Sylvain Cathiard(シルヴァン・カティアール)
ヴォーヌ・ロマネで最も希少価値の高いスター・ドメーヌの一人、シルヴァン・カティアール。市場価格で言えばDRCやLeroyにはかなわないが、入手困難度でいえばカティアールに軍配が上がるだろう。
目次
歴史
ドメーヌは1930年代にボルドー出身のアルフレッド・カティアールが設立した。1900年の初頭にブルゴーニュに移り住んだ彼はDRCとLamarcheで働き、後に自分の畑を購入してワイン造りを始めた。当時はすべてネゴシアンに売られていた。1969年にアルフレッドの息子アンドレが継ぐと、一部のワインを自分で瓶詰めするようになった。やがてアンドレの息子シルヴァンがワイナリーに加わった。最初は父とともに働いていたシルヴァンだったが、徐々に独立の準備を始めて父の引退に伴って1995年に畑を手にすることができた。1990年代初期の頃までのワインはやや粗いタンニンを持っていたが、シルヴァンが引き継いでからはより洗練されたテロワール・ドリヴンなワインとなった。彼は上質な新樽を使うことでワインにモダンな輝きを与えた。その後2008年にセラーをリニューアルし、作業スペースが十分とれるようになった。シルヴァンの息子セバスチャンは、シャブリやボルドー(Chateau Smith Haut Lafitte)、マールボロ(Fromm)で修行した後、2011年にドメーヌを引き継いだ。もともと5haにも満たない小規模な生産者だったカティアールだが、セバスチャンは2019年にHautes Cotes de Nuitsを中心に畑を買い増して生産量を大幅に増やした。
畑
もともとヴォーヌ・ロマネを中心にシャンボール・ミュジニーとニュイ・サン・ジョルジュに畑(5ha未満)を所有していたが、2019年と2021年にオート・コートを中心に畑を購入(フェルマージュ含む)したことで現在は10haを超える規模に拡大した。この結果、ポートフォリオには新たに3種類のオート・コート・ド・ニュイ、ジュヴレ・シャンベルタン、そしてドメーヌ初となる白ワイン(アリゴテ)が加わった。しかし依然としてカティアールの真髄は拡張前の畑たちにあるといえる。ヴォーヌ・ロマネでは特級Romanee Saint Vivant(0.17ha)を筆頭に、1er Aux Malconsorts (0.75ha)、1er Les Suchots (0.17ha)、1er En Orveaux (0.3ha)、1er Aux Reignots (0.25ha)、複数区画のブレンドからなるヴォーヌ・ヴィラージュと圧巻のラインナップを持つ。ヴォーヌ以外ではニュイ・サン・ジョルジュに1er Aux Mergers (0.48ha)、1er Aux Thorey (0.43ha)、ノーマルのヴィラージュを持ち、シャンボールにはヴィラージュのLes Clos de l’Orme (0.43ha)を所有する。広域はCoteaux BourguignonsとBourgogne Rougeとなる。
醸造
セバスチャンのワインメイキングは先代の手法を取り入れながらもモダンにバージョンアップしたものとなっている。完全除梗(破砕はしない)とコールド・マセラシオン、無清澄・無濾過はそのまま踏襲しつつも新樽率とトーストレベルをぐっと下げた。父シルヴァンの時代は、上級キュヴェの新樽率は100%が当たり前だったため樽感が溶け込むまでに時間がかかっていた。セバスチャンは2014年頃からトーストを軽めにして新樽率を下げ、現在はオート・コートに20-25%、1erと特級は50-66%という比率に落ち着いた。熟成期間は15-18ヶ月で、樽メーカーは大部分がRaymondでオークの産地はTronçais、Allier、Jupillesと複数にまたがっている。
味わい
素晴らしい畑を所有しながらもやや樽感の強い味わいだったカティアールのワインはセバスチャンによって見事な進化を遂げた。セバスチャンが引き継いだ直後は果実味主体のリッチなスタイルでMugneret-GibourgやLamarcheよりもGeorges NoëllatやGrivotらの味筋に近いとWAで評価されていた。しかし樽の使い方を見直し始めた2014年頃から味わいの焦点が定まり、果実の輪郭がよりクリアになり、各畑のデティールがより鮮明に描写されるようになった。黒系果実が作るややリッチ寄りのスタイルではあるものの、ピュアさがはっきりと感じられるようになった。近年では完熟果実を支えるフレッシュな酸がジューシーさと張りをもたらし、ヴェルヴェットのような質感はかつてないほど見事に調和している。この驚くほどに滑らかな質感は上級キュヴェだけでなくブルゴーニュ・ルージュにも感じるとニール・マーティンはコメントしており、上から下まで全てのワインを強くおすすめしている。
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