Ontario(オンタリオ)

「カナダの代表産地でありアイスワイン界の王者

甘口だけでなくスティルワインにおいても

ポテンシャルの高さを証明している」

オンタリオ州はカナダで最も有名かつ最も多くのワインを生み出している産地である。約7000haの畑を有し、ざっくりカナダワインの半分がこのエリアから来ていると考えて良いだろう。ワイン産業の中心は五大湖のエリー湖とオンタリオ湖周辺で、多くの畑がここに集まっている。

スティルワインは赤白ほぼ同じ割合で作られており、主要品種はリースリング、カベルネ・フラン、・ノワールである。

しかし、この地を世界的に有名にしているのはヴィダルやリースリングから作られるアイスワインである。太陽に恵まれた夏の後には極寒の冬が続くが、この気候がアイスワインの生産に理想的な環境を生むのである。世界でもここほど多くアイスワインが作られているところはなく、こうした甘口の主な輸出市場は中国やアメリカとなっている。

 

畑は主に2つの湖のそばに見られ、水の効果によって極端な大陸性気候が緩和されている。冬は−20℃にもなりうるため、湖から離れすぎるとブドウは冬を生き延びることができない。土壌は多様で、粘土と砂に砂利や岩が混ざっているものや、湖の周辺では石灰岩が多く見られる。

オンタリオ州のワイン産地は主に3つのエリアに分かれており、東部のプリンス・エドワード・カウンティ(Prince Edward County)、最南端のレイク・エリー・ノース・ショア(Lake Erie North Shore)、その中間に位置するナイアガラ・ペニンシュラ(Niagara Peninsula)である。

特に重要なのはナイアガラ・ペニンシュラで、ここは州最大のワイン産地で約80%もの畑を有する。地形はオンタリオ湖のほとりから、標高100m程の北向きの石灰岩の断崖まで広がる。ほとんどの畑は断崖上部のテラスや傾斜地に位置しているが、一部は湖のほとりの平地や断崖を登りきったプラトー部分にも見られる。

この断崖と湖こそがテロワールの鍵を握っている。オンタリオ湖は五大湖で最も深い湖の一つで、これは春に水が温まるまでの時間、秋に水が冷えるまでの時間がより長くかかることを意味する。つまり気温を調整してくれるのだ。また湖と断崖は空気循環も助けてくれる。冬の間は湖から離れた陸地はすぐに冷えるが、この冷気は重力の作用によって断崖の坂を下ってくる。と同時に、湖から立ち上る比較的暖かい空気が内陸に流れ込んでいく。冷気が断崖を下るにつれて、上部は暖かい空気が占めていく。こうして湖と断崖は冬には暖かい空気を、夏には冷たい空気をそれぞれ循環させてくれるため、これがブドウの生育期間を引き伸ばし、病害菌や霜のリスクを低減してくれる。

ナイアガラ・ペニンシュラはエリア内にさらに2つのサブ・リージョンを含んでおり、ナイアガラ・エスカープメント(Niagara Escarpment)とナイアガラ・オン・ザ・レイク(Niagara-on-the-Lake)と呼ばれる。

ナイアガラ・エスカープメントは、石灰岩の断崖部分(テラスと緩やかな斜面)をカバーするが、湖畔の平地エリアや断崖の頂上部のプラトーは含まれない。標高と湖の冷気が合わさることで最も寒い場所となり、ワインはとりわけ高い酸を持つ。シャルドネとピノ・ノワールから高品質なワインが生まれるが、カベルネ・フランとリースリングも素晴らしいパフォーマンスを発揮する。

一方、ナイアガラ・オン・ザ・レイクは、オンタリオ湖に近い比較的平坦なエリアをカバーする。全体的に断崖の斜面部と比べて少し温暖である。また、湖に近いため夜間の急激な気温変化が緩やかで、このため秋には暖かい期間がより長く続く。主要品種はシャルドネ、、ピノ・ノワール、カベルネ・フランで、ナイアガラ・エスカープメントのもの比べるとわずかにより完熟感のある果実味が出る味わいとなり、ボルドーブレンドのスタイルにより適していると言える。

 

味わいの特徴

カナダのアイスワインの約90%を生産しているオンタリオ州では、ヴィダルの植樹が最も多い。寒さに強く、高い酸を持ち、晩熟で果皮が厚いこのハイブリッド品種は遅摘みやアイスワインに最適でピーチやマンゴーといった果実感たっぷりのフレーバーが特徴となる。気品や複雑さ、バランスなどでリースリングには及ばないものの、生産量ではヴィダルが単独トップを走っている。

甘口や遅摘みを除くスティルワインの生産量では赤と白はほぼ同じで、極僅かな量のロゼも作られている。

ヴィニフェラ種の白ブドウで最も植樹が多いのはリースリングとシャルドネである。オンタリオ州のリースリングは典型的に高い酸を持ち、シトラス、ピーチにフローラルなアロマを持つ。ワインはドライから甘口まで幅広いスタイルが楽しめる。シャルドネも高い酸を持ち、冷涼気候に典型的なリンゴやシトラスのフレーバーがあるが、温暖な年にはストーンフルーツやトロピカルフルーツのニュアンスを持つ場合もある。

黒ブドウで最も植樹されているのはカベルネ・フランで、エレガントでフレッシュなワインを生み、レッドプラム、レッドベリー、グリーンペッパーにハーブの特徴がある。多くの生産者がオークで熟成させ、テクスチャーや複雑さを与えている。ボルドースタイルのブレンドで使われることも多く、さらには傑出したアイスワインも生む。メルローもボルドーブレンドとして用いられており、単体ではソフトでミディアムボディ、中程度のタンニンに黒系果実の特徴を持つ。植樹こそ少ないもののピノ・ノワールは素晴らしいポテンシャルを見せている。ワインはミディアムボディで、レッドチェリーやストロベリーのフレーバーを持つ。ガメイも近年増えてきており、軽やかなボディにフレッシュな赤系果実のフレーバーを持つものが主流だが、一部ではよりリッチな樽熟成スタイルも見られる。

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