Nahe(ナーエ)

小規模生産者が集まる隠れた銘醸地

モーゼルとラインガウの中間を行くような

絶妙なバランスのリースリングが魅力

モーゼルとラインヘッセンの間に挟まれるナーエは、西のHunsruck Hill(フンスリュック山地)を通ってライン川へと合流するナーエ川にちなんでこの名が付けられている。ナーエはドイツのワイン産地の中でも比較的規模が小さく、主に小規模生産者で構成され、畑はナーエ川とその支流沿いに点在している。約4000haの畑は7つの地区に分かれ、300を超す単一畑にブドウが植わっている。この地の畑は急斜面やゴツゴツした岩肌がむき出しになったダイナミックな地形によって特徴づけられている。ライン川周辺にあるエリア同様、この地で最も高貴なワインはリースリングから生まれる。重要な生産者はDonnhof(デーンホーフ)やSchafer-Frohlich(シェーファー・フレーリッヒ)、Emrich-Schonleber(エミリッヒ・シェーンレバー)らである。

 

ナーエは西側の山地によって冷たい風や雨から守られており、気候は穏やかで日照時間が長い。雨は比較的少なく、霜の被害もほとんどないことからブドウ栽培に理想的な環境と言える。ナーエは北東に位置する町Bad Krueznach(バート・クロイツナッハ)を起点に、Upper Nahe(アッパーナーエ)とLower Nahe(ローワーナーエ)に分けることができる。

Upper NaheはBad Kreuznachの南部とそこから西に約20km離れた町Monzingen(モンツィンゲン)を含むエリア。このエリアは実に多様な土壌が広がり、砂岩、赤いスレート、黒ひん岩、斑岩が見られる。ナーエ川の川岸に沿って急な段々畑が広がり、ほとんどでリースリングが植えられている。よりフィネス、ミネラル、スパイスに富んだ上質なリースリングが生まれる。

一方、Lower NaheはBad Kreuznachの北部を過ぎたあたりからライン川へと合流する町Bingen(ビンゲン)までを含む。このエリアの畑は比較的フラットで、土壌はローム、ロス、砂が見られる。リースリングだけでなく、ミュラー・トゥルガウやショイレーベ、シルヴァーナーにピノ・ブランなども見られる。スタイルはよりラインヘッセンに似ており、やや構成がゆるく、軽やかでフルーティーさが特徴。

 

■味わいの特徴

ナーエには全体の約75%に白ブドウが植えられており、そのうちリースリングが約30%を占めている。わずかながら暖かい気候を持つためナーエのリースリングはやや酸が低く、一方より完熟した果実のフレーバーがありモーゼルよりもボディがあるが、ラインガウやラインヘッセンほどではない。ちょうど中間に位置する見事なバランス感がナーエの魅力と言える。

昔はミュラー・トゥルガウやシルヴァーナーが最も普及された品種としてこの地で栄えていたが、現在は首位の座をリースリングに奪われてしまった。しかし、全体の約30%というのは、ドイツの他エリアに比べると控えめな数値と言えるだろう。この植樹率の低さは、ナーへのテロワールの多様性を反映しているとも言える。ほとんどの畑が川を臨む位置にあるが、川は蛇行しており、さらに畑は複数の支流にまたがって広がっていることからテロワールのレンジが広く、その全てがリースリングに適しているというわけではないのである。多様なテロワールをリースリングだけでなく、異なる品種でも表現できる。ナーヘにはこうした飲み手に多くのスタイルを提供できる懐の深さがある。

一方、黒ブドウ品種も徐々に増えており、1990年から現在までに約4倍の植樹率の伸びとなっている。現在黒ブドウは全体の約25%を占めており、品種はドルンフェルダー、シュペートブルグンダー、ポルトギーサーなどが見られる。

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