このワイン、フィラディススタッフ全員ではじめてテイスティングを実施した際に驚いたのが、20代の若手ソムリエと40代以上のベテラン組で、その評価が真っ二つに分かれたこと。
僕を含む40代以上のソムリエ有資格者は全員が「この価格でクラシカルなサン・テステフの飲みごたえあるカベルネ主体ボルドーが堪能できるとは！」という絶賛に近い興奮気味の評価をしたのに対して、20代の若手テイスター達はあんまりピンと来ていないようでした 笑まあ、それはそうです、このワインはあまりにも「昔ながらの」ボルドーなので。
最近のボルドーワインは、飲み頃までの時間設計を短くする傾向にあると思います。
これまでは最低でも7-8年は待たないと飲み頃のピークに辿り着かなかったクラスのワインでも、5年程で十分な飲み頃に至るくらいにワイン自体の造りを柔らかなものに変化させてきています。カベルネよりもメルロの使用比率を高め、タンニンや色素の抽出を抑えることで柔らかさ・フルーツの甘さを前に出していく醸造スタイルです。
この変化によりボルドーワイン全体のトレンドが変化し、昔ながらの「ガシッと硬質で、骨太な飲みごたえのあるワイン」は減ってきました。ボルドーでワインの虜になった身からすると、この傾向ってなんとも寂しいんですよね…。
だからこそ、今こそこういうワインを見つけたら世に広く問いたいと思います。『シャトー・マルタン サン・テステフ』、はっきり言って無名ですし格付もありません。ですが、飲んだときのシンプルなおいしさ、ボルドーワインとしての満足度は群を抜いて素晴らしかった。
このワインを大ぶりのボルドーグラスに注ぎ、強めに、やや乱暴なくらいにスワリングしてみました。20年前に僕の心を鷲掴みにした懐かしいボルドーのあの香りが、グワッと立ち上がりました。
…やっぱり、ボルドーワインって、いいなあ。
是非、飲んでみてください！！！

≪こんな香り･味わいのワインです≫：
完全に黒系果実主体の印象からスタート、カシス、ブルーベリーが完熟したアロマ。強めにグラスを廻すと、黒胡椒のスパイス感に備長炭的な香ばしい香り、そして僕の印象では「赤身肉」のような生命力に満ちた香りが。
口に含むとさすがに2018年のまだまだ若いボルドー、やや硬質さが感じられます。だけどしなやかで無理に締め付けないタンニンが心地よく包み込む。果実味は甘さばかりを主張せず、酸はあくまでも後ろに隠れて支えている感じ…時間経過毎に徐々にビター感が増していき、優美な酸が舞台の前に進み出てきました。いかにもサン・テステフのワインらしい、しっかり重心があるのに軽やか、という印象にまとまります。
余韻、長いですよ。

≪良い状態で楽しむには、いつ抜栓する？≫：
2018年の若いヴィンテージ…抜栓してからワインが真の実力を見せてくれるまで、結構な時間を要しました。出来ればお食事の3時間以上前には抜栓をしておきたいところです。
時間が経つごとに果実の甘みとスケール感が拡大していくので、ゆっくり楽しんでください。そして…正直な感想ですが、2日目のほうが僕は好みでした。
とても柔らかくしなやかにこなれて、これぞ「サン・テステフ」！というようなイメージです。

≪このワインがもっとおいしくなる温度設定≫：
少し冷やすべきタイプのワイン。筋肉質・硬質でタイトなパワフルさが個性のワインですので、その引き締まったプロポーションを綺麗に整えて飲んで戴きたいと思います。
セラー保管だったら冷蔵庫で20分くらい、常温保存だったら飲む前30分冷蔵庫、または5分ほどアイスバケツで冷やしてから。

≪おすすめのワイングラス形状･サイズ≫：
カベルネ比率6割のワイン、大ぶりのボルドー型グラス(縦長、口細)が絶対にベストです。ご自宅にある、出来るだけ大きなグラスでお楽しみください。この価格帯であることが信じられないような、飲みごたえと本格感を堪能できますよ！
不思議なことに、このワインはブルゴーニュグラスだとタンニンが非常に強く出る印象でした。酸がもっと前に出るかな…と思い試してみたところ、本当に驚きました。



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