極力手を加えない(ハンズオフ)なワイン造りの台頭
なぜ世界中の多くのワイン生産者が、手を加えない「ハンズオフ」の考え方を取り入れるのでしょうか?
ハンズオフとは簡単に言うと「有機栽培、果汁の操作は極力少なく、少量のSO2を除いて何も加えない」というアプローチのことです。
環境に優しく添加物を最小限に抑えるやり方は評判が良く、こうした手を加えない醸造は世界中の生産者が好むスタイルになっています。
一方でこのミニマリスト的なアプローチは、実際には想像よりも多くの労力がかかります。
有機栽培の畑
サヴィニー・レ・ボーヌにあるドメーヌ・シャントレーヴの栗山氏は、特に有機栽培された畑に関しては「手放し」のようなものは存在しないと述べています。
「有機栽培は、農薬を使用する場合よりも確実に多くの介入と注意が必要です」
農薬や化学肥料を使わない対処は効果が弱いだけでなく、雨によって流されるリスクがあります。
このためより頻繁にケアしなければなりません。栗山氏はまた、有機栽培においては緻密な剪定が避けられないとしています。
キャノピーマネジメントを徹底して空気循環をよくしないと、病気と腐敗のリスクがより高まるからです。
セラーでの作業
栗山氏は、ハンズオフの醸造はセラーで最大限の注意が必要になり、野生酵母の場合は特に気が抜けないと指摘します。
「野生酵母を使うと安全性が低下するからです」
実際にハンズオフで造る際には様々なリスクと向き合うことになり、問題の発生率を上げると述べています。
オレゴンに本拠を置くワイン生産者のジョー・スウィックは「ハンズオフではワインを容器から容器へあっちこっちに動かす必要がないので、仕事量はより少なく見えます。しかし、結果的には同じぐらいになります」と彼は指摘して言います。
なぜならSO2や添加物が使用されていない場合、醸造プロセスでは酸化や微生物など様々なリスクが高くなり、とにかく気の抜けない状況が続くからです。
アルザスのベルナール・ボーンも同意します。
「ハンズオフは簡単なように聞こえますが、逆に厳密さと精度が必要です」と彼は言い、セーフティネットのない綱渡りに似ていると言います。
カリフォルニアのクリス・ブロックウェイは「ほんの少ししかしないのに、とても多くの作業が必要」と見事に言い得ています。
なぜハンズオフを取り入れるのか?
では、なぜ生産者はこの方法を取り入れるのでしょうか?それは、より美味しくより正直なワインを造るためです。
栗山氏は、ハンズオフのワイン造りでは温度管理をしないことが不可欠であると付け加えています。
「最近のブルゴーニュでは、特にタンニンと好ましい香りを抽出するために温度管理が普及しています」と彼女は言います。
多くの実験を行った後、栗山氏は最終的に温度管理は必要ないという結論に達しました。
「それに依存すればするほど、醸造がテロワールを超えて目立つようになります。ワインの透明性というのは、人が介入すればするほど減少していくのです」と彼女は言う。
彼女は、ドイツに行った際にラインガウのペーター・キューンに「温度管理は、ワイン造りにおいて最も強力な介入の一部」であると教えられ、この言葉が印象に残っていると言います。
ハンズオフのワイン造りが、最もやりがいのある、最も刺激的なやり方であると栗山氏は考えています。
「私たちの目的は、特定のブドウ畑のテロワールの個性に焦点を当てることであり、それを促進するためにはハンズオフなアプローチが最善の方法なのです。」
今日、シャントレーヴでは、ルモンタージュを行わず、温度管理をせず、野生酵母での発酵のみを行います。
「介入することは簡単です。しかし、抑制することの方がより刺激的なのです」。
引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2020/08/the-rise-of-low-intervention-winemaking
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