Francois Cotat(フランソワ・コタ)

ライトボディで早飲み、熟成に向かないという従来のイメージを見事に打ち壊したサンセールのスター生産者。

 

歴史

コタ家はサンセールで3世代に渡ってワイン作りをしてきたが、ドメーヌとして名声を獲得するようになったのは第二次世界大戦後にポールとフランシスが継いでからとなる。ワイン生産はしていたものの大部分をバルクで売っていた初代に対し、二代目のポールとフランシスは自社瓶詰めワインを顧客に直接販売するようになった。彼らの作るワインは1960-70年代にかけて地元での評判が着実に高まっていった。当時多くのサンセールの生産者は収量を上げることに夢中で、ステンレスタンク発酵後、収穫翌春にはボトリングというスピーディーなプロセスでワインを作っていたのに対し、商業的なワインを嫌ったポールとフランシスは収量を制限して熟度を上げるために遅摘みし、大きな古樽で発酵と熟成を行った。彼らのワインは強固なストラクチャーと長熟ポテンシャルを持つトレンドとは真逆のスタイルであった。

1979年にポールの息子フランソワがワイナリーに参画すると、1987年から徐々に醸造を任されるようになった。この頃からドメーヌでは3つのラベル(Paul Cotat、Francis Cotat、Francois Cotat)でワインをリリースするようになっていた。この複数ラベル生産は税金対策のために行っていたが、後にフランスの税務当局による取り締まりがあった。最終的には1998年の親世代(ポールとフランシス)の引退に伴ってフランソワはいとこのパスカルと畑を分割することになった。親世代が使っていたシャヴィニョールのセラーを継いだフランソワは、ドメーヌ・フランソワ・コタとしてワイン生産をスタートした一方で、パスカルは別で新しくセラーを作りパスカル・コタとしてドメーヌをスタートした。

 

シャヴィニョールと隣村アミニーにまたがる約5haの畑は、大部分がソーヴィニヨン・ブランで、一部ピノ・ノワールも見られる。ソーヴィニヨン・ブランは4つの畑があり、フラッグシップとなるのがシャヴィニョールにあるMonts Damnés(1ha超)である。オフィシャルな格付けが存在しないサンセールにおいて、古くから最高の評価を得てきた畑であり、真南を向く日当たりの良い急斜面とテールブランシュと呼ばれるキンメリジャン・マールと化石化した牡蠣の貝殻が混ざる土壌を持つ。この土壌は、シャブリやシャンパーニュのオーブにも見られ、Mont Damnésは表土が非常に薄いためミネラルの表現力に富んでいる。同じくシャヴィニョールに位置するCuls de Beaujeu(0.9ha)は、北西向きの急斜面となるためMonts Damnésよりも冷涼で、タイトでデリケートなスタイルとなる。これら2つの畑の北東に位置するのがCaillottes(0.5ha)で、小石の多いやや平坦な低地部に若木が植えられている。フローラル&フルーティーで若くても近づきやすいスタイルとなる。一方、隣村アミニーにあるのがLa Grande Côte (0.9ha)である。Monts Damnésと同じ南向きで、かつ同じテールブランシュ土壌を持つ。限られた優良年に遅摘みのブドウ(貴腐を含む)から作られるCuvee Paul(旧Cuvee Special)はこの畑に由来している。
・ノワールはMonts DamnésやCuls de Beaujeuなどの急斜面ではなく、平坦なCaillottesに植わっている。ロゼとごく少量の赤が作られている。

 

栽培

コタ家は急斜面に多くの畑を持つため作業は全て手作業となる。コタをコタたらしめるのは二代目から受け継がれている遅摘みである。これはフレーバーを最大限に引き出すのは無論のこと、厚みのあるテクスチャー、残糖、そして高いアルコールにも寄与する。一方でこの遅摘みは、時としてアペラシオン規定とも衝突する。AOCが定める規定よりも残糖やアルコールが高く、呼称委員会がサンセールと認めなかった例も過去にあり、サンセール最上の畑がVin de Tableに格下げされてリリースされたというエピソードもある。ポールとフランシスは同村のカルト生産者エドモンド・ヴァタンと並んでシャヴィニョールで最も収穫の遅いヴィニュロンとして有名で、フランソワもドメーヌを継いでからこの伝統をしっかりと守っている。サンセールにおいて熟度の高さでは郡を抜いており、この遅摘みと厳しい収量制限がかけ合わさることでサンセールとは思えぬ凝縮感と巨大なストラクチャーが生まれる。

 

醸造

フランソワはセラーでも親から引き継いだ伝統を頑なに守り続けている。ブドウはプレス後、清澄をせずに古樽(600Lのデュミ・ミュイ)へと移し、天然酵母のみを使用して発酵・熟成させる。ラッキングのタイミングは月のサイクルに従って決め、無清澄・無濾過で瓶詰めをする。

 

味わい

コタのワインは他生産者とスタイルが大きく異なる。非常に遅摘みで超完熟ブドウを使うため、濃度と凝縮感が非常に高い。これがほとんどオイリーと言ってもよいほどのテクスチャーを生むが、一方で、若いうちはキンメリジャン・マールに由来する岩のような硬さとチョーキーな張りが全面に出るためリッチなのに硬いという逆説的な味わいとなる。時間とともにこの硬さがほぐれてくると、アニスや蜜蝋、やや火入れをした洋梨や白桃、残糖由来の甘さにシトラス・ゼストのような溌剌とした酸味、チョーキーで塩味を感じるミネラルが折り重なって長いフィニッシュを作る。

 

 

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