カリフォルニアのブドウ栽培農家、暑さとの闘い

カリフォルニアのブドウ栽培農家、暑さとの闘い

ブドウが猛烈な熱波に焼かれる前に、ワイナリーに運び込むレースが始まっています。


ワイン用ブドウを満載にしたトラックが、10月7日から北カリフォルニアのワイン産地中の道路を埋め尽くしました。ワイナリーは、過酷な熱波で干しブドウのようになってしまう前に、この貴重な積荷をタンクに入れようと急いだのです。

 

ナパ・ヴァレーのハウエル・マウンテンに畑を持ち、Burgess Cellarsで20年間ヴィンヤード・マネージャーを務めたJon Dodgeは、「この猛暑は、私がこれまで経験したどの年よりも、容赦なく長い期間続いた」と語りました。「多くの人々が猛暑のせいで苦しんでいる」。

 

毎年の収穫が異なることを農家は理解しているものですが、2023年と2024年のカリフォルニアのヴィンテージのコントラストは際立っています。昨年は11月まで続く長く涼しい成熟期で、(最終的には現実にならなかった)主な懸念は、収穫前に雨やその他の出来事がブドウにダメージを与えることでした。

 

今年は7月から暖かかったが、10月の第1週はカリフォルニア北部のいくつかの地域で史上最高気温の記録を更新しました。良いニュースは、夏の気温が高かったため、多くのブドウ、特にソーヴィニヨン・ブランのような白ブドウが、うだるような暑さに見舞われる前にすでに収穫されていたことです。また、ジンファンデルやグルナッシュのような暑さを好む品種も大丈夫でしょう。10月の頭にサンタ・バーバラ郡のグルナッシュのワイン造りのスペシャリスト、Angela Osborneと37℃の暑さの中で一緒に過ごしましたが、私が暑さにやられている間、彼女はブドウの品質、ブドウ木の抵抗力、さらには生育力について楽観的で意気揚々としていました。

 

あまり良くないニュースとしては、この州のヴィンテージの良し悪しは、ソーヴィニヨン・ブランやグルナッシュ、あるいは悲しいことにジンファンデルでは判断できないということです。これらの品種は市場での需要が低いからです。このヴィンテージの評価はカベルネ・ソーヴィニヨンにかかっており、その一部はまだ干しブドウになるリスクにさらされています。

 

Napa Valley Grapegrowers(ナパヴァレー・ぶどう栽培者団体)のエグゼクティブ・ディレクター、Caleb Mosleyは、「現段階で問題なのは、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランといった晩熟品種だ」と言います。しかしMosley は、糖度がすでに非常に高いため、10月7日から11日にかけてほとんどのブドウが収穫されるだろうと考えています。「ブドウ木が丈夫で、葉の保護をしっかりしていれば、水不足によるダメージは少ない。しかし、収穫を長引かせるメリットはありません」。

 

Spring Mountain Vineyardのブドウ栽培のコンサルティングをしていたRon Rosenbrandは、10月の熱波にはブドウさえも驚いたと言います。

 

「ブドウ木はちょっとしたパニック状態に陥った」とRosenbrand は語ります。「みんながブドウの成熟度にすごく満足しているのかどうかはわからない。通常、成熟の期間が長くなると、ブドウの風味が増す。しかし、もしタイミング良く摘み取らなかったとしたら、状態は混迷していく。どうなるのか興味深いところだ」。

 

Mosleyによれば、ブドウ栽培者はこの10年間、ブドウ畑の熱を下げるミストや、ブドウに大きな日陰を作る新しい仕立て方法など、熱波に対抗するための技術に投資してきました。

 

「ミストやスプリンクラーで灌漑を維持してきたブドウ畑は、かなり持ちこたえた」と、ブドウ畑のコンサルティングサービスVintuitionを運営するBrittany Pedersonは言います。「これはナパ・ヴァレーが、これまでに経験したことのない熱波であるとまでは言えません」。

 

緊張感高まる栽培

通常、ブドウ栽培者とワインメーカーは同盟関係にありますが、収穫期の熱波によって両者の関係に亀裂が入ることがあります。栽培者は将来の潜在的な問題を避けるために早めにブドウを収穫したがりますが、ワインメーカーは風味と糖度の向上のためにもう数日待ちたがることが多いのです。10月頭の収穫を待機にしたワインメーカーの中で、その決断を好まなかった栽培者と衝突しているケースがあります。

 

「近所のブドウバイヤーが来て、『青臭い風味が多すぎる 』と言ったんだ」とDodge は語ります。「そして数日後、バイヤーはまたやってきて今度は『ピークは過ぎた』だって、こんなことを言うんだ。水で希釈することができるだろうけど、そこからまた中途半端なワインを造ることになり苦しむだろう」。

 

Andy Beckstoffer がしばしば指摘するように、問題は、ほとんどの栽培者には収穫面積のエーカー単位ではなく、重量換算のトン単位で代金が支払われることです。だから、ワインメーカーは、ブドウ木にとって最善策を取ったり、安全な早摘みの決断をしたりすることに熱心ではないのです。また、ワインメーカーには基準に達していない果実を拒否する権利がありますが、その基準は(今年は問題にならないだろうが)最低糖度以外は曖昧です。

 

「未熟な果実を一房取り出してドライヤーにかけると、乾燥して糖分が上がる」と Dodgeは言います。「良いワインを構成する要素は何も記載がなく、契約書にはブリックス(糖度)しか明記されていません。ほとんどの契約では、他のことは規定されていません。ブリックス、つまり糖度の上限を超えると、第三者機関が来て、あなたはそのレベルに達していますと言われるようなものです。しかし、ワイン生産者達は、種にナッツのような香りがあるかどうか、皮がどう剥けるかどうかなど、様々なことから収穫時期を見極めるんだ。しかし、それを契約書に書くのは難しい。この時期、ヒステリックなワインメーカーがたくさんいる。待って、待って『わからない、まだ青臭いピーマン臭がある』と言っています。そして、完璧を求めすぎてダメになる」。

 

今年の収穫は、小売ワインの売上高がまだ横ばいである時期に行われています。Turrentine Brokerageは10月頭、ニュースレターを発行し、評価の高い2023年ヴィンテージのバルクワインがまだどれくらい入手可能かを詳しく紹介しました。Turrentineのニュースレターによると、カベルネを売る人は価格を下げる意向を示しているが、買い手はまだついていません。また、「ピノ・ノワールの需要は依然としてかなり低い」とあります。ブドウ販売の契約を結んでいない生産者にとっては、摘み取るコストに見合わないかもしれません。

 

「2024年に契約販売されなかったブドウはどうなるのだろう?人々がブドウ木に残しておくという分別があることを祈りましょう」とワインメーカーで栽培コンサルタントのCary Gottは言います。

 

しかし、カリフォルニアで53回の収穫を見てきたGottは、今回の収穫については楽観的です。

 

「つまり言い換えれば、非常に良いもしくは中程度で、とんでもなくひどい収穫ではないということです」Gottはこう語りました。

 

「本当に良いヴィンテージになるかもしれない。世紀のヴィンテージか?いや、そうではない。災厄のヴィンテージか?そうでもなさそうだ」。

 

引用元:California Grapegrowers Race to Beat the Heat

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