DRCに見るワインの味わいの変遷

DRCに見るワインの味わいの変遷

 

ワインの生産に関する最も古い証拠は、紀元前7000年まで遡ることができます。もちろんそれ以前からワインは消費されていたのですが、この証拠は人類が少なくとも9000年間ワインを飲み続けていることを示します。

 

ギリシャやローマ、エジプト、近代ヨーロッパなど、ワインは過去のロマン主義との繋がりを魔法のように表してくれるのです。現代的なピノ・ノワールやメンシアも過去との繋がりの一つと言えるかもしれませんが、歴史の大部分においてワインの味わいは現代の私たちが知っている味わいとは全く異なるものでした。今回は、18世紀と19世紀のDomaine de la Romanee-Conti(以下DRC)の例を参考に、ワインの味わいの変遷について説明していきましょう。

 

Richard Olneyは、著書「Romanee-Conti」において、ドメーヌのフラッグシップワインであるRomanee Contiの1700年代、1800年代、そして現代におけるマセラシオンと樽熟成の年代ごとの違いについて説明していますが、その変化は劇的なものです。

 

Romanee Contiにおける醸造の変遷

DRCの醸造の歴史を見ると、赤ワインの醸造に関する複数の有益な記録があります。通常、ブドウが破砕されるとすぐに色の抽出が始まり、約5日で最大になります。タンニンの抽出にはアルコールが必要なので、色の抽出が止まる頃にタンニンが抽出を始め、約2~3週間程度で抽出されます。現代のRomanee Contiは2~3週間のマセラシオンを経て、18ヶ月~24ヶ月かけて樽熟成します。これは高品質な赤ワインの一般的な醸造方法です(マセラシオンは約8~21日、樽熟成は6ヶ月~24ヶ月)。2年間の樽熟成、また瓶詰め後も数十年以上の熟成に耐えるために十分なタンニンを抽出するため、マセラシオンの時間も長く取るのが現代では一般的です。

 

一方1800年代では、マセラシオンの期間をわずか4~5日程度しか取らないにも関わらず、4~5年も樽熟成をしていました。4~5日だと色素の抽出は出来るものの、抽出できるタンニンはごく僅かなので、実質的には濃い色のロゼワインのような仕上がりになります。ロゼワインを4~5年ものあいだ樽熟成させてしまうと酸化が進んでしまいます。長い時間をかけて酸素が樽の細孔から入り込み、酢酸菌がゆっくりと育っていくので、揮発酸レベルが高いワインに仕上がってしまうリスクがあるのです。

 

揮発酸が強く酸化したロゼワインは、しっかりとしたストラクチャーを持った美しい現代のRomanee Contiのスタイルとは大きく異なるものです。またこの時代、ワインにフィネスを与えるために6%の白ブドウが含まれていました(ピノ・ブランとピノ・グリ)。

 

続いて1700年代です。この時代のマセラシオン期間はなんとわずか12~36時間で、3年間樽熟成させていました。1800年よりも更に淡いロゼワインだったので、酸化と揮発酸はより顕著なものだったでしょう。当時、マセラシオン期間を長く取ることはワインの品質を下げると考えられていたのです。またワインには20%もの白ブドウが含まれていました。

 

樽の効いたロゼワイン

この偉大な土地から生まれるワインはこの数百年の間に、極端に樽の影響を受けて酸化された高い揮発酸を持ったロゼワインから、見事なストラクチャーを持ったクリーンな赤ワインへと変化していったのです。このようなスタイルで生産されるワインは現代にはほぼ存在しませんが、現存するワインの中で最も近いワインはLopez de Herediaというスペインの生産者が造るViña Tondonia Rosé Gran Reservaというロゼワインかもしれません。ロゼワインとして醸造された後に4年間樽熟成させるキュヴェで、品種や土地、樽の種類に差異はあるものの、まさに過去のRomanee Contiと近しい特徴を持っていると言えるでしょう。

 

これらの味わいの変遷は今日のワインにどのような影響を与えているでしょうか?現代に生きる我々がイメージするワインは、歴史の中で人類が抱いてきたワインに対するイメージとは大きくかけ離れています。歴史の観点から言うと、今日の多くのワイナリーが築いた伝統には約1世紀の歴史しかないのです。ここ50年ですらワインのスタイルのトレンドには大きな変化があります。70年代や80年代に主流であった低アルコールのワインを経て、90年代と00年代にはロバート・パーカーの影響を大きく受けた円熟でリッチなスタイル、そして現代では若くて酸の高い、低アルコールのワインが好まれているというように。

 

ワインの歴史における大きな多様性は、ワインのスタイルに終着点はなく、その進化が最頂点に達することもないということを教えてくれるでしょう。100年前であれ1000年後であれ、それはヴィンテージのように独特の個性を捉えた一瞬のものなのです。消費者の嗜好の変化や栽培の知識、テクノロジーの発達、新たなブドウ品種、気候変動、そしてありとあらゆる情勢の変化によって、ワインは我々が想像もしないような方向へ向かっていくはずです。新しいアロマと味わいは、未来で私たちを待っていることでしょう。

引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2020/09/the-history-of-wines-changing-flavors

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