Henri Bonneau(アンリ・ボノー)

ラヤスと並ぶシャトーヌフ・デュ・パプの2大巨匠のひとり。2016年に逝去したアンリ・ボノーは誰もが認める伝統派シャトーヌフの守護神であった。


歴史

ボノー家は1667年から続く歴史的なブドウ農家であり、ワインの自社瓶詰め生産を始めたのはアンリの父であった。1938年生まれのアンリは父の畑仕事を手伝うために14歳で学校を離れ、その後1956年に自身のファーストヴィンテージを作り、12代目当主となった。1997年に友人であるラヤスのジャック・レイノーが逝去してから、アンリはシャトーヌフの生ける伝説として珠玉のワインを世に送り出したが、2015年ヴィンテージを最後に、2016年にこの世を去った。

アンリ亡き後は息子マルセルと長年畑で働いてきたベテランのレジ・シャルマソンが継いだ。その後、アンリの長年の販売代理店パートナーであったダニエル・コンバンがワイナリーを継ぎ、レジとタッグを組んでワイン造りを行っている。

 

シャトーヌフに6haの畑を所有する。そのうちの5.25haは名高いLa Crauのプラトーにある。また、Rayasの近隣Grand Pierreにも区画を持っている。畑の大部分(85%)にはグルナッシュが植えられており、他にムールヴェードル、クノワーズ、ヴァカレーズを育てている。基本的には3種類のシャトーヌフ(ノーマル、上級Cuvee Marie Beurrier、最上級Reserve des Celestins)の生産となるが、すべてが毎年生産されるわけではない。この他にヴァン・ド・フランスのLes Rouliersも生産しており、2001年に購入したGard(Saint-Marcel-d’Ardecheのすぐ南)にある畑(3ha)のブドウを使用している。ちなみに、かつて1990年と1998年には発酵が終わりきらなかった樽のワインで残糖を含むCuvee Specialというワインも造られた。

 

栽培

アンリはとにかくモダンが嫌いだった。畑にカリウム肥料と除草剤を撒いたことは一度もなく、父の伝統的なやり方を好んだ。また、花振るいのリスクを下げ高収量をもたらすとして1900年代中頃に人気を博したグルナッシュのクローンを嫌っていた。またアンリはシラーを毛嫌いしていたことでも知られている。アンリ曰く、この品種は北ローヌではテロワールを見事に表現する一方で、南ローヌでは場違いであり、色味とアルコールしか得られない。

畑ではときに20-30hl/haを下回る程の低収量と遅い収穫を徹底していた。これがリッチで濃密なグルナッシュを生むが、全房にこだわる彼は茎の重要性を述べ、重くなりがちなグルナッシュを軽やかにするために少量であれば揮発酸が役立つことを説いていた。
アンリ亡き後、新体制となってからは畑の手入れが行き届いていなかった部分が改善された。雑草が減り、ブドウ木はワイヤーや支柱を使って高く仕立てられるようになった。また一部でグリーンハーヴェストも導入されるようになった。

 

醸造

区画は分けるが、品種はブレンドして醸造するというのがアンリのモットーであった。ブドウは全房のままコンクリートタンクで発酵させ、アンリの代名詞である採算度外視の長期熟成を行う。アンティークと呼ぶにふさわしい年季の入った大小さまざまな古樽(フードル、デュミ・ミュイ、バリックなど)を組み合わせて通常2-4年の熟成、場合によっては4-8年も熟成させる。途中ワインは容器から容器へと移され、樽とタンクを往復し、酸化と還元を繰り返してタンニンを和らげフレーバーを発達させる。決まったレシピ(熟成期間)は一切なく、果実味とタンニンが調和したと判断してからブレンドして瓶詰めする。アンリの現行ヴィンテージが毎回他ドメーヌの数年以上前となるのはこうした背景がある。

アンリはかつてVinous誌にこう語った-最近あまりにも多くのワインが瓶詰めを急がされ、その個性が損なわれている-と。「ワイン造りも、エレヴァージュも、瓶詰めも、すべてがスピード重視で行われている。ワインだけでなく、ほとんど全ての仕事において、人々は最短の解決策を求めており、忍耐力がない。だから品質が落ちる。」

ちなみに、長い熟成と同じくらい有名なのが、セラーの汚さである。同じく汚いで有名なラヤスのセラーを見たパーカーはかつて「バイオハザードの部屋」と表現したが、それを上回る1位の称号を与えたのがアンリの住居下のセラーなのである。

なお、アンリ亡き現在もできる限り彼の手法に従っている。ブドウは除梗せず、自然酵母を作ってコンクリートタンクで発酵させる。マセラシオンは15日前後と短く、抽出は優しく行う。熟成期間は依然として他ドメーヌよりも遥かに長く、無濾過で瓶詰めされる。

 

味わい

シャトーヌフという枠を飛び越えて独自のAOCを与えたくなる様な個性を持つラヤスに対し、アンリ・ボノーはクラシカルなシャトーヌフの真髄であり、南ローヌのソヴァージュを見事に体現している。すなわち、完熟した甘やかなダークフルーツにスパイスやハーブ、塩漬けにした肉のセイボリーさが混ざり、口内を野性味で満たしてくれる。高いアルコール度数が作るリッチでパワフルなボディと、常識外れの長い熟成がもたらす極めて滑らかなテクスチャーが見事に調和している。遅摘みにもかかわらず、果実の輪郭がクリアで、僅かな揮発酸とスミレやホワイトペッパーのニュアンスが加わることで全体を絶妙に持ち上げてくれている。これが口の中で重苦しさではなく奥深さとして現れる。長い余韻には完熟した甘やかなタンニンと心地よいスパイスが見事なハーモニーを奏でる。より長い熟成を経た彼のワインにはローストしたナッツやカラメルを思わせる風味が現れ、さらなる複雑味が宿る。

 

CTA-IMAGE Firadisは、全国のレストランやワインショップを顧客とするワイン専門商社です。 これまで日本国内10,000件を超える飲食店様・販売店様にワインをお届けして参りました。 主なお取引先は洋風専門料理業態のお店様で、フランス料理店2,000店以上、イタリア料理店約1,800店と、ワインを数多く取り扱うお店様からの強い信頼を誇っています。 ミシュラン3つ星・2つ星を獲得されているレストラン様のなんと70%以上がフィラディスからのワイン仕入れご実績があり、その品質の高さはプロフェッショナルソムリエからもお墨付きを戴いています。
Translate »