Kamptal(カンプタル)

「オーストリア白ワイン界の雄

ハイリゲンシュタインからの硬質なリースリングと

ロス土壌からの柔らかいグリューナーの共存」

カンプタルはウィーンの北西70kmほどに位置する、オーストリア屈指の銘醸地である。

オーストリアワインにおいてヴァッハウについで名が挙がるほど多くの高品質ワインを生み出しており、ヴァッハウがエベレストなら、カンプタルはK2といって差し支えないだろう。

 

カンプタルはこの地を流れるカンプ川にちなんで名付けられており、ブドウ畑はランゲンロイス(Langenlois)の町を取り囲むように広がっている。

西隣のクレムスタルと同じような気温と日照時間を持つものの、カンプタルの方が若干湿度が低く、ボトリティス菌のリスクが少ない。また、東のパンノニア平原からの暖気の影響を大きく受けるためより温暖で、一部の黒ブドウは完熟できる。一方で、ヴァッハウやクレムスタル同様、北西からの冷気の影響も受ける。日中の温かさでブドウがよく育つ一方、夜間はグッと冷え込み、この大きな日較差がワインにフレッシュな酸を与えてくれる。

カンプタル北部の丘陵地帯には、カンプ川を見下ろす急斜面のテラスがあり、表土の薄い痩せた土壌が広がっている。

リースリングはここでポテンシャルを開花させる。ブドウは栄養を求めてより深く根を張ることを強いられ、収量は低いが品質は素晴らしいものができる。中でも頭一つ抜き出ているのは、「聖なる岩」の異名を持つハイリゲンシュタイン(Heiligenstein)の畑である。もし世界のリースリング銘醸地ランキングなるものがあった場合、間違いなくトップ層に食い込む実力を持っており、名実ともにカンプタルの王座に君臨している。

土壌タイプは一言で表すのが非常に難しく、複雑なものだが、あえて言うなら火山性の礫岩が散りばめられた砂岩である。ここから生まれるリースリングは、クリスタルのような硬質な石のミネラルに直線的な酸があり、完熟果実も感じるが贅肉は一切なく、引き締まった強固なボディをもっている。無論、若いうちは硬すぎて魅力は半減するが、長期熟成の暁には素晴らしい世界に連れて行ってくれる。

一方で、グリューナーにとってはハイリゲンシュタインはベストな場所ではない。というのも、石がちで痩せた土壌よりも、ある程度表土のあるロス土壌の方が相性が良いからである。これはなぜか?水分ストレス耐性がリースリングに比べて遥かに低いからだ。グリューナーには水が必要で、すなわち、ある程度の表土の厚さとロスや粘土のような保水性の高い土壌が必要となる。つまり丘陵の急斜面ではなく、斜面下部、あるいは緩やかな斜面でポテンシャルをより引き出せるのである。

これをふまえると、カンプタルにおけるグリューナーの聖地であるラム(Lamm)の畑がハイリゲンシュタインの丘の下部の緩やかな斜面に広がっているのは何ら不思議ではない。真南を向いた日当たり抜群のこの畑から、大変リッチで凝縮したスパイシーで力強いワインが生まれる。

 

味わいの特徴

カンプタルでは全体の50%以上でグリューナー・フェルトリーナーが植えられており、次点でツヴァイゲルト、そしてリースリングと続く。

一般的に、カンプタルのグリューナーはヴァッハウやクレムスタルのものと比べ、果実の熟度が程よく高いため、柔らかみがありフレッシュな酸との見事なバランスが特徴的である。ミネラルの出かたもどこか柔らかで、カチッとした硬さは控えめな傾向がある。白胡椒を感じさせるスパイシーさとハーブがつくる爽やかなニュアンスはあくまでも優しく果実味に溶け込んでいる。

一方で、上級の畑になるとよりストラクチャーのしっかりとしたアルコール度数の高いフルボディなスタイルとなる。

さらに生産者たちは長期間のシュール・リーや大樽(あるいは古樽)などを使いテクスチャーをよりふくよかにし、アロマやフレーバーをより複雑に仕上げる。

全体的な価格はヴァッハウと比べるといくぶんリーズナブルで、小売価格5~6000円台でこの地を代表するシュロス・ゴベルスブルク(Schloss Gobelsburg)やブリュンデルマイヤー(Brundlmayer)の上級キュヴェが味わえる。

一方、リースリングはやはり北部丘陵地帯のものが素晴らしく、品質は無論のこと、価格も世界標準で見ると良心的と言えるだろう。小売価格6~8000円程でハイリゲンシュタインを含む上級ラインナップが十分に味わえる。

赤ワインに関しては、クレムスタル同様、カンプタルでもラベル表記は広域のニーダーエスタライヒとなる。DAC(ワイン法)上のルールではカンプタルを名乗れるのはグリューナーとリースリングのみだからである。

しかしこの地では、赤系果実が魅力的なフルーティーなツヴァイゲルトが味わえる。一方、本格的なものもいくつかあり、大樽で12ヶ月寝かせより複雑味・スパイス感を持ったものもある。

また近年では、・ノワールもこの地で盛り上がりを見せており、クリストフ・エーデルバウアー(Christophe Edelbauer)などの意欲的な生産者が高品質なものを造っている。

 

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