British Columbia(ブリティッシュ コロンビア)

ここ2~30年で頭角を現した注目産地

対抗馬のオンタリオ州よりも年による品質差が少なく、

ワインはより完熟した酒質の強いスタイルとなる」

ブリティッシュ・コロンビア州(BC)はカナダ最西端にある州で、太平洋沿岸に位置する。雨がちな島々から砂漠のように乾燥した内陸エリアまで多様な地形が広がるため、品種の幅も広くシャルドネ、ピノ・ノワール、リースリングにカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどが見られる。

BCのワインの歴史は19世紀中頃、宣教師たちが聖餐用ワインのためのブドウを植えたことに始まる。しかし、ワイン産業自体はアメリカとの自由貿易協定が締結される1988年になるまで、下火であった。1988年以降、もともと植わっていたヴィティス・ラブルスカ種やヴィティス・リパリア種が引き抜かれ、代わりにヴィティス・ヴィニフェラ種が植えられて栽培家たちは転換期を迎えた。その後、BCのワインの品質を管理する団体(British Columbia Wine Institute)が1990年に設立され、オンタリオ州で導入済みの品質管理システム(Vintners’ Quality Alliance)がこの地にも適用された。

2000年当初、BCはワイン生産量と評判でオンタリオ州に大きく引き離されていた。しかし、現在では少なくともオンタリオ州と同等にまで達してきている。ワイナリー数は1990年にわずか17しかなかったが、2018年には300近くまで増えており、年によってはオンタリオ州とほぼ同じぐらいのワインを生産する。白と赤はほぼ同数の量が作られており、スパークリングは瓶内二次発酵のものが台頭してきている。また、アイスワインの生産は少なく、平均でオンタリオ州の1/4以下程度である。

 

テロワール

オンタリオ州の正反対に位置するBCは約4200haの畑を持つ。主に2つのエリアに分けることができ、一つは太平洋沿岸にある少数の畑で冷涼な海洋性気候を持つ。もう一つがメインとなるエリアで、400kmほど内陸に入った場所である。畑は山々に囲まれているため海からの影響を受けず、大陸性の気候を持つ。BCの畑はオンタリオ州よりもさらに北に位置している(北緯48-51°)ため、生育期は短いが、日がより長い。とくに内陸地では暑い昼と冷涼な夜が大きな日較差を生み出す。このおかげでブドウは高い酸を保ちながらも完熟したフルーツのフレーバーを生成できる。

BCの中心部は内陸にあるオカナガン・ヴァレーで、ヴァンクーヴァーの東320kmほどに位置し、州内の約85%のブドウが植わる。長さは250kmに渡っており、冷涼な北部から砂漠のように暑い南部まで多様な気候が見られる。このためいくつかのサブリージョンも存在する。地形は湖にそって展開しており、湖水が夏の暑さと冬の寒さを調整してくれる。特に重要なのが畑エリアの北半分を占める最も深いオカナガン湖で、灌漑用の水分供給としても大きな役割を果たしている。この地の年間降雨量は南部で300mm、北部で400mmと少なく、灌漑が必須となっている。オカナガン・ヴァレーの土壌は、大部分が氷河の分解物。とりわけロームが中心で南に向かうにつれて砂が多くなる。

北部はより冷涼品種に向く環境となるためピノ・ノワール、ピノ・グリ、リースリング、シャルドネ、ゲヴュルツトラミネールなどが見られる。ワインはフレッシュでクリスピーなスタイルとなる。一方でより暑い南部では黒ブドウ品種に適しており、メルロー、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨン、さらにはシラーまでもが見られる。ワインはフルボディで完熟果実のフレーバーを持ち、アルコールは高いもののそれを支える酸もしっかりと残っている。南部の中でもとりわけ暑く乾燥しているのがアメリカ国境にまたがるオソイヨーズ(Osoyoos)地区で、この地の砂質土壌からは芳醇で力強いフルボディのワインが生まれる。ここはカナダで最も暖かく、かつ唯一の砂漠地帯で、カナダにおけるパワフルワインのメッカと言える。BCワインの約40%がここから生まれている。

 

味わいの特徴

黒ブドウはメルローが最も植樹されており、オンタリオ州のものに比べると、よりフルボディでよりタンニンが多く、高アルコールで、完熟果実のフレーバーが特徴となる。ピノ・ノワールもBCの方がより完熟していてフルーティー、比較的タンニンが豊富なスタイルだが、北部の冷涼エリアからはエレガントなものも生まれる。南部の温暖エリアでは、カベルネ・ソーヴィニヨンから力強い果実味に高い酸とタンニンを持つワインが生まれる。かなりの熟成のポテンシャルがあり、オンタリオ州のものと比べて年によるムラがなく、品質が非常に安定している。

白ブドウではピノ・グリが最も植樹されており、スタイルはドライかオフドライが多い。ミディアムボディで高い酸を持ち、メロンや洋ナシのフレーバが特徴となる。しかし、中にはより軽やかなピノ・グリージョっぽいスタイルのものもある。シャルドネは幅広いスタイルのものが生まれているが、最良のものはミディアムボディで、オンタリオ州に比べてより完熟したストーンフルーツのフレーバーが出る。

BCワインの品質は総じて高く、中には傑出したものもある。リースリング、シャルドネ、ボルドーブレンドなどのプレミアムなワインでは小売価格一万円を超えるものも見られる。重要な生産者はル・ヴュー・パン(Le Vieux Pin)やミッション・ヒル(Mission Hill)など。BCのワインはまだ日本ではあまり多く見かけないが、今後注目すべき産地であることに間違いない。

 

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