2021年ローヌ地方、災難から勝利をつかむ
- 2023.03.26
- ワインニュース
- 2021ヴィンテージ, ローヌ
悲惨な生育期にもかかわらず、ワインは美味しく、しかも大金を払わずに手に入れることができます。
ブルゴーニュの2021年産プリムールを飲んでみて、(a)どれにせよ手に入れられたらラッキーであること、(b)もしそれができても貯金箱に致命的な打撃を与えなければならない事がわかりました。さて、どうすればよいのでしょうか?
代替案があります。ピノの話ではないので、もしあなたがピノに恋しているのなら、ここで読むのをやめてください。自分でも飲めるし、友人にもあげられるくらいの価格の、本当に美味しいワインが欲しいなら、ローヌに目を向けてください。今、ローヌは、とても美味しいけれども、まだそれほどファッショナブルではないという、恵まれた段階にあります。もしこれが株式市場なら、人々は脇腹を突き合い、片隅でコソコソと話をするでしょう。
マイナス面は(何かしら1つはマイナス面があるもの)、新しくリリースされたヴィンテージが2021年で、ご存知のように、聖書の災いが生産者に解き放たれたヴィンテージであるということです。雨、霜、雹、嵐、そしてさらに雨が降ったのです。しかし、DelasのJacques Grangeはこれを、「挑戦ではあったが、災難ではなかった」と表現しています。「私たちは約20%のブドウを選別しました。2021年のエルミタージュの単一畑のボトリングは行いませんでした。十分な出来ではなかったためで、全て他のエルミタージュのボトリングに回しました。そして、エルミタージュの丘の通常収量は約35hl/haのところ、26hl/haとなりました」
他の人たちはもっと苦しみました。André Perretでは、コンドリューの40〜55%、残りの80%を4月の霜で失いました。この残りとはサン・ジョセフの事です。Clusel-Rochはコンドリューの半分を霜で失い、コート・ロティの半分を斜面の霜で失いました。逆にコート・ロティの台地は霜の被害が少なかったという事です。Domaine de l’Oratoire Saint-Martinの人たちは、「霜はより危険になった。以前は霜が降りなかった区画が、今は霜に覆われるようになった」と言っています。
霜が降りた後は雨が降ります。Domaine Jolivetのように霜の被害をあまり受けなかった場合でも、湿気が多いと病気になりやすいので、収穫時にかなり厳しい選別が必要になります。ブルゴーニュでは9月になると回復するのですが。DelasのGrangeは「9月14日に収穫を始めたら、18日目に1日で120mmの雨が降った」と言います。シャトーヌフ・デュ・パプのDomaine Feraud et Filsは、9月のわずか15日間に、100mm、50mm、そしてまた100mmと降ったと言います。幸いなことに、「うちの畑はすべて砂地なので、水はけがよかった」と続けました。
それまでは、南ローヌではかなり乾燥した年でした。Domaine le Clos des Cazauxは、温暖化する気候にどのようにブドウ栽培を適応させたかについて説明しています。
「いたるところに草があります。もう土を耕すことはありませんし、草は太陽から土を守ってくれるのです。日光が肌に与える影響を知っていますか?土も同じなのです。6月、7月、8月と3週間おきに石膏をブドウの葉に塗りました。最も古い畑では、27年間何も特別な手当をせず、土を掘り起こしていませんが、この畑が最も暑さの影響を受けませんでした。そして、アルコールも少なかったのです、信じられないことです。この2年間、トラクターはどこにも使わず、動物も使わず、人間の介入も最小限にして、剪定と房を仕立てに添わせること、そして収穫だけをしてきました。私たちが問題なのです。[11月の3週目]には、この地域で唯一、葉っぱ-緑の葉っぱ-があるブドウ畑は私のものでした。2022年は4ヶ月間雲一つない天気でしたが、2021年よりも0.5%アルコール度数が下がりました。今年は草を刈らないようにしてみますが、どうなることやら」
「フランスには、私のように自然に任せている生産者が10人ほどいると思います。売れる話しではないので、誰も興味を示さない。コストがかかるという事でもないしね」
よりクールでクラシカルに
2021年のアルコール度数は一般的にそれほど高くなく、2020年よりも低いことが多いです。これは良いことだと思います。特に南部では、アルコールが15%まで上昇し、さらに上がり続ける事は非常に簡単なのです。また、2021年の酸は、数字上では特に高くないようですが、味わいとしてはそれ以上に高いのです。口に含むとそれを感じることができ、ワインはより良いものとなっています。アペラシオン間の差ははっきりと表れています。コート・ロティの赤は特に優れており、サン・ジョセフとエルミタージュは大柄というよりエレガントです。南部の赤ワインは特にピュアで、リッチでしなやか、そしてバランスが取れています。
白は、南北ともに赤より賞賛されていますが、コンドリューは、繊細で落ち着きがあり、素晴らしいものです。白のシャトーヌフも注目のひとつです。2014年以来の白のベストヴィンテージという声もあります。
白ワインは赤ワインよりも安定していると思います。いくつかの赤ワインには完熟していないタンニンがあるという報告がありますが、私がこれまでに試飲した限りでは、英国の優れたワイン商たちによって、そのようなワインは選別されていました。しかし、購入する前に試飲するのが賢明でしょう。
さて、そこで気になるのが価格です。Justerini & BrooksのGiles Burke-Gaffneyは、「価格ですか?」と聞き返します。「一般的にはほとんど動いていません。ローヌはまだあまりファッショナブルではありません。若い世代が美しいワインを造っていますが、価格上昇傾向は少しずつです。2021年の価格はすべて非常にリーズナブルで、この状態が続くことを願っています。飲むために買っているのですから。ブルゴーニュやボルドーでは、投資家を追い抜くために努力しなければなりません」
ブルゴーニュのトップ生産者の中には、個人客に販売する量を制限し、レストランで飲んでもらうことを望むところもあります。転売のために保管されるのを避け、飲んでもらうためです。しかし、イギリスでは、レストランで売られるワインの値段が非常に高いのです。ロンドンで流行りのレストランのソムリエと話しましたが、彼女はワインリストに載せる大物ブルゴーニュをリーズナブルな価格で探すことに頭を悩ませていました。彼女の顧客にとって「リーズナブル」とは£200($247)程度です。しかし一般的な意見としては、そのようなお客様は、文句を言いながらも、必要であればその倍を支払う覚悟があるようでした。したがって、その生産者の判断は正しかったと言えるでしょう。
これは余談なので、ローヌに話を戻しましょう。2022年のヴィンテージは、より凝縮感があり大きなスケールとなる事が約束されていますが、2021年は比較的軽かったので赤ワインはおそらく5年から7年で飲み頃を迎えるでしょう。投資家を押しのけてまで、欲しいワインを手に入れる必要はないのです。あなたはそれを楽しむことができます。
そして、あなたの貯金箱も喜ぶでしょう。
引用元: 2021 Rhônes Snatch Triumph from Disaster
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