Rheinhessen(ラインヘッセン)
ドイツ最大のワイン産地でありながら、 辛口リースリングの世界最高峰が君臨する
ラインヘッセンはドイツにある13のワイン産地で最も面積が大きく、畑は約26,500haに広がる。これは全畑の約25%弱を占めており、生産量だけでなく収量もドイツで最大規模を誇る。ラインヘッセンは3方面を他産地に囲まれており、北はライン川対岸にラインガウが、西にはナーへ川を境にナーへが、南はハールト山脈を境にファルツが隣接する。ラインヘッセン北部にある最大都市マインツ(Mainz)にはドイツワイン協会(German Wine Institute)やVDP(高品質ワイン生産者団体)の本部があり、この地がドイツワイン産業界において重要な位置を占めていることがわかる。
ラインヘッセンといえばリープフラウミルヒ(Liebfraumilch)の誕生地であることでも知られる。これはフレッシュ&フルーティーな半甘口のカジュアルな白ワインで、もともとは南部にある都市ヴォルムス(Worms)から生まれた。一昔前までは「ラインヘッセン=リープフラウミルヒの安ワイン産地」というネガティヴイメージを持つ人が少なくなく、国際的な評価を獲得する過程で苦労してきた背景もある。しかし、ここ数十年での評判は着実に上昇し、現在ではドイツ最高峰の辛口リースリングを生み出す産地のひとつとして世界的な名声を手にしている。
目次
■テロワール
ラインヘッセンは複数の山脈に囲まれているため、雨風などの激しい天候の影響を受けずにすむ。その結果、他の産地の畑と比べてよりマイルドな気候となり、生育期が比較的長く取れる。川から近い畑は年間を通して暖かく、厳しい冬の寒さや霜害も防ぐことができる。また、年間降雨量も約500mmと比較的少なく、ドイツ内で最も乾燥した産地の一つでもある。
巨大なラインヘッセンでは実に様々なテロワールが見られるが、とりわけ注目すべきは北西部にあるラインテラッセ(Rheinterrasse)と呼ばれるエリア。ニアシュタイン村(Nierstein)やナッケンハイム村(Nackenheim)周辺に広がる畑は古くから銘醸畑として知られ素晴らしいワインを送り出してきた。これらの畑はライン川西岸の東向き急斜面に位置し、一日で一番寒い朝方に午前中の太陽の光を享受でき、ブドウの完熟を促進してくれる。また川に近いことは気温調節の影響があることを意味し、川から離れた畑よりも、夜間や秋の気温が暖かいままでいられ、成熟期を引き伸ばすのに役立つ。その結果、このエリアのリースリングはしっかりと完熟したレモンやピーチのフレーバーが現れる。ラインテラッセ内でもとりわけ一目置かれているのが、ニアシュタインとナッケンハイムの間にある赤い斜面(Roter Hang)と呼ばれるエリア。極めてユニークな土壌を持ち、鉄分に富んだ赤い土壌はスレート、粘土、砂岩からなる。ここから生まれるリースリングにはスモーキーな要素が感じられ、ピリッとした刺激的なフレーバーを持つ。重要な生産者はグンダーロッホ(Gunderloch)やキューリング・ジロー(Kühling-Gillot)など。
一方、ラインヘッセン南西部のヴォンネガウ(Wonnegau)と呼ばれるエリアは、高品質なリースリングとシュペートブルグンダーで近年特に評判を獲得してきている。1990年代頃から国際的な注目が集まり始め、リースリングやシュペートブルグンダー、シルヴァーナーといった品種への期待が高まってきた。この地の畑もライン川からの気温調整の影響を受けることでしっかりと成熟期を確保でき、また土壌は石灰質が多く見られる。重要な生産者はクラウス・ケラー(Klaus Keller)やヴィットマン(Wittmann)など。
■ブドウ品種
ドイツの他の主要産地同様、ラインヘッセンも白ワインの生産がメインとなっている。白ブドウは約71%と支配的だが、比較的品種のレンジが広いという特徴がある。歴史的にはミュラー・トゥルガウが最も植樹されてきた品種であったが、近年リースリングが伸びており、現在では首位リースリング、僅差でミュラー・トゥルガウが続く。他にはシルヴァーナー、グラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダー、ショイレーベなど。黒ブドウではドルンフェルダーが首位で、シュペートブルグンダーの約2倍の量が植えられている。
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