Vougeraie(ヴージュレ)

ブルゴーニュだけでなく、フランスで最も大きな生産者の一人として業界を牛耳るボワゼ・ファミリー。このグループを統括するジャン・クロード・ボワゼが長年かけて集めた畑から最上のものを寄せ集めて作ったドメーヌがヴージュレである。

 

歴史

1999年、ジャン・クロード・ボワゼは30年以上にわたって買い増していったコート・ドールの畑から最上のものだけを選んでドメーヌを作る決意をした。かくして誕生したヴージュレの初代醸造責任者に就任したのはComte Armandで腕をふるっていたパスカル・マルシャン。強い抽出に由来するパワフルなワインを作っていたパスカルが2005年にヴージュレを去ると、後任として来たのはピエール・ヴァンサン。彼はパスカルと真逆のアプローチでエレガントなワインを作り始め、ヴージュレの品質と評判は大きく向上していった。ヴージュレの立役者とも言えるピエールは2017年にLeflaiveに移籍するため去ってしまったが、現ディレクターのシルヴィ・ポワロは見事な腕前でチームを束ねて品質を保っている。

 

コート・ドール中に52ha (赤: 33ha/白: 19ha)もの畑を所有するヴージュレのポートフォリオは非常に層が厚い。赤の特級は5つあり、Musigny(0.21ha)、Clos de Vougeot(1.41ha)、Corton Clos du Roi(0.5ha)、Bonnes Mares(0.7ha)、Charmes Chambertin(0.74ha)である。なお、ヴージュレのMusignyは北部(Les Musigny)に3区画を持ち、その全てがJ.F. Mugnierの区画と隣り合っている。1erはGevrey 1er Bel Air (1.01ha)、Vougeot 1er Les Cras(1.43ha)、Nuits-St-Georges 1er Clos de Thorey(3.08ha)、1er Les Damodes(0.92ha)、1er Corvees Pagets(0.33ha)を中心に、他の村(Beaune、Savigny、Chassagne)にも複数所有する。村名の中でも特に注目すべきはGevrey Chambertin Les Evocelles(3.13ha)である。ここはジャン・クロード・ボワゼが初めて取得した畑で、1964年に彼自身が植樹をした畑でもある。村名はGevrey以外にもVosne、Chambolle、Vougeot、Pommard、Volnayと幅広く所有する。

一方、白も圧巻のラインナップである。特級はChevalier Montrachet(0.15ha)、Batard Montrachet(0.38ha)、Bienvenues Batard Montrachet(0.46ha)を持つが、この3つを自社畑として所有しているはLeflaiveの他にヴージュレぐらいしかいないだろう。これだけでも十分すぎるがヴージュレの特級にはCorton Charlemagne(0.42ha)も加わる。1erはPuligny 1er Champ Gain(0.32ha)、Chassagne 1er Abbaye de Morgeot(4.57ha)、Chassagne 1er La Maltroie(0.2ha)を持つが、何と言っても注目すべきはVougeot 1er Les Clos Blanc de Vougeot(2.29ha)だろう。ジャスパー・モリスMWをしてコート・ド・ニュイで最上の白ワインの一つと言わしめる、ヴージュレのモノポールである。ごく少量のピノ・ブランとピノ・グリも植えられており、シャルドネにブレンドしてリリースされる。村名はPuligny、Chassagne、Vougeot、Beaune、Savignyと赤同様に幅広いラインナップを持つ。

 

栽培

ヴージュレでは設立して間もない2001年から畑にビオディナミを導入している。規模が大きいにも関わらず、現在は全面的に転換が済んでいるというから驚きである。また、自社でハーブ園を持ち、ここで育てた自前のハーブがビオディナミのプレパレーションに使用されている。50haを超す規模のため栽培チームは30人にもなり、コート・ド・ニュイチームとボーヌチームで二手に分かれて作業を行っている。収穫時は100人を超えるチームとなり、ボワゼ・ファミリーという巨大な後ろ盾があるからこそなせる人海戦術で各畑のブドウを最適なタイミングで収穫する。

 

醸造

ワインメイキングはワインメーカーの変遷とともに変化してきた。設立当初から2005年までワインメーカーを努めたパスカル・マルシャンは、前職のComte Armandで取り入れていた完全除梗、強めの抽出、高比率の新樽をヴージュレに持ち込み、濃く強いオーキーなワインを作った。パスカルが去った2005年の収穫後、新たに就任したピエール・ヴァンサンはテロワールを意識したより繊細なアプローチにシフトした。長テーブルを用いた入念な選果とコールド・マセラシオンを導入し、発酵中のピジャージュを日に一度までに抑えた(パスカルは日に数回)。また2008年から全房発酵を取り入れ、全房比率を段階的にアップさせていき、2015年は一部の広域ワインを除いて100%全房発酵で仕込んだ。また同年、新樽比率を1/3まで下げ、残りは1年樽と2年樽を使用するスタイルに切り替えた。2017年にピエールが去った後もこのエレガントなスタイルが踏襲されており、赤ワインでは全房発酵が積極的に取り入れられ、ピジャージュ(とルモンタージュ)は必要最低限に抑えられている。発酵は26℃前後と比較的低めの温度で行い、発酵後も同じ温度でタンニンの重合と色素を安定させる。12-18ヶ月にわたる樽熟成(新樽20%程)が終わるとタンクに移してブレンドし、落ち着かせてから無濾過・無清澄で瓶詰めする。一方、白ワインはプレス後、ごく短い清澄を経て樽発酵・樽熟成となる。新樽比率は約25%で、現在樽は450Lの大きなものが使用されている。

 

味わい

ヴージュレではワインメイキング同様に味わいのスタイルも大きく変化してきた。転換期を作ったのはピエール・ヴァンサンで、彼がエレガント路線に切り替えたことで味わいが格段に向上した。近年はさらに醸造テクニックを抑えてテロワール・ドリヴンな味筋にシフトしてきている。赤はブラックチェリーやラズベリーに全房由来の茎感が見事に溶け込み、樹木やスパイスを感じる複雑で香り高いアロマを持っている。全房はフレッシュさにも寄与しており、ここにライトなワインメイキングがかけ合わさって以前よりもミネラルが感じやすくなった。一昔前の過度な樽感とパワフルさは跡形もなく、焦点の定まったバランスの良い味わいとなっている。白は、シトラスやイエローフルーツ、ハニーに砕いた岩のミネラルとアーモンドやヘーゼルナッツが溶け込むアロマ。焦点の定まったクリアな味わいで、バックボーンとなるきらびやかな酸が見事なストラクチャーを作っている。近年Seguin Moreau社の樽を控え目にしたことで以前目立っていたトースティーさがなくなり、樽感のより目立たない自然な味わいに進化した。フィニッシュには塩味とシトラスゼストが心地よいキレを生み出している。

 

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