougeotの0.4haは借り畑だが、ブドウは全てリジェ・ベレールのチームが管理している。)
栽培
ルイ・ミシェルがドメーヌ再興の決意をしてから畑は有機栽培にシフトした。2002年から馬による耕作が行われ、ブドウ木の根と土中の微生物との共存に重きを置いている。2008年よりビオディナミの全面移行が済み、畑では銅や硫黄といったカビ対策のスプレーに加え、様々なプレパレーションが使用されている。重機によるスプレー散布は畝を通過するたびに土を圧迫して踏み固めてしまうため、トラクターは軽量モデルが導入されている。また、ブドウ房に卵を生んで腐敗を呼び寄せる蛾などの害虫にはホルモン・カプセルを使って有機的に対処している。ルイ・ミシェルのモットーは完熟したらできる限り早くブドウを摘みとることであり、このため一区画に二日以上かけることを良しとしない。収穫したブドウは破砕のリスクを抑えるために小さなかごに入れてセラーへと運ばれる。
味わい
ジューシーで肉厚な果実とトースティーなオークが作る豪華絢爛なリジェ・ベレールのワインは、若いうちから近づきやすい魅力がある。溢れんばかりの完熟果実、サテンのように滑らかなテクスチャー、そしてカシミアのようなタンニンと艶っぽい樽感、そのすべてが見事に溶け合うことで官能的な印象を与えてくれる。リジェ・ベレールの味わいはHenri Jayerの流れを汲むスタイルだといえるが、リジェ・ベレールの方がより快楽主義的な味わいと言えるだろう。甘やかな赤系・黒系果実に溶け込むお香のスパイスと潮っぽいミネラルはセイボリーさを際立たせる絶妙なアクセントとなっており、オレンジピールを感じさせる長い余韻はどこまでも長く続いていく。