ブルゴーニュ2024、小さく美しく

ブルゴーニュ2024、小さく美しく

天候には恵まれなかったけれど、驚くほど良いヴィンテージとなりました。しかし、どれくらいのワインが市場に出てくるでしょうか。


異常気象は常態化しつつあり、それがワイン生産者にもたらす試練は猛威を振るい続けています。

 

この1年、ブルゴーニュの生産者たちは非常に苦労しました。前年の豊富な収量に反して、2024年は多くの困難がもたらされ、その結果、収量は平均を大幅に下回ることとなりました。

 

しかし、すべてが悪い方向というわけではなく、残ったブドウの品質は有望です。シャブリからマコネまでの7人のワインメーカーに、生育期、収穫状況、生産されるワインの予想について詳しく話を聞きました。

 

シャブリ

Domaine LarocheのワインメーカーRomain Chevroletは、2024年を「シャブリでは半世紀近くほとんど見られなかった」ような、他に類を見ないヴィンテージと評しています。雨の多い寒い冬が春まで続き、大きな霜害のリスクがありました。霜害が一番の心配でしたが、Chevrolet は、彼のチームが9日間(4月16日~24日)連続でブドウ畑にロウソクを灯し、被害を未然に防いだことを明かしました。

 

「前例のない雹の嵐と記録的な洪水が次々とやってきた春でした。そして、今年の前半に降った大雨との戦いもありました」と、Chevroletは語ります。

 

シャブリの他の地域では、Stephanie Michelet が、自身の名を冠したドメーヌで2haを霜で失い、5月1日には3haを雹で失ったと述べています。
Micheletも同様に、病害のリスクは栽培期間全体を通して高いままで、オーガニックやサステイナブルな方法でワイン造りをしている人たちにとっては、さらに大きなリスクとなったことを指摘しています。

 

Chevrolet によれば、当然のことながら、プルミエとグラン・クリュが最も大きな被害を受けたとのことです。このような小さな区画の方が、予測不可能な天候の影響を受けやすいのです。「2024年、セラン川の右岸はより大きな被害になり、グラン・クリュはベト病、Fourchaume はひどい雹害に見舞われました」と彼は言います。

 

Michelet によると、シャブリの平均的な生産量は1haあたり25hlで、2021年より10hlほど少なくなりました。全体として、Michelet は彼女のドメーヌの予想生産量の80%を失いました。

 

コート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌ

ブルゴーニュ最大級の畑を所有するDomaine Faiveleyも、特にコート・ド・ニュイで繰り返し起こる現象として、大雨を挙げています。

 

「4月(9日間降雨)、5月(23日間降雨)、6月(17日間降雨)は、累積降雨量の記録を更新しました」とチームは話します。1959年以来、2024年は記録上4番目に雨の多い春だということです。

 

同様に、Domaine AF Grosの Caroline Parent は、彼女のブドウ畑は、特にサヴィニーの区画で局所的な霜の被害を受けたと述べています。

 

「この春の霜の影響を当初は過小評価していたが、予想以上に深刻なものだった」と彼女は言います。6月に降った大雨で花ぶるいが発生し、ドメーヌの全区画の収量に影響を与えたことを思い起こします。

 

「畑では、2024年ヴィンテージはこの病害との戦いが続き、17回以上の対策介入を行った」と彼女は言います。

 

Pierre Meurgeyも同様の作業を成し遂げ、2024年はブルゴーニュで記録上最も湿度の高い年のひとつであり、(有機栽培で)週に1~2回のスプレー散布が必要だったと述べています。

 

「これはほとんどのワイン生産者に当てはまることだが、我々のような有機ブドウ栽培者にとっては、さらに高いプレッシャーだった」とMeurgey は言います。雨のため、作業でブドウ畑に入るのが難しかったのです。春から初夏にかけての気温は平年を下回ったものの、7月と8月は日照条件が良かったのでブドウはゆっくりと優雅に成熟しました。Parentは、これをこのヴィンテージにおける「救い」と表現します。

 

Meurgeyは、斜面の中腹に植えられた区画、つまり特に水はけが良く、土壌が浅く、石灰岩が多い区画は、粘土質の多い場所に根を張った区画よりも、少し被害が少なかったと指摘しています。

 

コート・シャロネーズ/マコン

Domaine Frantz Chagnoleau のエノログであり、 Les Héritiers du Comte LafonのワインメーカーであるCaroline Gonは、降り続く雨に加えて、寒冷な4月だったため、大半の区画が霜の被害を受けたと指摘しています(Domaine Frantz Chagnoleauの全畑で約5~20%)。

 

同様にMeurgeyは、マコネの彼の所有する区画はコート・ド・ニュイよりもベト病の被害が少なかったものの、6月の雹はプイィ・フュイッセとサン・ヴェランのいくつかの畑で約20%の損失を含む大きな被害をもたらしたことを明かします。

 

コート・シャロネーズでは、Dureuil-Janthial のVincent Dureuil が、今年はなんと16回もの有機農法的処置を行ったことを明かしています。

 

春に雨が降った後、Gonはブルゴーニュ南部で多くの花振るいやミルランダージュが発生した原因として、湿度の高い夏を原因に挙げ、それが定期的な有機農法的処置(6月15日から8月15日まで週2回)を実施することにもつながったと説明します。

 

「ブルゴーニュ全域で重要だったブドウの房に空気を通すための大規模な作業も実施した」と彼女は言います。ありがたいことに、8月には気温が上がり、乾燥したコンディションになったので、残ったブドウは収穫までの間に適正な成熟度になりました。

 

収穫状況

Michelet は、2024年のシャブリの収穫について、空のタンクが多くなり、果汁量が乏しい、悲しいものだったと表現します。

 

「霜や病気によってブドウの成熟度がバラバラだったため、収穫の時期を決めるのがとても難しかった」と彼女は言います。

 

しかし、果実が圧搾されると、残った果汁はアロマが豊かで複雑で、エピヌイユのピノ・ノワールは特によく熟したとMicheletは言います。Domaine Larocheでは、 Chevroletが9月19日にLes Butteauxで収穫開始の合図を出し、10月1日に終了しました。「2024年は2023年よりも収穫量が少なく、半分しか収穫できなかった。でもそんなに悪くはない!」と彼は言います。

 

AF GorsのParentのコート・ドールの収穫は9月18日に開始され、4日後の雨の再開前に両セクション(コート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌ)で収穫が完了しました。ワインの一貫性と品質を維持するためドメーヌは、今年はブドウを購入しませんでした。買いブドウがドメーヌの品質要求を満たすかどうかの保証がなかったからです。

 

混乱した生育期でしたが、Meurgey によれば、開花から100日後に収穫することができ、ブドウのフェノール熟度がピークに達したことを確認できたそうです。

 

Faiveleyでは、9月11日にコート・シャロネーズのジヴリーで収穫が開始され、コート・ド・ボーヌでは9月16日に最初の収穫が行われました。興味深いことに、同日、珍しい天候パターンがこの地域に新鮮な空気をもたらしました。

 

「9月16日から19日にかけて、暖かい北風が吹くという珍しい現象が観察され、その結果、果汁が凝縮された」とチームは語ります。最終的に、Faiveleyのグラン・クリュ区画はすべて9月18~22日に収穫され、マルサネとジュヴレ(村名区画)の収穫は24日に終了しました。

 

ブルゴーニュ南部では、Dureuil とGonが9月16日に収穫を開始し、Dureuil は赤ワインの収量が非常に少なかったとしていますが、他の地域ほど急激な減少ではありませんでした。

 

「ブルゴーニュ北の地域と比べると、私たちは他の生産者たち、特にコート・ド・ニュイよりは少し恵まれていました」とDureuil は言います。

 

収穫開始から10日で収穫を終えたGonは、潜在アルコール度数12.2~13.5%といった平均的な成熟度と、酸と糖分のしっかりしたバランスがあると言及します。

 

期待すること

困難な年にもかかわらず、インタビューに応じたほぼすべての生産者は、生産されるワインの品質について楽観的な姿勢を崩していません。

 

「2024年は2021年と同様に、シャブリのテロワールの高い表現と素晴らしいミネラルが期待できます」とMicheletは言います。Chevrolet も同意見で、「フレッシュでバランスが取れており、際立った塩味がある」とワインを評しています。

 

コート地区について、Parentは全体的に70%の減産を明らかにしていますが、残ったワインは驚くべき品質とバランスの取れた酸味があり、全房発酵が功を奏したと説明しています。Meurgeyは50%の減産を挙げ、熟度と酸味の 「古典的な 」バランスと、13%前後の適度なアルコール度数について述べています。

 

「セラーではゆっくりと調和の取れた進化を遂げ、気候変動が起きる前の、美味しく複雑な風味の典型的なブルゴーニュワインになることが期待される」と、彼は言います。

 

畑での困難とは反対に、醸造所では概して楽観的な状況だったとGonは語ります。

 

「発酵はとても順調に行われ、ワインはすでに凝縮し、フレッシュで、美しいアロマを放っている」と彼女は言います。「2024年はブルゴーニュの古典的なスタイルの美しいヴィンテージになるだろう。フレッシュ&ピュアで、5~6年は熟成するだろうが、もっと長く楽しめるアペラシオンもあるでしょう」。

 

Chevrolet も同意見で、このワインは2022年や2023年とは異なるが、熟成のポテンシャルがあり、良い意味でのノスタルジーを感じさせるワインだと表現します。「2024年は典型的な昔ながらのシャブリのスタイルで、以前我々が飲んで恋に落ちたようなワインです」。

 

引用元:Burgundy 2024: Small is Beautiful

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