Morey-Saint-Denis (モレ・サン・ドニ)

特徴がないことが個性。バランスの良さが売り

小さな村にひしめく歴史ある偉大な畑 隣村の陰に隠れがち。

実は業界人たちが注目する変革の地

■特徴

左右をジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーという輝かしいアペラシオンに挟まれ、どうしても影が差してしまうのがモレ・サン・ドニ。

その特徴は「ジュヴレほどタニックではなく、シャンボールほどエレガンスではない」と隣村に比べられるだけで明確なスタイルがない。

それはモレ・サン・ドニの住民たちの寡黙で厳格な決して外交的とは言えない性格がワインにも反映されているからだろうか。

モレの魅力

AOCが認定される遥か昔、モレのワインはなんとジュヴレやシャンボールとして売られていた。

更に言うとポマールを名乗っていたこともあると、ドメーヌ・ポンソは語る。

それだけこの村のワインは特徴なく影武者のようだった。

しかし言い返せば、良しとされる味わいの要素を多く持ち、突出するところのない優れたバランスがあるということ。

それはこの村のアイデンティティで、モレの魅力でもある。

陰に隠れた偉大なテロワール

村全体の栽培面積は136haとニュイの中でも小さな部類に入る。

しかしその内の30%をグラン・クリュが占め、生産者たちは「小さな村に、偉大なテロワール」と誇らしげ。他の村と比べ小石が多く水はけが良いし、谷間にあるため冷たい風がブロックされて霜害に合うことも少ない。

非常に恵まれたテロワールなのだ。

斜面の上部にグラン・クリュが広がり、その下部にプルミエ・クリュが控える。

グラン・クリュはシャンボールから続くボンヌ・マールを除いて全てが石の塀で囲まれる、由緒正しきクロの区画。

 

宗教が色濃く反映される畑名

その歴史は古く、中世に勢力のあった貴族や修道院が多く土地を所有していたため区画の名前に聖人や修道院の名前がそのまま付いていたり宗教色が強い。

(「赤スグリ」や「猫の足跡」といったかわいらしい名前が多いシャンボールとは大違い)

村の名前にもなっているグラン・クリュ、クロ・サン・ドニはキリスト教への改宗を盛んに行いすぎて異教徒から怒りを買い、ギロチンにかけられた聖ドニが由来となっている。

プルミエ・クリュ

20あるプルミエ・クリュ1つ1つの区画の面積は狭く、せいぜい2ha前後。この小さな区画のテロワールを表現しようと実直なこの村の生産者たちは仕事に励む。

その中でも特異なのはモン・リュイ・ザンでコート・ド・ニュイの一級区画の中で唯一白ワインが生産される。

しかもそれはアリゴテで、個性的なアプローチが得意なポンソが1911年に植樹した。

実はそれより以前、中世から白ブドウが植えられていたと前当主のローラン・ポンソは語る。

現在はアリゴテ、シャルドネ、ピノ・ノワールの突然変異種ピノ・グージュが植えられている。

優れた2つのグラン・クリュ

モノポールの2つのグラン・クリュ、クロ・デ・ランブレイ(正確には99%単独所有)とクロ・ド・タールは600年以上続く由緒正しい畑で、数世紀にわたる歴史の中所有者が片手で足りる程しか変わっていなかった。

が、2000年代に入ってからクロ・デ・ランブレイはルイ・ヴィトンを所有するLVMH社に、クロ・ド・タールはグッチやサン・ローランを所有するPPRグループに買収された。

世界のブランド勢力TOP 2企業が、隣り合うわずか15hlたらずのブドウ畑で目に見えない争いを繰り広げている。

最近では「醸し人九平次」で知られる兵庫の酒蔵、萬乗醸造がドメーヌを興し、なにかと注目の的であるモレ・サン・ドニ。

ジュヴレ、シャンボールの陰に隠れた時代は終わり、実はもうスポットライトが当たっている。

■データ(出典:ブルゴーニュワイン委員会)

栽培面積 約136 ha
土壌 ジュラ紀中期の石灰質と粘土石灰質の上にある。小石が多く水はけが良い
生産量 赤 3,463hl / 白 188hl
グラン・クリュ 5
プルミエ・クリュ 20
栽培品種 ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ブラン

 

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