Rheingau(ラインガウ)

モーゼルと並ぶドイツの2大巨頭

天からの恵みとも言える絶好の日当たりは

フルボディで完熟した最高のリースリングを生む

ラインガウはドイツのワイン産地の中で最も重要なエリアの一つである。規模でいうと約3,150haと決して大きいわけではなく、最大規模のラインヘッセンのおよそ1/9しかない。これはドイツ全体の畑のわずか3%程度である。しかしながら、規模こそ小さいもののドイツ最高峰の一つとも数えられる品質と最高レベルの熟成ポテンシャルを秘めたリースリングが生まれる。

歴史を見てもラインガウが銘醸地であったことが読み取れる。この地は昔から上質なブドウが取れ、貴族たちの住居でもあったため、今でも多くのワイナリーにSchloss(城や邸宅の意)の名が見て取れる。また、19世紀後半において、ラインガウのリースリングよりも国際的に高い評価や高価なドイツのワインは他になかった。そして20世紀半ばでさえもラインガウのワインはボルドーの格付けシャトーの多くよりも遥かに高い価格がつけられていた。

協同組合の影響が非常に小さいラインガウでは、ワインのほとんどが蔵元瓶詰めで作られており、シュロス・ヨハニスベルク(Schloss Johannisberg)、シュロス・フォルラーツ(Schloss Vollrads)、クロスター・エーバーバッハ(Kloster Eberbach)といったドイツを代表するワイナリーらが居を構えている。

 

ライン川は300km以上に渡ってドイツとフランスの境界を北上した後、不思議と急に西へと方向を変える。この横向きの流れは、東のヴィースバーデン(Wiesbaden)から西のアスマンズハウゼン(Assmannshause)までの約25kmで見られる。このエリアの川の北岸にあるのがラインガウで、ブドウ畑の90%が南向きの恵まれた斜面に広がる。ここまで全域にわたって川とその地形の恩恵を享受できるエリアは他になく、川からの太陽光反射に加え、西にそびえるタウヌス山脈のおかげで冷たい北風の影響が和らぎ、畑を暖かく保てる。また、ラインガウではライン川の川幅がより大きくなることも特徴で、約1kmまで広がる。これには気温を穏やかに調整し霜のリスクを下げる大きな効果がある。また同時に湿度を上昇させる効果もあり秋に貴腐菌が成長するのを手助けしてくれる。

土壌と地形は場所によって異なり、最東端のホッホハイム(Hochheim) – ヴィースバーデンよりもさらに東にあり、ラインガウを名乗れる – 周辺では低地、なだらかな丘陵に石灰、砂質、ロームやロス土壌が見られるのに対し、最西端のアスマンズハウゼンでは急斜面のスレート土壌が見られる。これらの両端の間には南向き斜面が広がり、スレート、珪岩、砂岩、砂利、ロスなどが見られる。最上の畑はリューデスハイム(Rudesheim)、ガイゼンハイム(Geisenheim)、ヨハニスベルク(Johannisberg)、エーストリッヒ(Oestrich)、ハッテンハイム(Hattenheim)などの急斜面に見られる。

伝統的には川沿いのエリアが最上とされていたが現在ではアルコール度数の上昇や貴腐のリスクなどの観点から川に近すぎない方が良いとされている。少なくともドライなスタイルにおいては斜面中腹の畑が最良とされており、これは川からの気温調節の恩恵を受けながらも菌類の成長を促す湿度をうまくよけることができる場所だからである。近年の暑い気候では川からやや離れた標高の高いより涼しいエリアを最良とする生産者もいる。こうした畑は空気がよりドライで土壌もより石がちとなるため、よりフローラルなスタイルのワインが生まれ、ミネラル感を最大限に表現できるからである。

 

■味わいの特徴

ラインガウでは白ブドウ品種が約86%と支配的で、その内リースリングが78%を占める。多くがドライなスタイルで作られる。ラインガウのドライなリースリングは、モーゼルと比べてよりフルボディで男性的、より完熟した果実のフレーバーを感じる。最上の畑の一つとして数えられる西側のリューデスハイマー・ベルク(Rudesheimer Berg)では南向きの急斜面、スレートと珪岩の石がちな土壌からピーチのリッチさにスパイス感を伴う奥深いリースリングが味わえる。とりわけゲオルグ・ブロイヤー(Georg Breuer)のものは別格である。また、川から2kmほど離れたキートリッヒ(Kiedrich)にあるロバート・ヴァイル(Robert Weil)からも素晴らしい辛口リースリングが味わえる。

一方、エリアの東端周辺の標高の低い畑ではベストなリースリングは生まれないものの、肉付きがよく厚みがあってミネラルも感じられるワインが味わえる。一方、ラインガウは貴腐リースリングからドイツ最上の甘口ワインを生む。こうしたワインにはアプリコットピューレ、はちみつ、カラメル風味のマンダリンなどのフレーバーが楽しめる。

黒ブドウで最も植樹されているのはピノ・ノワール。ラインガウの最西端にはアスマンズハウゼンが広がるが、ここではライン川は再び北に向きを変る。畑は西向きの急斜面にスレート土壌を持ち、古くからピノ・ノワールの名産地として名を馳せてきた。とりわけ南-南西向きの急斜面のヘレンベルク(Hollenberg)の畑ではフルボディの高品質なピノ・ノワールが生まれる。

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