Jamet(ジャメ)

コート・ロティの守護神とも呼べるジャメは、この地を代表するスター生産者である。


歴史

ジョセフ・ジャメがコート・ロティに小さな畑を手に入れたのは1950年で、当時はブドウをネゴシアンに売っていた。その後1976年にドメーヌを設立し、息子ジャン・ポールとともに自社瓶詰めのワイン生産をスタートした。当初はわずか一つのワイン(Côte Brune)のみの生産であったが、80年代に入ると畑を拡張し、複数区画をブレンドすることで生産量を増やしていった。

ジョセフの引退後はジャン・ポールとジャン・リュックが継ぎ、兄弟二人で畑作業とワイン造りを行った。収量を制限して土地の個性が感じられるワインを作っていた二人だが、2013年に別々の道を歩むために決別した。ジャン・ポールと妻コリンヌがドメーヌを引き継ぎ、ジャン・リュックは畑の半分を持ち出して自分のドメーヌ(Jean-Luc Jamet)を設立した。その後2015年にはジャン・ポールの息子ロイックがドメーヌに加わった。彼はアンフォラやテラコッタを使用したコンドリューをリリースし、2018年にはLa Landonneを単一畑として分けて瓶詰めするなどドメーヌに新たな風を吹き込んでいる。

 

全体で20haの畑を所有している。うち9.5haがコート・ロティ、約8haがコート・デュ・ローヌ、1.5haが広域畑、そして0.8haがコンドリューとなっている。ブドウは大部分がシラーとなるが、少量のヴィオニエ、マルサンヌ、ルーサンヌも植えてある。

ジャメのブドウの多くはシスト土壌のCôte Bruneにあるが、Côte BlondeやLa Landonneにも畑を所有する。

 

栽培

サステイナブル農法で畑を管理しており、ブドウは手摘みで厳しい選果を行う。

 

醸造

同じローヌ産のシラーでもエルミタージュでは除梗してワインを作るのが伝統であるのに対し、コート・ロティでは全房で仕込むのが伝統である。ジャメのトレードマークはこの全房にある。ジャメは長い間この伝統を貫いてきたが、1990年代のコート・ロティには除梗のトレンドが押し寄せていた。なぜなら除梗スタイルの方が若くても近づきやすく、ジューシーな果実味をより感じやすかったからである。また同じ頃に強めの抽出も流行っていた。除梗+抽出によって色の濃い、タンニンの豊富なインパクトの強いコート・ロティが多く生産され、生産者たちはこぞってこれを新樽でコーティングした。全ては評価誌で高得点を取るためであった。当然ながらこうしたワインはテイスティング時の印象が強く、比較試飲において記憶に残りやすいものとなった。しかし、一方でこれらのワインにはコート・ロティらしさがなくなってしまっていた。そんな中、ジャメは時代に流されず伝統に固執した。1990年代の当時、周りがみな除梗する中で全房を貫いたジャメはコート・ロティの変わり者とみなされていたが、同じ志を持つ少数の仲間とともに新樽や抽出に惑わされず全房で畑の個性を宿すワインを作り続けた。

現在ロイックも父の教えを守っている。発酵は自然酵母のみを使い、熟成はバリックとデュミ・ミュイ(600L)、大樽を組み合わせる。ピュアな果実をマスキングしないよう新樽率は20%程度に抑えられている。2013年にジャン・リュックと決別した際、畑の半分を持っていかれてしまったにも関わらず、ドメーヌには19のリューディーにまたがる25もの区画が残されており、それぞれが別々に仕込まれている。瓶詰め前の最終ブレンドまで分けて熟成(18ヶ月)されているため、ドメーヌを訪問して樽ごとに試飲をする者たちは皆口を揃えてギガル以外でコート・ロティのテロワールをここまで細かく学べるのはジャメだけだという。

 

味わい

ジャメのワインは全房発酵でしか成し得ないシラーの美しさが見事に表現されている。トーンの高いアロマにはボタニカルでフローラルなノートが感じられ、完熟した茎がもたらすセイボリーでスパイシーな奥深さは飲み手を陶然とさせる。ヴィンテージを問わず全房のニュアンスを感じるが、ブドウの熟度にマッチしているため全く違和感がない。口に含むとダークチェリーやブルーベリーなどの果実と挽きたてのペッパーを感じ、エッジの効いたフレッシュな酸が唾液を誘う。ごわつきや押し付けがましさはなく、しなやかで軽快さすら感じられる。一方で茎由来のストラクチャーがグリップと噛み応えを与え、見事に溶け込んだタンニンが奥の方で引き締める。燻製肉やジビエ、スモークなどが複雑な旨味に寄与しており、余韻にはフィネスにあふれるスパイスが長く残る。

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