Jacquesson(ジャクソン)
- シャンパーニュ
- グラス, コルク, シャルドネ, シャンパーニュ, スパークリングワイン, ソムリエ, テロワール, ピノ・ノワール, ブルゴーニュ, 哲学, 樽, 温度, 熟成, 生産者, 発酵, 香り
200年以上の長い歴史と伝統を誇り、グラン・クリュ アイ村、本拠地のあるディジー村などに自社畑を中心とした52haの畑から類稀なるシャンパーニュを生み出すジャクソン。
ナポレオン皇帝が愛し、皇帝自身の結婚式にも振舞われたという逸話を持ち、その最高の栄誉を賞され皇帝よりメダイユ・ドールを献上された。
高級シャンパーニュメゾンのクリュッグの創始者であるジョセフ・クリュッグは創業前、ジャクソンのセラーで修行をした後、クリュッグを設立した。
華々しい歴史を持つネゴシアン・マニュピュランでありながらも、近年ジャクソンは契約畑を減らし、あえて規模を縮小してより1本のワインのクオリティにこだわっている。
「ワインはセラーからではなく、畑から生まれる」という考えの下、栽培責任者は収穫時には全ての畑をくまなく見て回り、厳しく指示。
醸造においては、現在では珍しい旧式の垂直プレス機を使用し、より繊細でクリアな果汁を得る為に丁寧に圧搾。
自社シャンパーニュの為に使用するのは一番搾りのみで、他はネゴシアンに売ってしまう。
ジャクソンのシャンパーニュ造りに対するフィロソフィーは、長い歴史と共に飛躍の時を迎え、今や世界に認められる存在となった。
世界の頂点を極めたソムリエ達が選ぶ「世界No.1ソムリエが選ぶ2002年度ワイン・ガイド」において、No.1メゾンの座を射止めて以来、「ゴー・ミヨ」2005年版では、エグリ・ウーリエやジャック・セロスらと並んで2つ星を獲得するなど、数々の専門誌より高い評価を受けている。
目次
■歴史
1798年 設立
メミー・ジャクソンがシャロン・シュル・マルヌにシャンパン・ハウスを設立。
ちょうどその頃、ナポレオン皇帝が偉大な指揮官として華々しい外線を繰り返しており、ジャクソンの造るシャンパーニュが目に留まった。
たちまちそれは彼のお気に入りとなり、東欧への遠征のたびにジャクソンのシャンパンを買い入れるためわざわざシャロン村に立ち寄るほどだった。
皇帝の肩入れもあり、ハウスは急速に躍進したちまちトップメゾンの仲間入りを果たした。
1844年 ミュズレの開発
メミーの息子であり才能あふれた2代目のアドルフが会社を継ぐと、数多くの新技術を開発した。
その最たる一つがミュズレである。
今やシャンパンには欠かせないミュズレを開発したのは実はジャクソンなのである。
最初にシャンパンが製造されていた時代は、油布と蝋で栓が封じられていた。
しかしこの方法はストッパーの吹き込みやワイン漏れの防止として不十分であったため、その後紐でコルクを留める抑制方法が開発された。
そして1844年、アドルフによって関鋼線を使用したミュズレの原型が出来上がった。
その後は、強度が高まるように捻られた鋼線と、加圧下のミュズレを容易に外せるように緩められる小さいループ状の留め金という2つの改善点がほどこされ、150年以上たった現代でも世界中のスパークリングワインに使用されている。
1867年~1875年 衰退期
1867年には年に100万本もの販売を記録し、当時のシャンパン業界でも中核を担うハウスとなっていた。
しかし1843年セラー・マスターを務めていたヨハン・ヨゼフ・クリュッグが独立、1875年にはアドルフが亡くなるとジャクソンは徐々に衰退に向かっていった。
1920年~ シケ家による復興
ワイン商のレオン・ド・タシニーに売却されると、シャロン・シュル・マルヌのセラーからランスに本拠地を移。
ジャクソンがその名声を取り戻すのは1974年にシケ家によって買収されてからの事だった。
シケ家はまずメゾンをランスからディジーへと移転。
ジャン・シケの指導の元、ジャクソンの品質は向上し当時の名声を取り戻していった。
1988年から、現当主でもあるジャンの息子、ローランとジャン=エルヴェ・シケ兄弟が更なる品質向上を目指して除草剤の不使用やテロワールに基づく哲学も導入。
1990年代に入ると一貫性のあるシャンパーニュを目指したスタンダード・キュヴェの生産を止め、ヴィンテージの特徴を活かしたシャンパーニュの生産を決意。
2008年 700シリーズの誕生
安定した味わいよりも、秀逸な品質に重点を置く方向に切り替え、ヴィンテージの特徴を反映させた独特な個性を持ったワインを造ることに決定。
そうして生まれたのがキュベ700シリーズであった。
シリーズ最初の作品はキュベ#728で、この数字はハウスが創立してから728番目にブレンドされたキュベであることを示している。
728は2000年ヴィンテージのブドウを使用しており、快活でよく熟した前向きな味わいはすぐさま爆発的な人気を獲得した。
#728からスタートした700シリーズは、それ以来総生産量の96%を占めるようになった。
多くのメゾンはプレスティージュ・キュヴェやミレジメといったラグジュアリーキュベのために最も質の高いブドウを厳選するが、ジャクソンでは700シリーズの完成に向けてすべての作業は行われ、余力があれば他のキュヴェを造る。
「毎年1つだけ最高のものを」という哲学の下で生まれる700シリーズこそ、ジャクソンが目指すものであり、メゾンを代表するキュヴェなのだ。
レイトリリースを始めたのはジャクソンが最初
また、2003年以降少量生産されているラグジュアリーキュベでは、単一区画、単一畑のシャンパンを他社に先駆けて造り話題を呼んだ。
現在は人気のあるレコルタン生産者(RM)がこういった手法でシャンパンを造っており、ジャクソンがおよそメゾンらしくないと呼ばれる最たる所以はこういったところにある。
■フィロソフィー
シケ氏は”偉大なワインを造るための3つの条件”について以下のように語る。
・テロワールが素晴らしいこと
・一生懸命に働くこと
・満足しないワインは絶対に使わないこと
これらの条件を満たすために、ジャクソンは契約畑を削減。
その結果、自社畑の比率はなんと80%。
ほぼ自社畑で賄っている上、現在契約している農家の畑は所それぞれの有畑と同じ村にある。
大手メゾンの多くがマスト(搾り果汁)を買い付けるのに対し、100%自社プレス。
そのために幾つもの契約畑を手放したのだ。
自らがコントロールできる栽培農家からのみブドウを購入し、高品質を徹底するという強い意志がそこにあった。
シャンパーニュ委員会によって定められているブドウの収量は上限15t/ha。
収量の少ない年は18~20t/haまで引き上げられる事もある。
ジャクソンの収量はつい最近まで12t/haだったが、現在は10t/ha。
搾汁においても規定で定められた4,000kgのブドウから得られる2,550Lの果汁のうち、ラ・キュヴェ(一番搾り)のみを使用。
その中でも埃などが多いと言う理由から、最初の50Lは捨ててしまう。
他の地域よりはるかに収量が多いシャンパーニュ地方において、ジャクソンではブルゴーニュのグランクリュ等で見られる平均的な収量まで抑えていた。
さらに近年の数値は、トップ・ドメーヌのモンラッシェなどに匹敵するまでの低収量となっている。
まるでRMのように細部まで重視した畑にこだわるジャクソンだが、ワイン造りにおいてもその特殊性が際立つ。
プレスの段階で通常添加するSO2は僅かな量しか用いず、主にドライアイスで代用。
時間を短縮させる酵素による清澄ではなく、時間をかけてデブルバージュを行い、樽での発酵後にシュール・リー状態で長期間熟成。
どちらもシャンパーニュ地方では珍しく、ブルゴーニュでよく見られる手法である。
「まずワインとして美味しいものを完成させる」とシケ氏が語るように、2次発酵前の熟成は異例の約12ヶ月。
温度が上がっても、ガスが抜けてからでも美味しく飲めるジャクソンの秘密はここにあるのだ。
唯一無二のシャンパーニュ造りを独り貫くジャクソン。
最高品質を保つためにはメゾンの規模すら小さくする。
こだわりぬいて生産されるただ1つのシャンパンは、ぜひ使われているブドウの年のことを思いながら飲んでいただきたい。
■ラインナップ
〇Cuvee #700 Series(700シリーズ)
品種 | |
畑 | グラン・クリュ:アイ、オワリィ
プルミエ・クリュ:ディジー、オーヴィレイ その他:ラ・グランド・ヴァレ・ドゥ・ラ・マルヌ |
ドサージュ | |
メゾンの画一的なスタイルを追求するのではなく、ワインのヴィンテージの個性を最良に体現した造り。Cuvee734より、瓶熟期間をさらに1年長くし、最低4年間寝かせてからデゴルジュしてリリース。また、2003年以降、ヴィンテージワインは「シングル・ヴィンヤード・コレクション」に特化し、一般的な「複数クリュのブレンド」によるヴィンテージ・シャンパーニュの生産を中止。それにより、かつてヴィンテージ用に使っていた上級の葡萄を、惜しげもなくNVであるこのCuvee#700にブレンドすることで、クオリティとしては、プレステージ・シャンパーニュに匹敵する<最上級のノン・ヴィンテージ・シャンパーニュ>に昇華した。 |
〇シングル・ヴィンヤード・コレクション
Avize Champ Cain(シャン・カン)
品種 | シャルドネ 100% |
畑 | アヴィズ |
ドサージュ | 2.5g/l |
1962年に植樹されたアヴィズの南向きの平地。単一ヴィンテージ。土壌は粘土石灰、砂質。浅い表土ゆえの、強烈なミネラルが特徴。アヴィズらしい厚く濃密な果実、潔く切れ込むような酸、ミネラルの存在感が光る。 |
Dizy Corne Bautray(コルヌ・ボートレイ)
品種 | シャルドネ 100% |
畑 | ディジー |
ドサージュ | 0g/l |
セラーがある「グランド・ヴァレ・ドゥ・ラ・マルヌ」を臨むディジー村の南西向き急斜面。単一ヴィンテージ。1960年に植樹された樹齢50年以上のブドウを使用。チョーク層上に、小石が多く混じる粘土質泥灰土の畑。精密な酸、シャープなミネラルと共に、充実した果実味。 |
Ay Vauzelle Terme(ヴォーゼル・テルム)
品種 | ピノ・ノワール100% |
畑 | アイ |
ドサージュ | |
1980年に植樹されたブドウからなる南向き斜面を持つアイ村の最上区画0.3ヘクタール。チョーク層上に、小石が多く混じる石灰岩土壌。熟して濃密な果実味と清明なミネラル。日本への入荷はほんのわずかの「幻のキュヴェ」。 |
Dizy Les Terres Rouges Rose(レ・テール・ルージュ・ロゼ)
品種 | ピノ・ノワール100% |
畑 | アイ |
ドサージュ | 2.5g/l |
1993年に植樹された、ディジー村に所有する僅か1.35haの畑。2004年ヴィンテージ迄、同じディジー村のピノ・ムニエを70%以上ブレンドしていたが、樹齢が高まった2007年より、ピノ・ノワール100%で造るこだわり。 「食事を共にしたくなるような、黒ブドウの風味を生かしたロゼを造りたかった」というジャクソンの想いから生まれたのセニエ式ロゼ。良年のみごく少量リリースされる。淡くフレッシュなロゼとは異なり、「黒いグラスに入れても、香りと味わいでロゼとわかる造り」と当主が語るほど、純度の高い赤系果実が表情豊かに広がり、ディジーらしい精妙さとフィネスを併せ持つ。2012年以降はこの畑からロゼではなく、新たなブラン・ド・ノワールを造り始めたので、2011年がラストヴィンテージとなる。 |
■生産者情報
本拠地 | ディジー村 |
生産本数 | |
栽培方法 | リュットレゾネ |
所有畑 | アイ、アヴィズ、ディジー |
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