オレゴンが酷暑を制するヴィンテージ
もしもあなたがオレゴンワインに関心があるのなら、6 月 28 日にセイラム市で観測された 47 ℃の気温を見て辟易としたことでしょう。
2021年の気候
2021年夏にオレゴンを襲った衝撃的な熱波は、山火事や煙害によって収量が29%も減少し、その品質にも影響を及ぼした 2020 年の直後に訪れました。しかし、幸いなことにこの記録的な暑さは開花とヴェレゾンの間に訪れ果実はまだ小粒で緑色の状態だったため、ブドウ樹は暑さに適応するのに最も適したタイミングでした。その後気温は落ち着き、9 月中旬には降雨も訪れました。
ワイン気候学者であり、ワイナリー Abacela でCEOを務める Greg Jones は次のように語ります。「多くの人が今年の気候に満足していると思います。2020 年とは全く異なる気候なので、4つ星に相当するヴィンテージだと呼べるでしょう。熱波による影響はほとんどなかったといえます」
ワイン業界に気候状況や干ばつの報告を行ってきた Jones によると、現在進行形の干ばつは水源へのアクセスがないワイナリーの収穫量減少に影響を与えているといいます。
「ローグ・ヴァレーの灌漑地区では、予測されていた水量のわずか4分の1程度しか得られませんでした。果実が成長するために十分な水分がなかったので、果実は非常に小粒でした。たとえ灌漑用水があったとしても、暑さが厳しい季節では水分はブドウ樹自体が生存するために使われてしまうので、果実まで行き届きません」と、Jones は説明します。
もちろん“非常に小粒な果実”は、果実の凝縮感を高めることが出来るので悪いことではありません。干ばつの年ではしばしば(常にではありませんが)収量が低く品質の高いブドウが出来上がります。
オレゴンで複数のワイナリーを経営する Jackson Family Wines の Eugenia Keegan によると、彼女は今年のブドウの品質に満足しているといいます。
「2020年と比べたら全てが完璧と言えます。収量はやや減少したものの果実も素晴らしい状態でした。6月初旬の10日間を除いて、5月初旬からほとんど降雨もありませんでしたが、ウィラメット・ヴァレーでは開花の時期にあたりました。収量全体の約20%減ではありますが、品質は非常に素晴らしいです」と、Keegan は述べています。
熱波のあった6月の数日間は異常でしたが、夏全体を通して暑さが続いたわけではありませんでした。人間もブドウ樹も今年のような暑さは経験したことがありませんでしたが、ブドウ樹は適応能力に長けています。しかし常軌を逸脱すると必ず何かしらの反応があるものです。今年の酷暑のタイミングでは、果実がまだ小粒で緑色の状態だったので、果実には脱水症状や日焼けのような影響は確認されませんでした」
Keegan によると、6月の熱波の影響はブドウ樹以外の樹木に現れているといいます。
「ブドウ樹以外の樹木には今まで見たことのないような症状が確認できます。常緑樹の枝先には、液体を含むため鮮やかになっている部分がありますが、それらが熱波で蒸発してしまいました。一方でブドウ樹は青々としており、そのような異常は確認されませんでした。そして果実にもそのような影響はないように感じますが、問題はどのような化学反応を起こすのかということです。これは後にわかることです」
2020年との違い
そして2021年度におけるオレゴンの重要なニュースは、2020年と違って煙害の影響を受けていないことです。カリフォルニアの蒸留所では、2020年に山火事による煙害の影響を受けたナパ・ヴァレーのブドウを用いたウォッカが販売されています。幸運なことに、今年のブドウはウォッカになる必要はなさそうです。
アムクワ・ヴァレーのワイナリー HillCrest Vineyard の代表である Dyson DeMara によると、今年は彼のワイナリーにおける歴史の中でも最も乾燥した年だといいますが、彼のブドウ樹はその影響を示していません。
「私が所有する畑はすべて丘陵地にあり、無灌漑農法で栽培されているため、樹冠の状態がいかに健全であるかに多くの人が驚きます。このヴィンテージを一言で表現するならば、”クラシック”です。発酵槽ではどのヴィンテージよりも鮮やかな果実のアロマが感じられ、これは低いpH値と関連しています」と、 DeMara は語ります。
オレゴンのワイナリー A to Z Wineworks の創設者である Sam Tannahill は、オレゴン全域からブドウを購入しています。収穫の40%ほどを終えていますが、全ての地域のブドウに満足しているとのことです。
「病害もなく、糖度も高く、バランスのとれた酸と素晴らしいフレーバーです。このヴィンテージが過去トップ5に相当することを確信しています。ピノ・ノワールは色が濃く、凝縮感があり、フレッシュで複雑なワインになりつつあります。まだ発酵の段階ではありますが、白ワインも素晴らしい出来栄えです。昨年に続き、このヴィンテージの品質には特に満足しています。2021年は確実に偉大なヴィンテージになりつつあり、私はその確信があります」と、 Tannahill はまとめています。
引用元:https://www.wine-searcher.com/m/2021/09/oregon-vintage-beats-the-heat
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