Trentino-Alto-Adige(トレンティーノ・アルト・アディジェ)
品種の個性を生かす醸造によって 高い酸とフルーティーな果実味が見事に表現される」
トレンティーノ・アルト・アディジェはイタリア最北のワイン産地であり、全域がアルプスの麓に位置する。
地政学的に複雑な歴史を持つことから、トレンティーノ・アルト・アディジェは二つの自治州に分けられる。南部のトレンティーノではほぼ全域でイタリア語が話されている一方で、北部のアルト・アディジェではドイツ語が主流となっており、これはもともとこのエリアが旧オーストリア・ハンガリー帝国の領地であったことに由来する。
テロワール
南半分を占めるトレンティーノは、西にロンバルディア、南東にヴェネトが隣接する。アルプスの麓にあるため地形は山がちで、約70%の土地が標高1000mを超える場所にある。
基本的にブドウ畑はこうした高地ではなく低地に見られるが、一部は900m近い高地にも見られる。取り囲む山々が冷たい北風や雨といった外部からの影響を遮断してくれること、また南にあるガルダ湖から暖かく湿った空気を受けることからほとんどのエリアで穏やかな大陸性気候となる。一方、夜間は山から冷たい空気が降りてくるためよく冷え、日中との気温差が生まれる。これによってブドウは酸を高く保つことができ、また生育期がより長くなるため、フレーバーがしっかりと完熟する。
北半分を占めるアルト・アディジェも山々に守られており、マイルドな大陸性気候を持つ。畑は通常200-1000mの標高に見られるが、霜害を避けつつ最適な熟度が得られるのは350-550mあたりとされている。年間約300日も晴れに恵まれるこの地は日中温かく夜間は冷える。この大きな日較差が酸の高い完熟ブドウを生む。様々な土壌が見られ、火山性の斑岩、石英、雲母、ドロマイト質の石灰岩など幅広い。
味わいの特徴
トレンティーノでは全体の75%が白ブドウ、残りが黒ブドウという植樹比率となっている。
白ではピノ・グリージョとシャルドネが大部分を占め、ミュラー・トゥルガウ、ピノ・ビアンコ、リースリング、ソーヴィニヨン・ブラン、ゲヴュルツトラミネールなどが見られる。
ほとんどの白ワインはソフトなプレス、ステンレスタンクでの低温発酵を行い、品種由来の果実味を活かす作りが行われる。中には短期間澱との熟成を経るものもある。上級ワインでは一部新樽を用いたバリック熟成を取り入れてヴァニラやスパイスの要素を与えているものもある。
トレンティーノはまた瓶内二次発酵のスパークリングでも有名で、標高の高い畑に植わる酸の高いシャルドネから高品質なTorento DOCが生まれる。フェッラーリ(Ferrari)はこの地のスパークリングを牽引する生産者で、最上級のものは非常に熟成ポテンシャルが高い。
赤ではメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、ピノ・ノワールなど。地場品種も多く見られ、黒ブドウのテロルデゴ、マルツェミーノ、ラグレインなどが見られる。
ほとんどの赤ワインはフレッシュ・フルーティーなスタイルで中程度のタンニンを持つミディアムボディ。発酵中のマセラシオンは一週間程度で発酵温度も比較的穏やか(17-20℃)。ステンレスタンクまたはニュートラルな古樽で短期間熟成が行われる。
一方で、一部の上級ワインは発酵温度も26-32℃と高く、発酵後にもさらなるマセラシオンが1-2週間行われる。その後、一部新樽を用いたバリックでしっかりと熟成させる。ワインは力強い果実のフレーバーと樽由来のヴァニラやスイートスパイスの要素が溶け込んでいる。
アルト・アディジェのワインメイキングはトレンティーノとおおよそ同じで、基本的には品種の個性を引き出す醸造で、一部の上級ワインでは長期に渡る澱との熟成やバリックが用いられる。
ブドウ品種に関しては、標高の高い畑ではとりわけリースリング、シルヴァーナー、ケルナーなどが、やや低地の斜面ではシャルドネ、ピノ・グリージョ、ピノ・ビアンコといった品種が多く見られる。カンティーナ・テルラーノ(Cantina Terlano)の作るピノ・ビアンコやソーヴィニヨン・ブランはとりわけ高品質である。また、アルト・アディジェにはトラミン(Tramin)という名の村がありトラミナー種とゆかりがあるが、ここではカンティーナ・トラミン(Cantina Tramin)やホフスタッター(Hofstatter)が素晴らしいゲヴュルツトラミネールを作っている。
黒ブドウ品種ではスキアーヴァが最も植樹されており、これはドイツなどで人気があるが、ワインは色が淡くソフトな味わいで単一品種としてはシンプルすぎるため今ひとつ注目されていない。しかし、若い世代の生産者は興味を示しており、古樹のスキアーヴァから熟成ポテンシャルを秘めたワインを作っている。
一方、国際品種であるメルロー、カベルネ、ピノ・ノワールなども品質が高く、とりわけフランツ・ハース(Franz Haas)は洗練された長熟向きの素晴らしいピノ・ノワールを作っている。
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