Comtes Lafon(コント・ラフォン)

コント・ラフォンはムルソーのアイコンである。ジャスパー・モリスの名著インサイダー・バーガンディーにおいてラフォンの白ワインは「ブルゴーニュで最上」と称されている。ブルゴーニュ愛好家には説明不要なワイナリーだが、ムルソー1級畑のテロワールを深く知りたいのであればラフォンよりも優れたお手本はないだろう。

 

歴史

ドメーヌのルーツは1869年、ムルソーのボッシュ家がClos de la Barreにワイナリーを設立したことに始まる。ヴィニュロンであったボッシュ家の娘マリーは1894年にジュール・ラフォンと結婚し、これを機にラフォン家が畑とセラーを継ぐことになった。ジュールはその後ムルソーとヴォルネイに畑を買い足し、さらに1919年にはLe Montrachetに畑を購入。ジュール引退後は息子ピエールとアンリがドメーヌを引き継ぎ、その後1956年にピエールの息子ルネが当主となりDomaine des Comtes Lafonと名付ける。当時の畑はメタヤージュ契約によって小作人が管理するというのが一般的で、ラフォン家でも同様であった。ルネが引退し、1987年に四代目となったドミニクの時代でも畑は依然として小作人たちが管理していた。ドミニクがワイナリーを継ぐ時にはすでにラフォンのワインは市場で高い評価を得ていた一方、貸し畑からではどうしても品質の一貫性が保てないという問題も残っていた。1993年になるとようやく契約終了に伴い全ての畑がドメーヌに戻り、本当の意味でのドメーヌ・ラフォンが始動した。畑にオーガニックやビオディナミを取り入れ、ブドウのポテンシャルを最大限に引き出すことでドミニクはその名を一層世界に轟かせていった。

 

1999年、マコネの持つポテンシャルに注目したドミニクはミリー・ラマルティーヌにあるワイナリーDomaine Janine Emanuelを購入し、Les Héritiers du Comte Lafonの名で新たにワイン生産をスタートした。その後オレゴンに目をつけたドミニクは2007年にEvening Landで醸造コンサルタントを務める。さらにその翌年からはブルゴーニュでネゴシアン・シリーズ「ドミニク・ラフォン」のプロジェクトをスタート。ブルゴーニュだけにとどまらない精力的な活動で、ワイン界に大きな影響を与えてきたドミニクは2021年12月に引退。新たな章の幕開けとなったドメーヌでは、ドミニクの娘Leaと甥Pierreが指揮を取る。

 

ドメーヌの所有畑は合計約16ha。特級Le Montrachet (0.32ha)はDRCと隣り合う区画で、Chassagne側の南東の角に位置する。1991年まではPierre Moreyがメタヤージュで耕していた。一級畑は圧巻のラインナップで、Perrieres (0.91ha), Charmes(1.9ha), Genevrieres(0.55ha), Porusot(0.96ha), Boucheres (0.30ha), Goutte d’Or (0.39ha)を所有する。2010年にRoulotと共同でDomaine Rene Manuelを購入しPorusotsとBoucheresが加わったことよって、ブラニーを除くムルソー斜面中部にある主要な6つのプルミエを全て網羅した。村名はモノポールのClos de la Barre (2.12ha)、Desiree (0.43ha)、そしてノーマルのムルソー (2.55ha)となる。これは複数区画がブレンドされており、En la Barre、En Luraule、 Les Crotots、Clos de le Baronneに加え、1erの若木が入ることもある。

 

一方ピノ・ノワールでメインとなるのはVolnay 1er Santenots-Milieu (3.78ha)である。特筆すべきは若木を格下げしてノーマルのヴォルネイに混ぜるため、Santenotsは古樹のみとなることである。他にも1er Clos des Chenes (0.38ha)と1er Champans (0.52ha)も所有。さらにMonthelie 1er Les Duresses (1.06ha)にも畑を持つ。

 

栽培

ドミニクは全ての畑が手元に戻った1993年に有機栽培を取り入れると、その後Leflaiveの影響もあり1998年にはビオディナミへと転換した。これによって果実味の純度が上がり、例えば一昔前のCharmesはリッチで肉厚だったが、現在はPerrieresの真下に位置するという絶好のテロワールが活かされた力強さとテンションが両立する味わいとなっている。

 

畑では春の芽かきで収量を制限し、手作業で丁寧なキャノピーマネジメントを行う。葉が茂らないよう日当たりと空気循環を良くしブドウにとって最適な環境を整える。収穫は全て手摘みで行い、畑での選果に続いてセラーでも厳しい選果を行う。

 

醸造

シャルドネは空気圧式で全房プレスし、低温のタンクで24時間静置させる。その後、樽に移して自然発酵とMLFを終えてから一度ラッキングを行う。ワインは澱とともに18-22ヶ月間寝かせ、控え目にバトナージュを行う。基本的には村名に新樽は使用せず、1erは約25-40%(CharmesとPerrieresはこの限りではない)、Montrachetは100%となる。ボトリングの前に二度目のラッキングを行い、軽く清澄をしてノンフィルターで瓶詰め。

 

ドミニクは2013年以降全てのキュヴェにDiamを使用しているが、目的はプレモックス対策である。1990年代後半〜2000年代初期にかけてブルゴーニュでは少なくない量のワインがプレモックス(熟成前酸化)の影響を受け、ドミニクもこれに頭を悩ませた。品質管理を徹底するために彼はDiamだけではなく、ワイン中の酸素量を減らすことに注力する。例えばラッキングを前倒してステンレスタンクへの移動を早めたり、空気と触れさせないラッキングをすることでワイン中のCO2の飛散を防いでいる。ワイン中の酸素量を減らすことでSO2がより効果的に機能し、使用量を精密にコントロールできるようになった。この結果、品質の一貫性が格段に向上した。

 

一方、ピノ・ノワールは収穫後12-15℃に冷やされ、果実味を最大限に引き出すため基本的に除梗する。4-6日のコールドマセラシオンの後、ステンレスタンクで自然酵母による発酵が始まる。マセラシオンは2-3 週間で丁寧にピジャージュを行う。プレス後は重力フローでワインを樽に移して18-22ヶ月の熟成。キュヴェによって異なるが新樽は通常1/3程度に抑える。基本的に無濾過・無清澄で瓶詰め。

 

味わい

リニアでミネラル感の強いピュリニーやシャサーニュに対しムルソーは肉厚でバタリーな味わい、というのはもはや過去の話である。両者の境界線はここ10-15年で限りなく曖昧になってきている。近隣と同等の酸とミネラルを備えるムルソーが続々と出てきている事実が何よりの証拠である。ラフォンのムルソーも同じ様に進化している。フレーバーは白や黄色い果実がメインだが、以前よりもエキゾチックさが減り、フレッシュさとミネラルがバランスを取ることで、エネルギーを感じるようになった。柔らかみ、中盤の膨らみ、密度がありながらも、酸とミネラルの支柱によって過度な甘さ・ゆるさを感じさせず、味わいの輪郭がより鮮明になった。例えばPorusotsは隣接する2つの畑をそのまま足して2で割ったような味わいである。アタックでは粘土の多いGouttes d’Orが持つ力強さを感じつつも、フィニッシュはどこかGeneverieresを思わせるエレガンスが漂う。表土が浅く、軽い土壌を持つGenevrieresはムルソーの美が最もストレートに表現されており、ウェイトはあるがどこかエアリーな雰囲気を持つ上品さがある。一方、より深く厚みのある土壌のCharmesでは肉感的な果実味が口内を力強く満たす。質感は非常に滑らかで味わいに見事な深みがある。GenevrieresのエレガンスとCharmesの密度を併せ持つのが、浅い表土に石灰が多く見られるPerrieresである。たくましいストラクチャーとチョーキーな塩味が見事な張りとエネルギーを果実に与え、味わいの集中度を高めている。

 

ピノ・ノワールは年々その質感に磨きがかかっている。フレーバーは多層的で、バラの花弁にラズベリーやプラムなどの果実、そこにシナモンやクローヴ、ナツメグのスパイスが混ざる。凝縮感がありながらもウェイトが重すぎず、深みと程よい硬さがある。上品で洗練されたスタイル。

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