St.Joseph(サン・ジョセフ)
ローヌでは数少ない若いうちからとっつきやすいスタイル ドメーヌ<ネゴシアン
コート・デュ・ローヌの7つのアペラシオンの中で、クローズ・エルミタージュに次ぐ大きさを誇るサン・ジョセフ。
基本的にはシラーの産地だが、マルサンヌとルーサンヌも栽培されており、赤ワインには最大10%までブレンドすることができる。
1668年にはすでにワインが販売されていた記録が残っているほどその歴史は長い。
フランス国王の食卓でも高く評価され、ヴィクトル・ユゴーの小説「レ・ミゼラブル」でも非常に高価なワインとして登場する。
赤ワインの多くは、「エルミタージュとコート・ロティが熟成するのを待っている間に消費される」といわれ、若いうちからとっつきやすいキャラクターが魅力。
■テロワール
ローヌ川の右岸に沿って約50kmにわたってアペラシオンが広がる。
ブドウ畑は日当たりもよく水はけにも恵まれている急な斜面。
(沖積土壌の斜面下部はジェネリックワイン(AC Cotes du Rhone)のエリアとなる。)
ミストラルの影響による低い湿度、ローヌ河による太陽光の反射、放射熱による安定した気温といった恵まれた条件だが、逆にミストラルと雹による被害、急斜面での重労働といった逆境も持ち合わせる。
土壌の主成分は花崗岩だが、いかんせん広大な土他のため片麻岩、雲母片岩や堆積土壌が混じり、味わいのスタイルもチャーミングなものからパワフルなものまで多岐にわたる。
■味わいのスタイル
全体的に柔らかいコート・ロティよりはパワフルなエルミタージュに近い。
しかし香りは少し違っていて上品さというより土っぽい、いい意味での野暮ったさがある。
果実感はよりモダンでチョコレートやプルーンといった濃縮感が印象的。
■ネゴシアンの役割
ローヌ北部ではネゴシアンの役割が重要となる。
パリのワインショップでローヌ北部のワインを探すと、ネゴシアン名が書かれているものが半数以上を占める。
サン・ジョセフは広大なエリアの割には自社で瓶詰めをする生産者があまり多くない。
その上生産したものは大抵売れてしまうので、わざわざ国外にワインを売りに行く気持ちも必要性も感じていない小規模生産者が多く、輸出量は約10%と低め。
そのおかげで質にこだわる余裕が生まれるわけだが、それではいずれ尻つぼみの市場になってしまうことが目に見えている。
そのため資金と人力があるネゴシアンが海外にプロモーションをしているのである。
生産量比率は赤ワイン87%、白ワイン13%と、ローヌの他の生産地と比べると白の比率がやや高め。
北隣はローヌを代表する白ワインの銘醸地、コンドリュー。
なので実はサンジョセフの最も北にある4つの自治体はコンドリューを名乗ることもでき、白い花やはちみつのような芳香のある素晴らしいマルサンヌが生産されている。
南部の畑はエルミタージュに近い土壌(砂利や石の多い)という恵まれた環境で、確かな品質の赤ワインができる。
白は華やかで芳醇、赤は田舎っぽいものからエルミタージュを彷彿とさせる洗練されたものまで色々。
多種多様で一貫性のなさこそがサン・ジョセフの個性なのかもしれない。