イタリア、今年も有望ヴィンテージに喜ぶ
気温上昇の問題が生産者達を悩ませましたが、イタリアのワインメーカー達は収穫に関しては楽観的な様子です。
ワイン生産者たちは、彼らがそれを認めたいか否かは別として、ブドウの生育期間中の天候について毎年思いを巡らせています。ワイン生産地であればどこでもこのような問題を抱えていますが、特にイタリアではしばしば雹が降り、ブドウ木にダメージをもたらし、収穫量が減少します。
過去15〜20年(もしくはそれ以上)の気温上昇も加わり、ワイン生産者達はさらに心配を募っています。イタリアのブドウ栽培農家やワイン生産者は、母なる自然がもたらすあらゆるものに対処する事を学んできました。しかし、2022年の収穫はイタリア全土を通して、過去20年間のものとはまるで異なっていました。
我々はイタリアの北から南にわたるいくつかの地方の生産者に話を聞き、今年のブドウ栽培シーズンの難しさについて学んできました。今年特徴的だったのは、ほとんどの地域で平均気温を上回り雨が少なかった事で、その結果多くのワイナリーで旱魃が起こりました。
ピエモンテ州
Michele Chiarlo wineryのStefano Chiarloは、ほとんどの品種について早い時期に収穫したと言っています。コルテーゼとアルネイス(ガヴィ用)は10〜12日早く、モスカートは通常の収穫よりも15日早かったのです。バルベーラは1週間早く、バローロとバルバレスコ用のネッビオーロは3週間も早かったのです。Chiarloは、バローロのゾーンがバルバレスコよりも早い収穫になった事はかなり異例だと指摘します。収穫量はモスカートで30%、バルベーラで15〜20%少ない事も特徴としています。Chiarloは、バルベーラは「素晴らしく豊かな色で、糖分は高く酸味も適度だ」と言います。
ラ・モッラのGianni Gagliardo wineryでは、Gianni Gagliardoが、10月の初めには、まだほとんどのバローロ地域の収穫をしなければならなかったとコメントしました。収穫量は例年よりも少な目である事も指摘します。なぜならば、ブドウの大きさが平均よりも小さいからです。しかし、彼はこれまでの結果をポジティブに捉えています。
「今年の成育期には予想もしなかったような、素晴らしい品質を見据えています」
ヴェネト州
ヴァルポリチェッラ・クラシコ区のネグラーにあるVigneti di EttoreのGabriele Righettiは、今年の夏は非常に暑く雨があまり降らなかったと回想します。彼のワイナリーでは、8月の第2週にようやく雨が降り、彼はこれを“灌漑のない全ての畑にとっての恵の雨”と呼んでいます。
彼のワイナリー畑のほとんどはペルゴラ・システム(棚仕立て)で植えられていて、ブドウは日焼けから守られ、ワインのフレッシュさが保たれます。この仕立て方のおかげでRighettiや他の生産者は、6月中旬から8月初旬にかけて32度を超える高温を緩和し、一部の植物を保護する事ができました。収穫量は約10%減少したと指摘します。過去に似たような年はあったか?という質問に対して彼は、2003年と比較し、これもまた非常に高い気温に見舞われたヴィンテージだった、と答えました。
トスカーナ州
キャンティ・クラシコ、バルベリーノ・タヴァルネレのCastello MonsantoでLaura Bianchiは、栽培シーズンは穏やかな冬から始まり、春には適度な雨が降ったが、6月と7月は全く雨が降らなかったと回想します。8月に何度か嵐があったのでこの問題は緩和され、ありがたいことにこの地域に雹は降りませんでした。シャルドネは、昨年より1週間早い8月30日に収穫され、黒ブドウも例年より1週間早く収穫開始になりました。「9月最後の数日間で降った雨がブドウに恵みをもたらし、美しい姿を見せてくれました」。
キャンティ、ガイオーレのBarone Ricasoliでは、Francesco Ricasoliが、初夏から真夏にかけての厳しい天候について指摘します。「7月の暑さが厳しくブドウ木が衰弱し始めたので、みんなとても心配していました。植え替えたばかりの畑に2回水をやりましたが、そうしないと全部ダメになるところでした」。彼は、8月の雨で収穫が救われ、収量は例年よりは少ないものの、ほんの少し減少している程度です」と述べます。
キャンティ、ラッダのBrancaiaで、ワインメーカーのBarbara Widmerは、暑くて乾燥した夏の後、8月から9月には「特に夜間の気温がずっと低かった」事を指摘します。
メルロの収穫は9月5日に始まり、サンジョヴェーゼは9月21日に最初の収穫を迎えました。海に近いマレンマの畑では、9月10日にサンジョヴェーゼの収穫が始まり、プティ・ヴェルドもその直後に始まりました。
今年のヴィンテージの可能性について、彼女はポジティブな考えを示しています。「夏の高温にも関わらず、過熟した果実の味は全くしません。ワイン/マストは凝縮し力強く、濃厚な色合いになり、素晴らしい果実のアロマと卓越したフレッシュ感・・・。私は非常に満足していると言えるでしょう」
モンタルチーノのCasanova di Neriでは、Gianlorenzo Neriが、雨不足について「7月にはもっともっと心配していた」ものの、「8月の雨は本当に状況を変えた」と言います。サンジョヴェーゼの収穫は9月1日に始まり、Neriによると「ヴィンテージは予想していたよりもずっと良いものになっている」という事です。
マルケ州
ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ地区にあるApiroのAndrea FeliciのLeopardo Feliciは、春の平均以上の気温が「若いブドウ木が成長を開始し頑強になっていく事を困難にし、植物の生育にストレスを与え、房の発達が遅くなった」と指摘します。Feliciは、8月の気温の低下と降雨量の増加により、ブドウ畑の状況は緩和されたと述べます。「ブドウの品質は損なわれていない」とも。
アブルッツオ州
テラモ県にある同名のワイナリーオーナー、Francesco Cirelliは、5月から7月まで降雨がなかったが、1月から4月下旬までの長雨に注目し、「これにより地下に良い水脈ができたと思います」と述べています。彼は、ペコリーノは8月末に収穫を開始しましたが、「酸を保つために通常より少し早めに収穫しました」と言っています。チェラスオーロ用のモンテプルチアーノは9月1日に収穫を開始し、9月10日に終了、トレッビアーノと赤ワイン用のモンテプルチアーノの収穫は9月末に終了しました。
カンパーニャ州
イルピニアのFeudi di San Gregorioの経営者Antonio Capaldoは、今年もイタリアの他の地域と同様の暑さと降雨不足を経験しました。「8月は涼しくかなりの雨が降り、夕方には気温が低下するという天候が9月中続きました」。収穫量については、白ワインは約10%減になると述べています。タウラージなどの最も重要な赤ワインの原料となるアリアニコについてCapaldoは、雹害がこれらの畑の約30%に影響を与えたと指摘します。「アリアニコに関しては、暑さとその後の雨の組み合わせが、この収穫をより複雑にしています」
最後にCapaldoは(予測として)、「白ワインにとっては非常に良いヴィンテージになるだろうが、アリアニコにとってはおそらく記憶に残るようなヴィンテージにはならないだろう、しかし我々は希望を持ち続けるだろう」。と述べました。彼は、白ワインについては熟成のポテンシャルの兆候もあると信じていて、アリアニコについては、2022年はタウラージのリゼルヴァや単一畑の生産はせず、クラシック・タウラージの生産も減らす事を考えています。
シチリア島
シチリア島のほとんどの生産者を代表するグループ、Assovini Siciliaによると、2022年はイタリアで最も長い収穫期間(平均100日以上)になるとの事です。メンフィのCantine Settesoliの農学者Filippo Buttafuocoは、「暑さにもかかわらず、ブドウの質は素晴らしい」と言っています。興味深い事に、シチリアの多くの地域が暑かったことが要因ではあるものの、2022年の記録的な気温は2020年と2021年の気温とほぼ同じでした。
エトナ地区では、PassopisciaroのディレクターであるVincenzo Lo Mauroが、8月19日にシャルドネで最初の収穫を開始したと述べています。彼は、特に8月の雨以降の季節に満足しています。「特に8月に雨が降ってからは、素晴らしい品質のブドウが収穫でき、収穫量も昨年よりはるかに多くなりました」。彼は、赤系品種(ネレッロ・マスカレーゼ、チェザネーゼ、プティ・ヴェルド)が高い日較差の恩恵を受けていることを指摘し、「今年は2003年を少し思い起こさせる」と語りました。
引用元: Italy Enjoys Another Promising Vintage
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