Jean Louis Chave(シャーヴ)

1481年からブドウ栽培の歴史を持つローヌの重鎮シャーヴ。ブランド力、、各評価誌のスコアどれをとっても一級品のドメーヌであり、中でも幻の最上級ワインCuvee Cathelinは世界中のコレクターの垂涎の的となっている。


歴史

シャーヴにはエルミタージュの丘で500年以上もの間ブドウを育ててきた歴史がある。1970年にジェラール・シャーヴがドメーヌを継いでから品質が格段に向上し、一躍ローヌを代表する生産者となった。ジェラールの息子ジャン・ルイは生まれたときからすでに素晴らしい畑と世界的な名声を獲得していたが、若かりし頃のジャン・ルイは必ずしも家業を継ぐのが目標ではなかった。若い頃は父のそばで畑とセラーの手伝いをしていたが、学業にも秀でており、特に数学は並外れていた。後にコネチカット州のハートフォード大学でMBAを取得した彼は、「ストックブローカーになっていたかもしれない」とWS誌のインタビューで答えている。MBA取得後、フランスの義務であった兵役を遅らせるために学業の延長を望んだ彼はUCデイヴィスでワインの授業を取ることにした。これが人生の転機となる。大学で学べば学ぶほど実家ローヌでの伝統的なワイン造りの偉大さを知り、家族が培ってきたものの価値を改めて実感した。自分の生まれ故郷であるローヌを探求すると決めたジャン・ルイは、1992年に兵役を終えた後に実家のワイナリーに戻った。

 畑やセラーでの作業は父からの教えをスムーズに聞き入れ、引き継ぎはすべて順調に見えた。しかし、ジャン・ルイにはたとえ父に反対されても譲れない野望が一つあった。シャーヴ家の祖先がワイン造りを始めたサン・ジョセフにあるバシャソン(Bachasson)の畑の復興である。案の定、父はこれに反対した。それもそのはず、そこは長い間放置されて雑木林が生い茂り、石垣のテラスは崩れかかっていた。この土地をきれいにならして復活させるには多大な労力がかかることは明らかで、それ相応のリターンが得られるかは疑問であった。結局そこはサン・ジョセフであり、偉大なるエルミタージュではないのだ。しかし、ジャン・ルイは意思を曲げなかった。シャーヴは1990年代中盤からネゴスラベル(JL Chave Selection)を作り始めたが、記念すべき第一号のSt. Joseph Offerusはバシャソンの若木と買いブドウのブレンドであった。

その後もジャン・ルイのサン・ジョセフに対する情熱はどんどん強くなり、バシャソンの畑だけでは物足りなくなっていた。1999年、彼はバシャソンの南部(自宅やワイナリーがあるモーヴ村付近)に南向きの素晴らしい急斜面を見つけた。小さな区画一つ一つ買い揃えるために何年にもわたって所有者たちを尋ね回った。この畑の拡張プロジェクトの最中、ジャン・ルイはさらなる可能性を秘めた畑と出会った。そこはとある医者が所有していた土地で、塀で囲われたLes Clos Florentinと呼ばれるビオディナミの畑(2.7ha)であった。2009年にこの土地を購入したジャン・ルイは、2015年に念願のサン・ジョセフ単一畑キュヴェとしてClos Florentinをリリースした。ローヌの代表として並外れたエルミタージュをつくる一方で、サン・ジョセフのポテンシャルを開花させた彼の功績は計り知れない。

 

全体で26haの畑を所有しており、そのうちの約15haがエルミタージュとなる。エルミタージュは複数区画にまたがっており、斜面の西端にある花崗岩土壌のLes Bessardsは、ブレンドのバックボーンとなるミネラルの強いタイトな味わいをつくる。L’Hermiteは花崗岩から石灰岩まで様々な土壌が見られ、タンニンとスパイシーさに寄与する。隣接するLe Méalは粘土と小石が多く、ワインのボディをつくる。すぐ隣のLes Beaumesはpoudingueと呼ばれる礫岩土壌で酸を与えてくれる。さらに東にあるPéléatは砂質土壌に由来する柔らかさを与えてくれる。並外れた年にはLes Bessardsから単一畑のCuvee Cathelinが作られるが、通常は複数区画をブレンドすることで一つのエルミタージュをつくる。すなわち、単一畑に特化するシャプティエとは真逆のアプローチを取る。「それぞれのワインは全てエルミタージュに由来しますが、どれか一つが真のエルミタージュだと言うことはできません。真のエルミタージュとはブレンドなのですから。」なお、マルサンヌとルーサンヌから作られる白のエルミタージュはPéléat、Le Méal、L’Hermiteに加え、石灰岩の多いLes Rocoulesと粘土の多いMaison Blancheの計5区画のブレンドとなる。

 

栽培

ジャン・ルイは父ジェラールの教えをしっかりと継承している。畑ではケミカルとクローンを使わず、セラーでは培養酵母の使用を避け、新樽を使いすぎない。クローンや培養酵母はそれ自体の個性が強すぎてワインのキャラクターを消してしまい、畑の声を聞くことができなくなるからである。ジャン・ルイは2009年にLe Clos Florentinを手に入れてから他の畑も全てビオディナミに転換した。もともと何代にも渡って有機栽培を行ってきたが、2019年からは認証取得も始めた。ジャン・ルイは言う「ビオディナミは効果があります。ですが、まずそれよりも先にやるべきことが山程あります。ビオディナミを通して植物と個人的な関係を築くことができますが、それが重要なのです。植物を救うのはコンポスト・ティーを畑に撒くからではありません。全ての作業が正しくなされた上で、最後にくるのがビオディナミなのです。」

 

醸造

「セラーでやっていることは父と変わりません」と言うジャン・ルイ。むしろ一番大きな技術的変化は彼がワイナリーに戻る前年に導入した発酵槽の温度管理だという。当時に比べれば今は大きなタンクを使えるので瓶詰め前のブレンド効率は上がり、また熟成期間(最大18ヶ月)も長めに取れるようになった。しかし、2014年に醸造所を刷新し熟成庫を拡張した以外は伝統的なワイン造りを行っている。とりわけシャーヴのブレンド・スタイルはシャプティエと対照的で、エルミタージュに広がる複数区画をそれぞれ分けて醸造・熟成させ最後にブレンドする。驚きなのは、ドメーヌには前のヴィンテージのブレンドに関する記録が一切残されていないことである。つまり、ジャン・ルイは毎年まっさらな状態で先入観を排除して異なる個性のワインたちをブレンドし、完璧なバランスを作り上げているのである。

従来のワインメイキングと唯一異なるのは全房の使用である。エルミタージュは歴史的に完全除梗で作られてきたが、今日ジャン・ルイは一部全房のブドウを使用する。しかしその場合は必ず花崗岩が豊富な土壌(Les Bessards)からのブドウに限定している。ジャン・ルイにとって茎はシラーに若干の粗さと収斂味を与えるものの、同時にフレッシュさに寄与してくれる。気候変動によりローヌの気温が上がる中でフレッシュさの保持は重要なポイントで、全房を使うことはその手助けとなる。しかし実際はそうシンプルではなく、茎はアロマのフレッシュさを与える一方で、pHの上昇に伴って酸度は低下する。決まったレシピを用意するのではなく年に応じて全房比率を見極めることが重要だという。

 

味わい

シャーヴのエルミタージュはシャプティエやジャブレのワインと比べて濃さ、重さが控えめである。シャーヴのワインにはより開放的なピュアさ、エレガンス、そしてミネラル由来の張りがある。極めて複雑なアロマにはバラやスミレ、サワーチェリー、プラム、オリーヴ、西洋スギ、エキゾチックスパイス、黒鉛、スモーキーなミネラルが混ざる。口に含むと質感は極めてシームレスだが、コアに密度があり、ブラックベリーやブルーベリーがぎゅっと詰まったような濃さがある。そこにスミレ、スターアニス、ブラックティー、スモーキーさが相まって口内を突き抜けるように駆け巡る。力強くエネルギーに溢れているが、決して枠からはみ出ることはなくレーザーのようにピンポイントに焦点が定まっている。フィニッシュはミネラルがつくる見事なテンションと滑らかなタンニンのグリップがフルーツを抑制し、スパイスとフローラルが無限に反響するような長い余韻をつくる。

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