Jacques Selosse(ジャック・セロス)
- シャンパーニュ
- グラス, シャルドネ, シャンパーニュ, ステンレスタンク, テイスティング, テロワール, ピノ・ノワール, フランス, 保管, 哲学, 樽, 温度, 熟成, 生産者, 発酵, 香り
大手メゾン一強であったシャンパーニュ界の中で、レコルタン・マニュピュラン(RM)として製造方法を確立。
テロワールの表現に重きを置く、今までの常識を覆すようなブルゴーニュ的な造りでRMブームを興し、牽引し続けるカリスマ。
現当主アンセルム・セロス氏は「良いシャンパーニュは良いワインからしか生まれない、また良いワインは土地と気候と優れた栽培家に恵まれた葡萄でしか造れない。」と語り、平均年産僅か4,000ケースの芸術的なシャンパーニュを造り出す。
現在シャンパーニュの畑は非常に高価で簡単に買えるものではないが、世間がまだその価値に気付く前にグラン・クリュの畑を買い揃え、類い稀なるセンスと努力で、あっという間にその名声は広まった。
フランスを代表するワインのバイヤーズ・ガイド誌「レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス」では、RMとして最初に最高の三ツ星を獲得した生産者でもある。
目次
■歴史
1949年 アヴィーズにて創業
1976年 2代目当主アンセルム
ボーヌの醸造学校を卒業しルフレーヴなどでワイン醸造の研修をした後、ジャックの息子であるアンセルムのワイン造りが始まった。
1986年頃~ 木樽での醸造
ステンレスタンクでの醸造が一般的だったシャンパーニュだが、アンセルムは発酵から木樽を用いる。当時は周囲から変人扱いされていたが、1993年には全てのブドウを木樽で醸造するようになる。
樽の材料により味わいに偏りが出ないように5社の樽メーカーに5つの産地の樽材から3種の樽材を組み合わせて樽を造らせている。
その目的はヴィンテージの特色を消し去ることであり、未熟なブドウを樽の香りでごまかすためではない。
「ヴィンテージの特色を消した後に、テロワールが現れる。」という独特の哲学に基づいている。
今日、この手法は広く取り入れられアンセルムの代名詞ともされている。
1986年頃~ ソレラシステムを開始
木樽での醸造を開始するのと同じ頃、ソレラシステムにも着手し始める。
86年からワインを継ぎ足しており、主にSubstanceに使われる。
何十年ものワインがブレンドされることで完全にヴィンテージの個性は消え、アンセルムによるテロワールの体現が完成する。
1996年 ビオ・ディナミの導入
シャンパーニュはフランスのブドウ産地の中でも北方に位置するため、ただでさえ病害への対処がむずかしい。そんな環境下でもアンセルムはテロワールを突き詰めるために果敢にビオ・ディナミに取り組み、時には家族を顧みないほど畑仕事に没頭した。
シャンパーニュでビオ・ディナミに取り組み始めたのは決して彼が最初だったわけではないが、強い信念のもとに行動し誰よりも努力を惜しまない彼の姿を見て真似をする生産者が多かった。
しかし2010年頃、彼はビオ・ディナミを辞めた。
「月の満ち欠けが地球上の生命に影響を与えるのは理解できる、ただ、月がある星座の前を通過したときの影響となると話が違う。それが畑の区画やブドウの樹1株1株に対して影響を与えるのか?私はそうは思わない。」
教義に縛られることなく、自分自身の倫理観に立って必要なことをする。
アンセルムの目的はあくまでテロワールの表現。その手段は1つとは限らない。
2003年 リューディシリーズのリリース
構想から7年、単一畑、単一品種のぶどうから出来るリューディシリーズがリリースされた。
アンボネイ、アイ、マルイユ・シュール・アイ、クラマン、アヴィーズ、メニル・シュール・オジェの6区画から各1,000~3,000本程度のキュベが生産される。
一貫して彼の信条だった「テロワールの表現」の究極系がこのリューディシリーズ。
この新しい手法は世界で大反響を呼び、瞬く間に売れていった。
生産量の少なさと人気も相まって、現在では最も手に入りにくいシャンパーニュの1つである。
アンセルムは彼のシャンパンを白ワインと同じ温度、白ワイン用のグラスを使って欲しいと言う。
キンキンに冷えた口径の小さいシャンパングラスでは、繊細なテロワール毎の違いや樽の柔らかなボリュームが充分に引き出せないため。
そのため彼はテイスティングにもリーデルのシャルドネ用グラスを使っているそう。
アンセルムの来るもの拒まずな人柄もあり、彼に師事を仰ぐものは多い。
その結果、若手生産者全体の栽培、醸造技術が向上し空前のRMシャンパーニュブームが到来した。
後れを取らないとばかりに、大手メゾンも今まで以上に品質にこだわる姿勢を見せ始め、シャンパーニュ全体が盛り上がっている。
彼の功績は、大きい。
■ラインナップ
Initial Brut(NV)
平均樹齢40年のアヴィーズ、クラマン、オジェのグランクリュ畑のシャルドネから造られたブランドブラン。
Cuvee Exquise Sec(NV)
ジャックセロスがレストランからの要望を受けて造り出した、ジャック・セロス唯一のセック。イニシャルと同様の造りだが、原料ワインのアッサンブラージュ時に比較的若くフレッシュな味わいのワインを使用している。
Version Originale Extra Brut(NV)
ドサージュ無しのキュベ。アンセルムはこのワインにシトー派修道士のような厳格なイメージを求めている。主にアヴィーズ、クラマン、オジェ3箇所の斜面の区画で収穫されたワインをブレンドして造られるが、クラマンの比率がやや高い。
Substance Brut(NV)
「本質」と名付けられた、ジャックセロスのフラッグシップ的存在。アヴィーズのシャルドネを1984年収穫からのワインをソレラで熟成しボトリング。
Millesime Extra Brut
アヴィーズ2区画のシャルドネを使ったブラン・ド・ブランであったが、2007年ヴィンテージから全工程の決定権を任された息子ギョームの着想でピノ・ノワールとシャルドネのブレンドに生まれ変わる。ロゼ以外でラインナップ唯一の単一品種ではないキュベ。
Rose(NV)
アンボネイの名醸家エグリ・ウーリエから調達した赤ワインをブレンドしていたが、アンボネイに自社畑を購入したため現在は自社の赤ワインをブレンドしている(比率はシャルドネ93%、ピノノワール7%)。アンセルムいわく「このワインは非常にデリケートで特に光に弱く、セラー保管する際には照明を当てないようにボトルに紙を巻くか箱に入れて保存してほしい」とのこと。
~リューディシリーズ~
Ambonnay Le Bout du Clos(NV)
アンボネイの0.37haの単一畑「ブー・デュ・クロ」で収穫されたピノ・ノワール100%で造られる。同じブラン・ド・ノワールのラ・コート・ファロン(アイ)に比べて表土が95cmと厚く、ワインの味わいに力強さを与えている。
Ay La Cote Faron(NV)
アイの0.25haの単一畑「ラ・コート・ファロン」で収穫されたピノ・ノワール100%で造られる。発売当初、2003年を主体に2004年、2005年がブレンドされていた。その後、独自のソレラをこのキュヴェでも使用して、ヴィンテージの差異を超えた畑の味わいを表現している。
Mareuil sur Ay Sous le Mont Extra(NV)
マルイユ・シュール・アイの0.4haの単一畑「スー・ル・モン」で収穫されたピノ・ノワールを100%で造られる。ドサージュはゼロ。2005年が最初の収穫となる新たなリュー・ディ。
Craman Chemin de Chalons(NV)
クラマンの単一畑「シュマン・ド・シャロン」で収穫されたシャルドネ100%で造られる。
Avize les Chantereines(NV)
アヴィーズの単一畑「シャントレンヌ」で収穫されたシャルドネ100%で造られる。
Mesnil sur Oger Les Carelles(NV)
メニル・シュール・オジェの0.4haの単一畑「レ・キャレル」で収穫されたシャルドネ100%で造られる。シャンパーニュ地方でも最良の畑として知られるこの地の特質をヴィンテージの差異を超えて表現している。
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