ブルゴーニュ2022:価格以上の完璧さ

ブルゴーニュ2022:価格以上の完璧さ

ブルゴーニュの2022年ヴィンテージが続々と店頭に並んでいますが、とんでもない値段に見合った価値があるのでしょうか?

決して単純ではないブルゴーニュ。

2022年は赤も白も間違いなく素晴らしいヴィンテージです。しかし、市場の状況はどうなのでしょうか?それについては、商人の数だけ意見があります。

 

論理的に考えるために、まずワインを見てみましょう。我々はブルゴーニュワインに出会えたら嬉しいし、味わいもわかっています。美しいバランス、フレッシュさ、典型的、正確さ。他の産地のピノ・ノワールがどんなに素晴らしくても、今年のブルゴーニュはそれを打ち負かすでしょう。

詳細は?この年は暑く、乾燥し、日照に恵まれ、春先の霜による被害はほとんどなく、危険な猛暑もありませんでした。6月22日、ジュヴレ・シャンベルタンはわずか10分間で100mmの雨に見舞われました。大きな嵐があり、雹と雨がラヴォー渓谷を流れ落ち、ブドウ畑を横切っていきました。

この水の勢いは多くの被害をもたらし、セラーは浸水し、ブドウ畑の壁は破壊されました。トラクターが畑に入れなかったため、ベト病を防ぐためにアペラシオン全体で、空からボルドー液のスプレー散布が行われました。しかしその後、天候は再び暖かく乾燥したものとなり、水不足によるブドウ木のストレスを抑えるために散水が行われました。その後、ジュヴレは復活したようですが、収量は以前より少なくなっています。しかし、ほとんどのワインの品質面では、問題はなかったようです。

 

ワイン

収穫は8月に始まり、私が試飲したワインから判断すると、収穫が早すぎたり遅すぎたりしたブドウはほとんどありませんでした。赤ワインでは、温暖な気候を示唆するバルサミックなニュアンスを感じるものが1、2種ありますが、それほど多くはありません。白ワインのアルコール度数は約12.5~13.5%、赤ワインは約13~14%、それより高いものはほんの少しだけです。

 

酸味があり、フレッシュさもあります。ヴォルネイとポマールは好調で、サントネイとマランジェも同様です。白では、Charles Taylor Wines のCharles Taylorが、ムルソーに近い産地のAuxey-Duressesを挙げて、こう述べています。

 

「品質においては、かつてないほど近づいている。Auxey-Duressesがほぼ同等の出来であることが多いのに、なぜムルソーを買うのか?」

 

「ペルナン・ヴェルジュレス」と、Liberty WinesのDavid Gleave MWは付け加えます。「そしてモンテリー。モンテリーは新しいサン・トーバンだ。そして、ピュリニー・モンラッシェとムルソー以外に残っているギャップを埋めるように、より小さな村が注目されつつある。ピュリニーを レストランで£200以下で見つけるのは不可能だが、他の村なら可能です」。

 

実際、優良な生産者のベーシックなブルゴーニュは、赤も白も、2022年ヴィンテージは驚くほどお買い得になります。少し前の有名な村のワインとほとんど変わらない値段です。

 

白ワインは一般的に、ブルゴーニュに求められる美しい石のようなミネラルを持ち、シャブリはしばしばシャブリらしい味がします。奇妙に聞こえるかもしれませんが、最近の暖かい年のシャブリは、コート・ド・ボーヌのような味をすることが多かったのです。今でもいくつかそういうワインもあります。しかし、コート・ド・ボーヌは、もっと南のどこかではなく、コート・ド・ボーヌの味がするのです。

 

ワイン造りとブドウ栽培は、気候の新しい現実に適応しています。全房発酵は現在、強く主張されるようなものではなく、単なる醸造方法の一つとして捉えられるようになりました。2022年には多用され、ワインは非常に派手なものになりました。Lignier-Michelot では今年、全房発酵の割合を減らしましたが、それは単純に全房発酵を行うことでタンク内の容量が30%増えるためで、十分なタンクスペースがなかったからです。Bichot では剪定を遅めにしていて、丸1カ月遅らせることもあります。ブドウ木は気候に適応しているのでしょうか?「我々が自分たちで適応しています」と、BichotのワインメーカーMatthieu Mangenot は言います。

 

新樽を少なくするのは、どこの国でも同じです。 「酸が低いと樽が前面に出ます」と彼は言います。「そして、果実味とフレッシュさを活かすために、瓶詰めを少し早めています。ここ数年で大きく変化しました」。

 

価格

つまり、ブルゴーニュワインを避けるべきとするものは何もなく、唯一の問題は価格となります。そしてそれは大きな問題です。

 

昨年の今頃の2021年ヴィンテージは大きな値上がりがありましが、今年は価格が安定しているように見えます。「安定」というのは5%程度の上昇を意味するのでしょうが、それは実質的には上昇とは言えないかもしれません。昨年の上昇ぶりからしたら、それも当然でしょう。

 

ブドウ畑を所有する者とブドウを買わなければならない者との間のギャップはかつてないほど大きくなっています。ブドウの価格は安定していません。2022年は約15%上昇しました。一部の業者はマージンを減らして、販売価格をほぼ横ばいにしました。ブドウは高値でもなかなか手に入りませんでした。ブドウを販売する生産者は、自分たちのワインも瓶詰めすることが多く、2022年は、非常に少なかった2021年ヴィンテージの在庫を補充しなければならなりませんでした。

 

価格が安定しているという考えは、需要があるトップ・プルミエ・クリュとグラン・クリュには当てはまらないでしょう。ここで市場の実態はどうなのかという問題に入りますが、その答えは「誰に聞くかによる」ということになります。ある商人は言います。「プルミエ・クリュとグラン・クリュの大幅な市場拡大はアジアが牽引した。これまでは非常に熱狂的だったが、今はプレミアムワインが非常に低迷している。中国が参入していないのが主な理由です。人々は日常的に飲むために購入しますが、もうコレクションはしません。すでに多くのワインを所有しており、これ以上必要なのかと自問し始めている。ボルドー2022でそれがわかりました」。

 

「中価格帯の市場では大きな盛り上がりを見せていますが、コレクターは以前と同じようには買っていません。ブルゴーニュのトップエンドの価格は狂い咲きしましたが、問題は、どれだけの量が飲み尽くされ、どれだけの量が市場に戻ってくるのか?どれだけのワインが個人の倉庫に眠っているのだろうか?倉庫は満杯です」。

 

しかし、Berry Bros & RuddのAdam Bruntlettに尋ねると、彼は正反対のことを言います。

 

「市場は好調で、特にプレミアムワインが好調です。私たちは、これまで以上に売れることを期待しています」。年配のバイヤーはもう十分だと思うかもしれないが、この価格を気にしない新しいバイヤーもたくさん参入してきています。価格は費用にすぎないのです。個人の顧客は、相変わらず最高の名前のワインを欲しがり、サントネイやコート・ド・ボーヌの南端といった場所にはあまり興味を示しません。また、レストランやホテルのグループ、プライベートクラブの中には、プリムールで買いたいというところも増えています。リーズナブルな価格でワインを確保する唯一の方法だからです」。

 

生産者は、個人顧客よりもレストランにワインを販売することを好むようになっています。というのも、その方がワインが人々の目にふれられ、飲まれるからで、ワインが個人的な保管庫に消えてしまい、また、おそらくは他の個人的な顧客だけに再販されるのを避けたいからです。ある商人は、ブルゴーニュの最高級ワインは10年後にはオークションにしか出回らなくなるのではないかと考えています。時計と同じです。「パテック・フィリップの時計を実際にいくつ見たことがありますか? このようなワインを買い、高級時計を買うのはしばしば同じ人たちです」。

 

また、別の商人は、ブルゴーニュの生産者は財政的に安定したため、後でリリースするために在庫を確保しておくことができると言います。それはもちろん、彼らが好む販売先であるレストランのためにもできると。つまり、彼らのワインはきれいに熟成してから飲まれるということになりますが、個人顧客への割り当てはさらに少なくなります。

 

土地の価値

ブルゴーニュにおけるブドウ畑の購入は、ますます多国籍企業に限定されたゲームになりつつあります。私たちは、家族経営の生産者が徐々に衰退し、より企業的なものになっていくのを目の当たりにしています。これは何年も前から予測されていたことで、今実際に起こっていることなのです。現在、グラン・クリュの畑の価格は、ボルドーのトップ畑の価格を上回っています。ある買い手候補は、非常に優れたブドウの木の数列を、1haあたり€8000万ユーロ($8800万)という価格で提示されました。「1本あたり€700~800の小売価格にしたとし全くペイできません」と彼は言います。

 

また、コート・ドールではなく、リュリーとメルキュレイに最近50haの畑を購入した Chanson のVincent Avenelは、現在のトップクリュでは、土地の価格とボトルの価格に相関関係はないと言います。そのような畑の価格では、利益を上げるには数世代かかるでしょう。「私たちは長期的にやっていきます」と彼は冗談めかして言います。「でも、そこまでの長期ではありませんよ」。

 

ワインに話を戻すと、2022年は若いうちから魅力的で、さらに熟成もするでしょう。赤の最上級プルミエ・クリュとグラン・クリュには適度な硬さがあり、熟成の時間が必要です。白の最上級ワインも長期熟成に耐える骨格を持っています。しかし、それ以下のワインは今がとても美味しい。待つ必要はないでしょう。とあるワインメーカーは言います。 「最近は、人々はワインを熟成させたがらない。家に持って帰る車の中で熟成させるのです。だから、ワインは若いうちから目を見張るようなものでなければならない。そして、熟成を望む人たちのためにも、年齢を重ねることができるワインであること」。

 

今年のワインは全てを兼ね備えているようです。値段はともかく。

 

 

引用元: Burgundy 2022: Perfection at a Price
この記事は引用元からの許諾をいただき、Firadisが翻案しています。
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