Arlaud(アルロー)
モレ・サン・ドニといえばDujac、Ponsot、Perrot Minotといった大御所たちの存在感が強いが、水面下で着々と進化し続ける優れたドメーヌがアルローである。Lignier-MichelotのヴィルジルやHubert Lignierのローランと並んで最上レベルのモレ・サン・ドニを作るとニール・マーティンは太鼓判を押している。
目次
歴史
ワイナリーの歴史は1942年、アルデッシュ出身のジョセフ・アルローとブルゴーニュ出身のルネ・アミオの結婚によって幕を開ける。ルネはブドウ農家の生まれだったため、結婚時には素晴らしい畑の数々が持参金として与えられ、これがドメーヌの基盤を作った。その後、1966年に14世紀設立の歴史あるセラーを手に入れ熟成庫として使用した。(このセラーはアルローのモチーフとして現在もラベルに描かれている。)
40年以上にわたってワイン造りに励んだ二人は1983年に息子エルヴェにドメーヌを引き継いだ。二代目となった彼は、妻ブリジットと共に畑を買い増し、さらに有機栽培への取り組みも行った。エルヴェの息子シプリアンは1998年からドメーヌに参画し父とともにワイン造りを学んでいった。その後2003年にモレ・サン・ドニに新しく醸造施設を作り、以降ワインメイキングは全てここで行われるようになった。エルヴェの引退に伴ってシプリアンは2013年に三代目当主となった。一方、シプリアンは2012年から借り畑でネゴシアン部門のワインを作っており、2019年にはCyprien Arlaudに名義を変更してワインをリリースしている。
畑
15haの畑を所有する。ドメーヌの顔となるのは4つの特級で、モレにはClos de la Roche(0.4ha)とClos Saint-Denis(0.17ha)を持つ。前者は斜面下部のリューディー Les Mochampsに区画を所有しており、後者は オリジナルのリューディーClos St Denisに二区画を所有する。シャンボールにはBonnes Mares(0.2ha)を持ち、畑の中央付近に上から下までひとつながりの区画を持つ。異なる土壌タイプ(テール・ブランシュとテール・ルージュ)がブレンドされるためより複雑な味わいが楽しめる。最後はジュヴレのCharmes Chambertin(1.1ha)で、区画はMazoyeresにある。
8つある1erのうち半分はモレ・サン・ドニにあり、1er Aux Cheseaux、1er Les Ruchots(0.7ha)、1er Les Blanchards(0.3ha)、1er Les Millandes(0.4ha)となっている。シャンボールには3つ – 1er Les Chatelots、1er Les Noirots、1er Les Sentiers(0.23ha) – 所有しており、残りはジュヴレの1er Cru Aux Combottes(0.43ha)となる。
ヴィラージュはMorey(計1ha : En sevreyとClos Solon)、Chambolle(計1ha : Les Buissiere、Les Herbues、Les Chardannes、les Gamaires)、そしてGevrey(計1ha : Les SeuvreesとLa Justice)となる。
広域はBourgogne Rouge Roncevie(5ha)とPassetoutgrainsとなり、少量生産している白はHautes Cotes de Nuits(0.2ha)とAligoteの2キュヴェとなる。
栽培
アルローといえばとにかく献身的な畑作業で知られる。1998年から除草剤の使用をやめ、2000年には殺虫剤も使わなくなった。2004年にはオーガニック栽培にシフトし、さらに同年1erと特級で馬による耕起も開始した。従来の度重なるトラクターの使用は土をコンパクトに踏み固めてしまうが、重機よりも軽い馬を使うことでこの圧迫を軽減させる狙いがあった。その結果、土の固さがほぐれて地中への水分浸透率が向上し、土が柔らかさを取り戻した。2009年からはビオディナミの導入を開始し、2014年にはモレ・サン・ドニで初となるビオディナミ認証を取得した。近年では特に斜面下部で粘土の多いヴィラージュの畑でカバークロップを取り入れて土を柔らかく保つようにしている。
醸造
セラーに到着したブドウは3度の選果を通して徹底的に品質が管理される。基本的には除梗(破砕はしない)だが、2008年から一部で全房を取り入れ始めた。数日間の低温浸漬後に天然酵母による発酵が始まり、抽出はルモンタージュがメインでピジャージュはめったに行わない。2005年頃からフレッシュさとテロワールを表現するために新樽率を下げ始め、現在は特級でも1/3を超えることはない。16-18ヶ月の樽熟成が終わったらワインをタンクに移して4-5週間休ませ、無濾過・無清澄で瓶詰めする。
味わい
アルローのスタイルは「透明感」や「赤系果実」ではなくダークチェリーやダークベリーなどの黒系果実が主体で、濃度があり瓶熟成が必要なストラクチャー・タイプのワインだと言える。以前は一部のワインで樽感が強く感じられたが、全房を取り入れて新樽を控えるようになったことで果実味がクリアになり味わいの焦点がはっきりと定まるようになった。一方でモレらしいやや陰鬱な土っぽさやスパイスに由来するセイボリーなノートがしっかりと複雑さを感じさせてくれ、ジュヴレやシャンボールでは砕いた岩のミネラルやヴァイオレットがはっきりと感じられる。
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