Pays Nantais(ペイ・ナンテ地区)、Vendee(ヴァンデ)
世界で1番お買い得な白ワイン、ミュスカデの最大産地 AOC昇格が目覚ましい新興産地
ロワール河の河口に広がるペイ・ナンテ地区とヴァンデは合わせると1.5万haを超える広大なワイン産地。
1,270のワイン生産者、2つの協同組合、50のネゴシアンが毎年1億本以上のボトルを生産している。
主にミュスカデの生産がメインで、一部で他の白ワインやロゼ、赤ワインが造られている。
最近になってAOC認定された地域もあり、静かに変革が起きている産地でもある。
目次
■テロワール
ペイ・ナンテ地区
ロワール河を中心に両岸1万haにも及ぶ広大な土地の全土でブドウ栽培が行われている。
日照に恵まれ海から涼しい風を受ける海洋性気候のため、大きく天気が崩れることはないが、その分霜害などのアクシデントに見舞われると大きな被害が出る。
基本的には片麻岩やシスト、花崗岩などの変成岩で構成されている箇所と、斑レイ岩や角閃岩など火成岩で構成されている箇所の2箇所に分かれる。
変成岩の場所だと、早いうちから外交的で軽やかなミネラル感が特徴。
火成岩の場所だと、パワーとフィネスをワインにもたらし、フローラルで広がりのある香りが特徴となる。
ミュスカデ
栽培面積は約1.2万haと非常に広大で、4つのAOCに分かれる。
・Muscadet(ミュスカデ)
”ミュスカデ”と名乗れる産地は、ナント市を中心にロワール川の河口付近から、トヨタ自動車が工場を置くアンスニの東側まで横長に広がっている。
ナント市南東の『ミュスカデ・ド・セーヴル・エ・メーヌ』、ナント市とアンスニの町の間でロワール川の両岸に跨る『ミュスカデ・コトー・ド・ラ・ロワール』、そしてナント市の南西に広がる『ミュスカデ・コート・ド・グランリュー』の3つのアペラシオンに分けられる。
・Muscadet-Sèvre et Maine(ミュスカデ・ド・セーヴル・エ・メーヌ)
1936年にAOC制定。ミュスカデの生産量約70%を占める一大産地。
現在約700軒の栽培家がおり、70%がネゴシアンで30%がドメーヌ詰め。
2011年に「Clisson(クリッソン)」「Gorges(ゴルジュ)」「Le Pallet(ル・パレ)」がコミューン名を追記することが認められた。
収量、ブドウの熟度などの規定も通常のミュスカデ・ド・セーヴル・エ・メーヌより厳しくなる。
Muscadet-Coteaux de la Loire(ミュスカデ・コトー・ド・ラ・ロワール)
1936年にAOC制定。ペイナンテで最小のアペラシオンであり、本拠地を置く生産者は35件のみと少ない。
他の産地よりも標高が高く急斜面で造られるので、ややタイトなスタイルになる。
Muscadet-Côtes de Grandlieu(ミュスカデ・コート・ド・グランリュー)
1994年に公認された新しい栽培地域。フランス最大の平野湖であるグラン・リュー湖周辺の290haで作られている。
砂と石混じりの土壌で、他よりも熟すのが早く、滑らかで豊かなスタイルになる。
ヴァンデ
計450haの栽培地は4つに分かれている。
どこもロワール河からは少し離れた場所にあり、安定した気候と夏場の日照量の多さが特徴。
以前には塩田があった栽培地もあり、全体的に緩やかな斜面の湿地帯でブドウ栽培が行われる。
早飲みの軽やかな赤ワインとロゼがメインで、白ワインの生産は15%ほど。
■3つの新AOC
2011年に3つのVDQSが昇格しAOCに認定された。
Gros Plant du Pays Nantais(グロ・プラン・デュ・ペイ・ナンテ)
フォル・ブランシュ(=南仏ではピクプール)と呼ばれる白ブドウ品種から造られ、グレープフルーツやレモンのような生き生きとした酸が特徴の軽やかなワイン。
ナント全域で生産される。
Coteaux d’Ancenis(コトー・ダンスニ)
ナント市の東、アンスニの街を挟んでロワール河の両岸に広がる。
白はピノ・グリ(地元ではマルボワジーと呼ばれる)、赤とロゼはガメイから出来る。
白は蜂蜜のようなやわらかい半甘口、赤はフルーティだがスパイシー、ロゼはフレッシュでありながらやや甘めのスタイル。
Fiefs Vendeens(フィエフ・ヴァンデアン)
ナント市の南、大西洋沿いに位置するヴァンデ市の4つのサブリージョンに分かれる。
白・赤・ロゼと生産され、葡萄品種は下記の通り。
白:ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、シュナン・ブラン
赤:カベルネ・ソーヴィニヨン、ガメイ、ピノ・ノワール、ネグレト
白は爽やかで軽く、赤は果実味が豊かな飲みやすいものからしっかりとしたストラクチャーのものまで幅広い。
■ミュスカデ
ムロン・ド・ブルゴーニュ種から作られるフレッシュで繊細な味わいの白ワイン、ミュスカデ。
価格は千円前後と安価で売られているものが多く、味わいが日本人の好むフレッシュでさわやか、引き締めが強くないスタイルのため日本でも広く愛されている。
(実は元々オランダ向けの蒸留酒用に生産されていた)
ミュスカデではまだまだ質より量の大量生産品が多く造られている。
そういったものが横行した結果、『ミュスカデ=シャバシャバした味気のないワイン』という認識が生まれてしまった。
本来ムロン・ド・ブルゴーニュは、名前の通りブルゴーニュが原産のメロンのような香り高い品種。
生産者によっては厚みのある味わい深いワインも造っており、ミュスカデのポテンシャルの高さを感じることが出来る。
しかし、どれだけ手をかけ努力をしてもミュスカデはミュスカデ。
大量生産品の何倍もの価格になるわけではなく(と言うより価格はほとんど変わらない)なかなか報われないというのが実情。
ロバート・パーカーも「世界で1番お買い得なワイン」とコメントをするくらい悲劇的な値段なのだ。
わずかな塩味とやわらかい果実を感じさせるミュスカデは、軽いスタイルが主流である現代の料理に見事に寄り添う。
冷蔵庫に1本常備しておくと大活躍する影の逸品である。
主なブドウ品種 | 黒ブドウ:ガメイ、カベルネ・フラン、ネグレト、ピノ・ノワール
白ブドウ:ムロン・ド・ブルゴーニュ、グロ・プラン、ピノ・グリ |
気候 | 海洋性気候 |
土壌 | 火山岩が主流。主に片麻岩、花崗岩 |
AOC | ・Gros Plant du Pays Nantais
・Coteaux d’Ancenis ・Fiefs Vendeens ・Muscadet-Sèvre et Maine ・Muscadet-Coteaux de la Loire ・Muscadet-Côtes de Grandlieu |
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