Peloponnese(ペロポネソス)
山がちな地形が暑さを和らげ、高い酸と成熟したフレーバーを生む 注目すべきはネメア産のアギオルギティコ」
ペロポネソス半島はギリシャ大陸の南端にある巨大なエリアである。
ブドウ畑の面積はギリシャ最大で、全体の約30%を占める。山がちなこの半島の地形には、むき出しの台地や渓谷が見られ、多彩な微気候が形成されている。こうしたテロワールの多様さはブドウ栽培に理想的と言え、実際にアギオルギティコ、モスホフィレロといった地場品種だけでなく、シャルドネ、ゲヴュルツトラミネールやカベルネ・ソーヴィニヨンといった国際品種も見られる。
ワインのスタイルも様々で、フレッシュでミネラルに富んだ白ワインからリッチで長熟タイプの赤までと飲み手を飽きさせない。
目次
テロワール
ペロポネソス半島は非常に山がちな地形を持つため、土壌は基本的に痩せて石がちである。緯度的にはイタリアやスペインよりも南に位置しているものの、標高によって暑さが緩和されている。というのも、畑は最大で1000mにも及ぶ高地に見られ、気候は地中海性ではあるが大陸性の特徴も見られる。畑では日中暑く夜間は冷えるため、ブドウの生育期が引き伸ばされて高い酸と成熟したフレーバーの見事なバランスが生まれる。黒ブドウのアギオルギティコも白ブドウのモスホフィレロもどちらも共にはつらつとした酸を持つが、これはこの日較差のおかげといえる。
ペロポネソス半島を語る上で欠かせないのが、産地を代表する2つ銘醸地-ネメア(Nemea)とマンディニア(Mantinia)-である。
ネメアはペロポネソス半島北東部、ギリシャ本土の境界(運河)近くに位置する。ここは通常標高によって3つのエリアに分割される。
最も低い谷底エリア(230-400m)は土壌が肥沃で、気温が高く、夏は40℃近くを記録する。ブドウの成熟が容易なため、たいていはカジュアルワイン向けに栽培される。
より涼しい中部エリア(450-650m)は、今日最良のブドウが生まれるとされている。水はけの良い痩せた土壌は収量を抑えてくれ、日中の涼しさはブドウに糖の生成をペースダウンさせる一方、フレッシュさを維持させる。
しかし実際のところ、このエリアをひとくくりにするのは困難で、なぜなら標高や斜面の向き、土壌タイプの違いによる微気候のレンジが広いからで、また各地でクリュの概念も取り入れられてきている。
最も標高の高いエリア(650-1000m)では、低い気温と冷たい粘土質土壌のせいでアギオルギティコは完熟しにくいため、赤ではなくロゼ用に使われることが多い。しかし一部の生産者は標高の高さを活かした、酸の高いフレッシュな赤ワインのポテンシャルを探っている。
一方、ネメアの南西にあるマンディニアでは、標高が600m程から始まる台地が広がっている。ネメアよりも南に位置するが、標高のおかげでここはギリシャでも極めて冷涼な産地となっている。また生育期が最も長いエリアの一つであると知られ、収穫は通常10月にはじまり、時には11月になって始まる場合もある。しかし冷涼な年ではブドウは完熟しにくいという欠点もある。
味わいの特徴
ネメアといえばアギオルギティコ。ワインはフルボディで、スイートラズベリー、ブラックカラント、プラムソースにナツメグ、わずかにオレガノのようなビターハーブのニュアンスを持ち、タンニンはなめらか。芳醇かつフルーティーで、どこかメルローを彷彿とさせるがややスパイスのニュアンスが強く出ている。
1990年代にフレンチオークの新樽の使用が増えたが、現在はより控えめなオークの使用がトレンドとなっている。セミカルボニック・マセラシオンによってフルーティーなフレーバーを強調しタンニンは控えめに抑えるというモダンなスタイルも見られる。
ネメアのワインはカジュアルから高品質まで幅広く、一部の上級ワインは長期熟成によって品質がさらに向上する。重要な生産者はイエア・ワインズ(Gaia Wines)やツェレポス(Tselepos)など。
ペロポネソス半島はネメア以外では白ブドウで占められており、中でもマンディニアといえばモスホフィレロである。
涼しい気温に由来する高い酸と中程度のアルコール、ミディアムボディが特徴で、フローラルでほんのりスパイシーなニュアンスを持つ。フレッシュさを保つためにステンレスタンクで発酵し、若いうちに飲まれることが多い。中には熟成に耐えるものもあり、果実はネクタリンやアプリコットのフレーバーに変わり、ローストしたヘーゼルナッツやアーモンドのノートが現れてくる。
重要な生産者はブタリ(Boutari)やセメリ・エステイト(Semeli Estate)など。
-
前の記事
Santorini(サントリー二)
-
次の記事
記事がありません