Paul Jaboulet Aine( ポール・ジャブレ・エネ)

ポール・ジャブレ・エネは北ローヌを代表する生産者の一人であり、丘の上のチャペルにちなんだキュヴェLa Chapelleはエルミタージュのアイコンとなっている。


歴史

ワイナリーは1834年アントワーヌ・ジャブレによって設立された。アントワーヌの死後、ワイナリーは長男ポールと次男アンリに引き継がれ、その後はポールの息子ルイがジャブレを率いた。ルイには二人の息子がおり、ジャックは醸造を担当し、ジェラールはアンバサダーとして世界を回った。しかし1992年にジャックがひどい潜水事故に巻き込まれると、ジャブレのワインは以前ほどの品質を保てなくなった。さらに1997年に55歳という若さでジェラールが逝去すると味わいの方向性が狂ってしまった。収量が増えて、品質は大きく下落した。醸造は二人のいとこであるフィリップが継ぐことになるも、状況は芳しく無く、家族メンバー間で争いも絶えなかった。この暗黒時代は1990年後半から2000年初期まで続き、とうとうワイナリー売却の話が持ち上がった。

そんな中、Ch. La LaguneのオーナーでありBillecart-Salmonの株主の一人であるスイス人の大富豪ジャン・ジャック・フレイが2006年にジャブレを買収し、娘のカロリーヌに経営を委ねた。ドゥニ・ドゥボルデュー教授のもとで研鑽を積み、2004年からLa Laguneでワインメーカーを務めていた彼女は就任するとすぐに低迷していたワインの品質改善に着手した。最初の数年はスタイルが大きく変わったため、それを懐疑的に思う評論家も少なくなかったが、2009年頃から品質が向上した。ネゴシアンよりもドメーヌのワイン生産に注力するようになり、またセカンド・ワインLa Petite Chapelle(現La Maison Bleue)を導入して選別プロセスを厳しくし、La Chapelleの生産にわずかな妥協も許さなかった。その結果、La Chapelleは過去の栄光を取り戻し、エルミタージュのアイコンとして不動の地位を得ている。

そして2021年、カロリーヌは大きな決断をする。ジャブレとしてLa Chapelleを作るのを止め、このキュヴェ専用のワイナリーDomaine de la Chapelleを立ち上げたのである。これ以降、La Chapelleとその相棒的な白のエルミタージュChevalier de Sterimbourgはジャブレから離れ、新ドメーヌからのみ生産されるようになった。

 

140haにまたがるエルミタージュのうち、ジャブレは22.4ha(シラー)と4ha(ルーサンヌ・マルサンヌ)を所有する。樹齢平均は80年と高く、中には100年を超えるものもある。フラッグシップのLa Chapelleはその名前から教会を囲む単一区画のキュヴェだと思われがちだが、実は複数区画(Le Bessards、Le Méal、Les Greffieux、Les Roncoules、Les Murets)のブレンドによって作られている。毎年セラーでのブラインドテイスティングによってブレンドが決められているが、毎回ブレンド比率が高い中心的な役割を果たすのが南向きの暑い区画Le Méalである。

なお、セカンドワインLa Petite Chapelleは2015年からLa Maison Bleueに変わり、スタイルも変わった。従来はLa Chapelleの格下げがブレンドされていたが、2015年からはよりテロワール指向となり、花崗岩土壌ではないブドウが使わるようになった。

またジャブレといえば、エルミタージュを取り囲むように広がるクローズ・エルミタージュでも高い評価を得ている。ジャブレが1834年から所有するDomaine de Thalabertの畑(45ha)は、1934年植樹のシラーを含むアペラシオン最古の畑として知られている。そしてもう一つが1996年に手に入れたDomaine de Roureの畑(4.5ha)である。エルミタージュの丘の北部に位置するこの畑は、小さな小石を含む沖積土を持つ南部の平坦な畑と比べ花崗岩の急な斜面が特徴となる。

 

栽培

カロリーヌは2006年に就任するやいなや畑のスタッフを倍増し、ケミカルをやめてオーガニック栽培に転換した。収量を落として高品質なブドウの生産に全神経を注いだのである。2016年にはオーガニックの認証を取得し、その後すぐにビオディナミを導入するようになった。WA誌では近年のジャブレは過去最高の出来だと評価されており、カロリーヌは「ようやくビオディナミの成果が出てきた」とコメントしている。

 

醸造

畑だけではなくセラーにも変化を起こしたカロリーヌの改革を、ロバート・パーカーは「ワイン界における最も大きな品質改革」と評した。赤ワインの新樽率を約20% にまで下げ、白にいたってはそれ以上に使用を控えるようになった。またLa Chapelleのクオリティを保つためにセカンドワインを導入して厳しい選別を行うようになった。カロリーヌは2011年と2012年にコルナスで一部全房発酵をトライしたが結果に満足しなかったとVinous誌に語っており、それ以来完全除梗のスタンスを維持している。もちろん全房発酵から素晴らしいワインができることを認めつつもジャブレの伝統は茎の不使用であり、また茎は酸度を下げるため、気温上昇の現代においては注意しなければならないことを指摘する。エルミタージュは発酵温度30度前後で約4週間のマセラシオンを行い、抽出はピジャージュとルモンタージュを組み合わせる。La Chapelleは600Lのデュミミュイ、バリック、16hlのコンクリートエッグを組み合わせて熟成させる。

一方、白ではフレッシュさとエネルギーを最大限に表現するためにマロラクティック発酵は行わない。2020年のLe Chevalier de Sterimbergに至っては、樽を一切使用せずコンクリートタンクのみで仕込まれた。

 

味わい

ジャブレのワインは1990年代中盤から品質が低下し、2000年代初期も依然として低迷期が続いた。しかし2006年にオーナーが変わり、フレイ家が完全に栽培・醸造をコントロールするようになった2007年から状況が変わり始めた。この当時はまだ発展途上の段階で以前と違うスタイルに戸惑うテイスターも少なくなかった。しかし、2009年頃からジャブレの復活劇が始まり、エルミタージュになくてはならないあのスモーキーな燻製肉の旨味が現れるようになった。2010年以降は品質に磨きがかかり、ジャブレ家時代よりも圧倒的にモダンな味わいとなった。

赤のエルミタージュはダークベリー、ダークプラム、オリーヴにお香のようなスパイス、リコリス、燻製したベーコン、黒鉛、モカなどが混ざる複雑なアロマを持つ。フルボディで濃度と集中力があり、肉付きの良い黒系・青系果実のコアをヴェルヴェットの質感を持つタンニンが支える。噛み応えがあってエキス感に溢れている。後半にかけてはフローラルさとミネラルが息を吹き返したかのように蘇り、砕いた岩と上品なスミレのノートがキレのある長い余韻を作る。

一方、白は非常に香り高くミネラルに溢れたアロマ。完熟した白桃、白い花、砂糖漬けのシトラス、わずかにフリントやスパイスも感じられる。クリスタルのようにピュアな果実味があり、ジューシーなタンジェリン、洋梨、蜂蜜、カモミールやアニスなどのフレーバーがキレのある酸によって見事に引き締められている。口当たりは丸みを感じる一方、後半から余韻にかけてはシャープで焦点が定まり、余韻には心地よいほろ苦さを感じる。

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