Ponsot(ポンソ)

モレ・サン・ドニの大御所であるポンソは、フラッグシップのClos de la Rocheに加え、Clos des Monts Luisantsというアリゴテ100%のユニークな1erを持つ。実はポンソのClos de la Rocheには、現在世に出回る多くの優れたピノのクローンの母木が植わっている。クローン選抜のパイオニアでもあるポンソ家がこれらの苗木を世に残したことで、数多くの上質なピノ・ノワールが誕生したことを考えると、その影響力は一つのワイナリーとしての枠をはるかに飛び越えたものだと言えるだろう。

 

歴史

ドメーヌ・ポンソの歴史は、1872年にサン・ロマン出身のウィリアム・ポンソがモレ・サン・ドニに醸造所と畑(Clos des Monts-LuisantsとClos de la Roche)を購入したことに始まる。1920年に後を継いだウィリアムの甥イポリットは、Clos de la Rocheを買い増して畑を拡張した。その後1932年から瓶詰めを開始するが、第二次世界大戦前では非常に珍しいことで、当時自社瓶詰めをするドメーヌは数えるほどしかいなかった。イポリットの息子ジャン・マリーが畑と醸造に加わったのが1942年、その後1957年にイポリットが現役を引退した。ジャン・マリーは当時ブルゴーニュにおけるクローン選抜の第一人者としても活躍した。113、114、115、667といった素晴らしいピノのクローンは、1954年にClos de la Rocheに植えられたブドウが母木となっている。1961年、ジャン・マリーはメタヤージュによって新たにChambolle-Musigny、Chambertin、Latricières-Chambertinを手に入れる。続いて1972年にはジャン・マリーの妻ジャクリーヌが相続によってGevrey Chambertin Cuvée de l’AbeilleとChapelle Chambertinを入手した。ジャン・マリーの息子ローランは1981年にワイナリーの仕事に加わり、翌年Domaine des ChezeauxとのメタヤージュによってGriotte Chambertin、Chambertin、Clos St Denis Cuvée、Chambolle-Musigny 1er Les Charmesが新たにポンソのラインナップに加わった。1997年、ローランと妹のローズ・マリーがドメーヌを継ぐ。2017年、長年に渡ってポンソの中核にいたローランはドメーヌを離れる決断をし、息子Clementとともに自身のネゴシアンLaurent Ponsotを立ち上げた。

 

ポンソは多くの特級を生産するが、出どころは複数にまたがっている。まず自社所有の特級畑は2つあり、Clos de la Roche (3.5ha)とChapelle Chambertin (0.7ha)である。Clos de la Rocheは16.9haと大きいが、ポンソは最上区画の最大所有者として有名。もともとAOCが制定された1936年には4.5haしかなかったClos de la Rocheだが、このときのオリジナル区画に畑を持つ。

次に、1982年からDomaine des Chezeauxとのメタヤージュで生産していた3つの特級、Clos St Denis (0.7 ha)、Chambertin (0.2 ha)、Griotte Chambertin (0.9ha)。これらは2017年のローラン離脱に伴いドメーヌ・ポンソでは生産されなくなった。というのも、メタヤージュ契約者はドメーヌではなくローランだったため、2017年以降はローラン自身のワイナリーで生産されるようになった。
最後に買いブドウで作る特級Corton Cuvee du Bourdon、Corton Bressandes、Corton Charlemagne、Clos de Vougeot、Charmes Chambertinである。これらはローランの時代から作っていて、去った後も作っている。

一級畑で注目すべきはポンソのもう一つの代名詞であるモノポールMorey St Denis 1er Cru Clos des Monts Luisants (0.98ha)である。現ブルゴーニュにおいてアリゴテ100%で1erを名乗れる唯一のワインとなっており、創始者ウィリアム・ポンソが1911年に植樹したアリゴテが土台となっている。過去には他品種も植樹されたが、ローランは1992年にピノ・グージュを、2004年にシャルドネを引き抜き、アリゴテのみを残した。なおこのアリゴテは特別で、大昔からこの地に植わっているから現在もここに植えることが許可されている。もちろん畑の場所的には本来シャルドネでないといけない。

その他の一級はMorey St Denis 1er Cru Cuvée des AlouettesとChambolle Musigny 1er Cru Les Charmes (0.9 ha)があるが、前者はMonts Luisantsの一部(1.29ha)に植わるピノ・ノワールを使用している。2000年前ぐらいまではClos de la Rocheの若木もブレンドされていた。後者はメタヤージュのため2017年以降ドメーヌでのリリースはなくなった。

村名ではモレとジュヴレに加えシャンボールやサン・ロマンなども作っている。また、モレとジュヴレの特級の若木を格下げした広域のBourgogne Cuvee du Pinsonもある。

 

栽培

ローラン・ポンソは化学肥料、殺虫剤、除草剤を使用しないが、自分自身をオーガニックとは呼ばない。彼は月や星の動き、植物のリズムに注意するが、声高にビオディナミを主張することもない。あくまでも自身の哲学に従ってブドウと向き合っているのである。

収穫されたブドウは小さなかごに入れて運ばれるため、重みでつぶれることなくセラーへと搬入される。ポンソのセラーには選果台がないが、これは質の悪いブドウは全て収穫前に畑で取り除いてしまうためである。セラーに運び込んでからだと運搬中にどうしても健全なブドウにカビがついてしまう。「運び込んでからでは遅すぎます。選果は畑ですべきなのです。」とローランは言う。

 

醸造

基本的にピノノワールは除梗され、オープントップの木製発酵槽で自然発酵させる。発酵前の低温浸漬はせず、発酵温度は30度を越えないように調整される。ピジャージュとルモンタージュを組み合わせて優しい抽出を行い、発酵後すぐにプレスし古樽に移す。「ブルゴーニュのワインに過度な酸素はいりません。ゆっくり熟成させるべきです。新樽では酸素の供給量が多すぎて、熟成が早く進んでしまいます。」とローラン。ポンソが最低でも数年以上の古樽しか使わないのにはこうした背景がある。加えて、新樽の風味はブドウや土地に由来するものではなく、ワインに不自然さが加わる。「我々はワインを作っているのであって、樽の風味がするワインのような飲み物を作っているのではありません。」古樽での熟成期間は長いが、基本的にラッキングは一回のみ行い、無清澄、無濾過で瓶詰めする。なおボトリング時にSO2は加えない。

実際ポンソでは1984年という早い段階から窒素や二酸化炭素を試験的に取り入れ、SO2に頼らずに酸素との接触を抑える方法を模索してきた。1988年からはSO2のシステマチックな使用をやめ、代わりにラッキングやボトリング時にこれらのガスを使用したり、トップアップの頻度を上げたり、温度管理を徹底したりと様々なアプローチを試してきた。その結果、現在SO2はほとんど必要なくなったが、例えば揮発酸が高く出た年などは必要最低限使用するといった柔軟さもある。ドグマ的になるのではなく、あくまでもワインの品質にフォーカスする。

白ワインの造りは時代とともに変化がみられる。ローラン時代はブドウを破砕してプレスし、発酵前の清澄はしっかりと行っていた。一方、現在は破砕せずにプレスし、軽めの清澄でより多くの澱を含んだ状態で発酵が行われる。もともと発酵は樽で行われていたが、現在はステンレスタンク発酵で、樽は熟成にのみ使われる。熟成は赤同様、新樽が使われることはなく、古樽のみが使用されている。

 

味わい

ポンソはモレ・サン・ドニのみならずコート・ド・ニュイで最も収穫が遅い生産者の一人として知られるが、これはフェノールの熟度にこだわるためである。・ノワールのタンニンとフレーバーの熟度が頂点に達したタイミングを狙って収穫を開始するため、確かに年によっては過熟なニュアンスを感じることがある。一方、冷涼年で感じられる並外れた凝縮感と力強さはお見事というしかない。この完熟したブドウを除梗し、古樽でじっくり熟成させ、SO2はほぼ不使用というのがポンソのスタイルである。ローランが去った現在でも、基本的にこのスタンスが維持されている。こうして生まれるピノ・ノワールには完熟したダークベリーやベーキングスパイス、オレンジの果汁やスモークなどの複雑なアロマが現れる。口当たりは絹のように滑らかで、多層的なフレーバーが口内に広がる。中心にある甘い果実は、しなやかなタンニンと快活な酸によってしっかりと支えられている。凝縮感とともに立体感を感じさせる奥行きがあり、シームレスで一体感のあるフィニッシュを持つ。

一方、ポンソのユニークなアリゴテはやや還元的なニュアンスを持つアロマで、ライムゼストや青りんご、白い花に焼きたてパンのような香ばしさがある。口当たりは鋭く、フレッシュなシトラス由来のピリッとした酸味と突き抜けるようなチョーキーなミネラルが味わいの中心線を作っている。引き締まったボディには洋梨やグレープフルーツなどの果実がバランスよく溶け込み、長くミネラリーなフィニッシュが印象的となる。

 

 

 

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