Campania(カンパーニャ)

伝統と革新が融合するダイナミックな産地

南のバローロ・タウラージを筆頭に

地場品種の個性豊かなワインから目が離せない

足の形をしたイタリアのちょうど「すね」の部分にあたるカンパーニャは、ラツィオのさらに南にあり、ティレニア海とアペニン山脈に挟まれるように位置している。カンパーニャとワインは切っても切り離せない関係にあり、歴史は紀元前12世紀まで遡ることができる。イタリア最古のワイン産地の一つと言えるだろう。長い歴史と伝統に裏打ちされた産地ではあるものの、今日見られるワインのスタイルは多彩で、果実味が全面に出た若さ溢れるものから、無骨で強固なストラクチャーを持つ長熟タイプまで幅広い。

 

カンパーニャのワインの品質を向上させてきたのは伝統と革新の融合であり、それを見事に成し遂げたのがアントニオ・マストロベラルディーノである。第二次世界大戦後に押し寄せた国際品種の波によって、多くの生産者が伝統的な地場品種を次々と植え替えていく中、カンパーニャの歴史と伝統を守るべく一人尽力したのがアントニオであった。彼は地場品種を重んじながらも、モダンな設備を取り入れ見事な品質のワインを生み出したのである。

 

約46,800haの畑が広がるカンパーニャでは、実に多様な気候とテロワールが展開されている。全体的な特徴としては豊富な日照、暑く乾燥した夏、穏やかな冬を持つ地中海性気候で、生育期が長くとれる。晩熟タイプの品種が多いカンパーニャにとっては理想的と言える。暑く長い生育期と聞くと味わいがだれてしまいそうなイメージを持つが、ティレニア海から吹き込む海風が暑さを和らげ、ブドウにはしっかりとした酸が備わる。

海沿いと山側ではもちろん味わいが異なるが、例えば、海沿いで育つブドウは、降雨量の多さからより繊細でふわっとしたニュアンスが出る一方、内陸の山の斜面で育つブドウは、より大陸性気候となるため芳醇でこくが出る。内陸部の一部では標高600m付近までブドウが植えられており、高地の冷涼効果を享受できる。

カンパーニャの土壌は幅広いが大きく3つ(山沿い、海沿い、その中間)に分類できる。内陸の山エリアに見られるのは火山性を帯びた粘土石灰質土壌で、排水性と保水性を兼ね備え、見事なバランスを生み出す。DOCGであるフィアーノ・ディ・アッヴェリーノ、・ディ・トゥーフォやタウラージなどがこれにあたる。タウラージをもう少し詳しく見てみると、エリアは川によって南北に二分されており、北部は多くの畑が粘土質で、標高は300-400mで南向き。ブドウの完熟が南部に比べて2週間早くなることもある。一方、南部はより火山性を帯びた土壌で標高は700m近くにもなる。11月ごろまでブドウが木にぶら下がっていることも珍しくなく、標高の高さからくる見事な酸が特徴となる。

一方、州都ナポリ周辺に広がる海沿いエリアでは火山性を帯びた砂質土壌が見られる。カンピ・フレグレイDOCやキリストの涙として知られるラクリマ・クリスティを含むヴェスヴィオ DOCでは凝灰岩や軽石、砂が混ざる土壌が見られ、排水性に優れている。
最後に海と山に間に広がる大きな中間部で見られるのが沖積土壌。ここではDOCやIGPから幅広い品種のワインが作られる。

 

味わいの特徴

とりわけ地場品種のクオリティが高いカンパーニャにおいて、抑えておくべきは黒ブドウのアリアニコ、白ブドウではフィアーノ、、そしてファランギーナである。

アリアニコは、豊富なタンニンを完熟させるのに長い生育期間を必要とする晩熟品種。樹勢が強いため品質を高めるためにはしっかりと収量コントロールが必要となる。ワインはバラ、レッドプラム、ブラックベリーなどの力強いアロマを持ち、高い酸とタンニンが特徴となる。これらは高品質なバリックやオークの大樽での熟成、またある程度の瓶熟を通して強いタンニンと酸をソフトに落ち着かせる。アリアニコがそのポテンシャルを最大に発揮できるのはタウラージであるとされ、火山性の土壌と標高200-600mの涼しい山の気候がより長い生育期を生み出し、これによってフレーバーがじっくりと成熟し、見事な深みと奥行きが生まれる。驚くほどにパワフルで、気品高い味わいは、まさに南のバローロと呼ぶにふさわしい。マストロベラルディーノ(Mastroberardino)やクイントデーチモ(Quintodecimo)、フェウディ・ディ・サン・グレゴリオ(Feudi di San Gregorio)などの重要生産者が作るフラッグシップワインは小売価格で一万円を優に超えてくる。

クイントデーチモ

フィアーノは高品質ワインを生むポテンシャルの高い品種で、他産地でも注目が集まっており、シチリアやオーストラリアのマクラーレン・ヴェイルなどでも見られる。ワインはフローラルでピーチやヘーゼルナッツのフレーバーを持ち、やや高めの酸にワックスのようなテクスチャーを持つミディアムフルボディ。ミネラリーな硬さがあるのも特徴となる。土壌の違いを味わいにしっかりと反映し、砂質からは軽やかでフローラルなワインとなる一方、粘土質からはより重さのあるしっかりしたワインが生まれる。最上のものは10〜20年近い瓶熟成を経て進化する。ほとんどがステンレスタンクで熟成されるが、一部では木樽を取り入れる生産者も見られる。

グレコは、病害菌に弱く樹勢も低いために育てるのが難しい品種であるが、熱耐性、水分ストレス耐性に優れており、温暖な産地に適した品種といえる。グレコといえばグレコ・ディ・トゥーフォであり、ここは小規模ながら高い密度で植樹され、保水と排水の優れたバランスを持つ粘土石灰岩や火山性の凝灰岩などが見られる。ワインは深いレモンカラーに、高アルコール由来のオイリーなテクスチャーがあり、フローラル、アップルピール、ストーンフルーツ、スモーキーなノートがある。土壌に由来するミネラルの深みも魅力的である。ほとんどが樽を使用しないが、一部では樽発酵や樽熟成を行い長期の瓶熟に耐えるプレミアムワインを生む。

カンパーニャの白はフィアーノやグレコに意識が向きがちだが、近年ナポリ周辺から上質なファランギーナが生まれている事も忘れてはならない。ファランギーナはカンパーニャで最も植樹されている白ブドウ品種で、ワインはリンゴや白桃のフレーバーに草を思わせる爽やかな要素があり、比較的酸が高い。ほとんどが樽不使用で作られる。品質はカジュアルなものから高品質なものまであり、価格も安価なものから中価格帯まで。海岸沿いの畑のものは内陸に比べ風の影響を強く受けるために、アルコールのやや低いワインに仕上がる。

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