ブルネッロ2019: 歴史に名を残すヴィンテージ
- 2024.05.29
- ワインニュース
- 2019ヴィンテージ, ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ
2019年のブルネッロが店頭に並び始めました。ワインライターのTom Hylandがこの注目すべきヴィンテージの第一印象について語ります。
2019年のブルネッロ・ディ・モンタルチーノは特別なもので間違いありませんが、どの程度特別なのでしょうか?
「2019年について、過去20年間を見てもブルネッロにとって最高のヴィンテージだと確信しています」
そう話すのは、モンタルチーノの町の北西数マイルに位置するCastiglion del Boscoのワインメーカー、Cecilia Leoneschiです。「私は2016年よりも2019年の方が気に入っています」
ピエモンテのバローロやバルバレスコと同様、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは、2019年、2020年、2021年と、3年連続で「素晴らしい/間違いなく傑出した」ヴィンテージを享受しています。近年の歴史を振り返っても、モンタルチーノでは2006年と2007年、最近では2015年と2016年など、2年連続で傑出したヴィンテージと評価された例はいくつかありましたが、生産者が3年連続でこれほどの自信を持って語るのは珍しいことです。
2019年のブルネッロが市場にリリースされた今、私たちはようやくこの年のワインの特徴を考えることができます。
モンタルチーノの町のすぐ北にある、Le Chiuseの共同経営者であるLorenzo Magnelliはこの年の好ましい品質についてこう振り返ります。
「2019年は偉大なヴィンテージと言っていいでしょう。品質的にも豊かなヴィンテージでした。すべては乾燥した2017年のヴィンテージから始まり、ブドウ木はストレスを受け、2018年には収量が少なくなりましたが、少し雨が多かったので2019年のヴィンテージを成功させるための適切な条件が整ったのです」
Magnelliは、2019年は「収量も素晴らしく、気候的にも、特に春から夏にかけて非常に安定していた」と説明します。
興味深いことに、2019年のような恵まれた成長期は同時に心配の種にもなります。
「私の観点では、このようなヴィンテージでは常に注意が必要です。ブドウ木が多くのブドウ房をつけると、印象的な果実味を持つワインになる傾向にありますが、ファットなスタイルになりがちです」
Magnelliはそう話すと、そういった年はバランスを取るために、通常より1週間早くブドウを収穫し、“良好な酸味と飲みやすさを保つ”ようにしていると付け加えます。
モンタルチーノの生産地域南部、サンタンジェロ・イン・コッレ郊外にある同名のドメーヌを所有するRiccardo Talentiは「ブドウの成熟は素晴らしかった。春は定期的に雨が降り、良好な気温で、霜や雹もなく完璧なシーズンだった。収穫は大豊作で、量も品質も素晴らしかった。2019年はクラシックなブルネッロ、リゼルヴァ、スペシャルセレクションの生産ができました」と語ります。
Castiglion del BoscoのLeoneschiも驚くべきシーズンを振り返ります。
「収穫はかなり遅く、非常にクラシックなものでした。そのためタンニンの潜在量も多く、熟度は素晴らしく、とても完璧でクリーン、ゆっくりと進みました。そのおかげで2019年はリッチで非常に複雑、同時にとてもシンプルなワインに仕上がっています。驚くほど長いフィニッシュを持ち、素晴らしい熟成能力を見せています」
Leoneschi は2019ヴィンテージと、もう1つの評価の高いヴィンテージである2016年を比較し、このように話します。「2016年の力強さと豊かさ、エネルギーが非常に好きですが、2019年は活力とバランスがあり、それが異なる形でとても良く表現されています」
生産者、批評家、消費者は、2019年と2016 年のどちらがより優れたブルネッロのヴィンテージなのか、終わりのない議論を楽しむことになるでしょう。Leoneschiは前者を好んでいますが、Talentiはまだ決めかねています。
「2019年のブルネッロは、品質と量の点で2016年と比較できると思います。ただ私の心には2006年も浮かびます。非常にクラシックでクリーン。とてもエレガントな年でした。」
もちろん、2020年と2021年の今後のヴィンテージも非常に期待されており、2019年に近い品質を持ちつつ異なるプロファイル(2020年は口当たりがややライトで、2021年はもう少し力強いかもしれません)であることから、議論は今後数年間で異なる視点に移っていくでしょう。ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは依然として安定しており、需要もとても高いです。生産者たちはこの状況をしばらくの間利用し続けることでしょう。
個人的な感想
昨年11月にモンタルチーノで2019年のブルネッロを数十種試飲しましたが、共通する特徴として、理想的な熟度を持つ豊かな果実味、非常に良好なレベルの酸、特筆すべき持続性、優れた典型性を見出しました。ただ、明らかに様々なスタイルのワインが生産されており、とりわけ熟成に使用する木の選択がそれに影響を与えています。
最近では、熟成にバリックのみを使用する生産者は少数となり、多くの生産者は異なるサイズの樽を使用しています。(Banfi、Giodo、Fossacolleなど)。一方で、最も高く評価されているブルネッロの生産者の中には20-50hlのボッティ(大樽)のみを使用しているところもあります(Il Marroneto、Poggio di Sotto、Talenti、Canalicchio di Sopra、Biondi-Santiなど)。
特筆すべきは、2019年のブルネッロがどのブドウ畑や熟成容器から来ても、驚くべき調和を見せている点です。2019年のブルネッロはエレガントで、この地域の典型性を見事に表現しています。生育期にこのような美しい熟度を迎えた結果、ワインは果実味が前に出すぎてしまい、複雑さに欠けるのではないかという懸念もあります。
Magnelliはこれを理解しており、何をすべきかを知っています。「私にとって重要なのは、甘い果実の表現を抑えることです。このようなヴィンテージ、例えば2015年は果実の甘さが時に強すぎるため、ワインのフレッシュさやエレガンス、表現力が失われることがあります。そのため、2019年には収穫を早めに行うことでこれを抑えることが重要でした。」
引用元: Brunello 2019: A Vintage for the Ages
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