脚光を浴びる古木

脚光を浴びる古木

世界の古いブドウの木のカタログを作るという野心的な計画が6月末スタートしました。しかし、少し手助けも必要なようです。


古いブドウの木に関する最も権威のある複雑なデータセットを作成するという野心的な計画が6月末、ライブ・ウェビナーで開始されました。そして、それは野生のブドウのように成長していくでしょう。

 

(The Old Vine Registry )のウェブサイトは、世界中の歴史的なブドウ畑を完全に検索し、そしてアップデート可能な初のオンライン・データベースであり、とりわけ将来の研究者にとって有益なものです。しかし、真の成功を収めるためには、ワイン業界全体からの協力が必要です。

 

OVRは、JancisRobinson.comのスプレッドシートとして2010年から存在していましたが、この新たなバージョンにより、非営利のコミュニティ・ベンチャーでありながら、はるかに価値のあるツールに生まれ変わりました。世界中にある古木のブドウ畑の詳細が記載されたデータベースのほとんどの項目は、クラウドソーシングで作成されたものであり、今後もクラウドソーシングで作成され続けます。

 

これは、古木のブドウを保存することの重要性に対する関係者全員の熱意から生まれた、チームによる取り組みです。ウェビナーの参加者である、オールド・ヴァイン協議会のSarah Abbott MW、Jancis Robinson MW、そして登録を管理したウェブサイトのシニア・エディターTamlyn Currinから話を聞きました。新しいデータベースのプロジェクト・マネージャーであるAlder Yarrow、古木活動家の先駆者で南アフリカのオールド・ヴァイン・プロジェクトの創設者であるRosa Kruger、そして資金を提供したJackson Family WinesのGilian Handelmanも講演しました。

 

古木は重要であり、それは単に、古めかしくて抱きしめたくなるというロマンチックな概念や、ワインに凝縮感と個性を与えるような良いブドウができると多くの人が信じているからというだけの理由ではありません。地球の持続可能性と未来にとっても重要なのです。

 

この20年間、ワインの世界では、樹齢の高いブドウの木を根こそぎ切り倒すのではなく、保存することが最も重要であるという認識が広まってきました。その背景には、深く根を張った古木の方が、干ばつや熱波、さらには特定の病気にさえ、よりよく対処できるという理由があるのです。

 

最後のチャンス

古木のブドウがワインの世界にとって重要な意味を持つその他の理由としては、希少なブドウ品種の最後の生き残りであり、人気が落ちた品種でも、気候変動の中ではワイン造りに適した品種である可能性があり、生物多様性を創出することなどが挙げられます。また、古いブドウ木は特定の場所の歴史や遺産を象徴しているという観点もあります。

 

しかし、古木のブドウ畑が農家のものであった場合、その農家が、より流行のブドウ品種に植え替えたり、単に生産量を増やしたりすることで、大きな見返りが得られると考えているのであれば、そのブドウ畑は消滅の危機に瀕しています。

 

2008年にカリフォルニアを訪れたJancis Robinson MWは、映画『サイドウェイ』の後、流行のピノ・ノワールを植えるために古木のジンファンデルが根こそぎ切り倒されているのを見て、古木のブドウに対する脅威を認識しました。その衝撃的な瞬間以来、JancisRobinson.comのスタッフは皆、古いブドウ畑を「特別に保護する姿勢」をとっている、と彼女はウェビナーで説明しました。

 

Sarah Abbott MWは、一つのマーケティング・カテゴリーとして、古木に脚光が当たるようにと、2021年に非営利のオールド・ヴァイン協議会を共同設立しました。この組織はOVRの本拠地として効果的に機能しています。彼女は、古木は「美しさ、個性、強さの結合であり、“彼らは”最も才能があり、献身的なワインメーカーにとってのインスピレーションの源である」と述べました。

 

Abbott は、より現実的にこう熱弁しました。 「OVRの新しい進化のひとつは、Wine-Searcherを使って、可能な限りこれらの畑と実際のワインを結びつけることです。探し出して畑を飲めるのです(比喩的に)。これは、古いブドウ木に流れる価値を具体化し、生存可能にし、市場で望まれるものにすることを意味するので、非常に重要なのです。これこそが、ブドウ畑が将来繁栄していくための鍵なのです」。

 

2022年、OVRのより効果的なデータベースを作成するため、データベース開発者を募集したところ、北米で最も長くJancisRobinson.comに寄稿しているVinography blogのAlder Yarrowがその呼びかけに応えました。

 

四半世紀以上にわたって、Yarrowはワイン執筆から離れ、デジタル・マーケティングとブランド体験デザインの最先端で働いてきました。彼はOld Vine Registryのプロダクト・マネージャーを志願し、適切な開発者を見つけ、ワインの専門知識を駆使してスプレッドシートを整理し、構造と階層を機能させ、後にUI(User Interface)テストをしました。

 

Yarrowはこう強調しました。「このサイトはMVP(Minimum Viable Product)と呼んでいるものです。私たちの最初の挑戦であり、かなりうまく機能していると思いますが、まだまだ追加したり変更したりしたいことがたくさんあります」。

 

立ち上げ時点で2200のエントリーがあり、登録リストはその幅広さと国ごとの登録数のギャップが目立っています。現在、30カ国が登録されています。 ポルトガルが822のブドウ畑でトップ、スペインが383、アメリカが334でそれに続き、オーストラリアとフランスが続きますが、後者はわずか142のブドウ畑しか登録されていません。

 

最も古いブドウ畑の推定樹齢は600年で、200年以上のものも17件登録されています。とはいえ、登録の最低樹齢は35歳で、ヨーロッパでは比較的若いと思われるかもしれません。イタリアやフランスの古いブドウ畑のリストが少ないのは意外な気がします。これからすぐ間違いなく浸透していくでしょうし、このデータベースはすぐに追加できるのが魅力です。簡単に1万件に達するとYarrowは推測しています。

 

樹齢35年という最低基準は、オールド・ヴァイン協議会や、南アフリカのオールド・ヴァイン・プロジェクト(Old Vine Project)やバロッサ・ワインのオールド・ヴァイン憲章(Old Vine Charter)など、確立された古木保存プロジェクトが採用しているものと同じです。これらは、世界中で急増している古木保存プロジェクトのうちの2つに過ぎません。

 

仕組み

Yarrowが説明するように、このサイトは基本的に検索用に設計されています。 ブドウの品種、産地、国、生産者、さらには各ワイナリーのデータベース・エントリーに付けられたストーリーに登場する人物でも検索することができます。一般的には、国別やブドウの樹齢別にドロップダウンでリストを表示できます。

 

リストアップされたブドウ畑の区画には、名前、場所、ブドウ木の実際の樹齢または推定樹齢、生産者、所有者、関連ウェブサイトのリンク、wine-searcherでの購入へのリンクが含まれます。

 

このデータベースには、伝統的なブドウ畑との、数々の興味深い歴史的つながりがあります。奇妙なことに、出版社のWilliam Randolph Hearstを検索してみると、カリフォルニアのソノマ・ヴァレーにあるBedrock Heritage Vineyardにたどり着きます。1888年に、ハーストの祖父によって植え替えられた木です。古いブドウの木には、本当に物語があるものです。

 

クラウドソーシングの精神に基づき、誰もが「フィードバックを提供する」ボタンを使用してデータベースの修正を提案することができます。そして本件において重要な点として「ブドウ畑の情報を投稿する」ことが奨励されています。後者のボタンをクリックすると、ブドウ畑の詳細を追加するためのフォームが表示され、後で追加情報が確認されます。

 

OVRの新バージョンを開発するための初期資金は、Jancis Robinsonのチームが、そのサステイナブルへの取り組みを知ってアプローチしたJackson Family Winesから提供されました。ワイン教育担当副社長のGilian Handelmanは、「OVRをサポートできることは大きな喜びです。私たちは今、管理者になり、ワインを買ったり、ブドウ畑を訪れたりすることで、ブドウ畑をサポートしているのだとOIVは感じさせてくれます。そんな風に感じさせてくれるのです」と熱く語ります。

 

Jancis Robinsonは、登録は無料で、誰もがコメントしたり、新しいエントリーを提案できるオープンなものであるべきだというYarrowの最初のビジョンを称賛しました。また、今後の発展のために、大小を問わず金銭的な寄付も積極的に募っています。

 

Abbottは、OVRが世界のワイン業界全体で古木のブドウに対する認識を高めることを強く望んでいます。
「輸入業者、貿易業者、小売業者のモチベーションを高めるには、より多くの売上が見込めるに越したことはありません」と彼女は強調します。

 

引用元: Old Vines Step into the Spotlight

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